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133.絶対嫌に決まってるっす!!
しおりを挟むシクシクシクシク……
「……何が嫌だって?」
「……ちょっと顔怖いよ」
う゛ぅ……目ギラって光ったっす……。今も光ってるっす……。
甘い声が怖い声に変わった。目も甘い目から怖い目に変わった。怖いが……
で、でも俺にだって言い分はあるんっすよ!!
そうだと気持ちを持ち直し、ギッとボスを睨みつけた。
「キ、キス嫌っすよ! 全部嫌っすもん!! だ、だって……っっ恥ずかしいんっすよ!? ボスとキスしたら心臓バクバクするっすし、や、やらしい音するっすしゾクゾクするっすし腰抜けちゃって立てなくなっちゃうっすし! っお、俺こんなキスしたことなかったっすから息継ぎもっ、だ、唾液飲み込むのも下手でいっつも垂れちゃって汚いっすし絶対変な顔になっちゃってるっすし何回教えられても頭いっぱいになって覚えられないっすもん!!!! でもボスはかっこいいっすもん!!!! なのに俺だけいっつも変な顔で汚いキスばっかりしてたらボスに嫌われちゃうっすよ!!!!」
だんだん大きな声で叫ぶように言ってしまう。うわーん!! と泣けばフレイ君に呆れられた。
「……ツキさんそれ逆効果だから」
「へ?」
「ふーん」
「!?」
フレイ君を見ていればボスに顎を持たれクイっと上を向かされる。見上げるボスの顔は色気たっぷりの勝ち笑みを浮かべていた。
「なるほど。ブサイクなんてとんでもねぇ。めちゃくちゃエロくて可愛いぞ」
「っエロ!? そ、そんなことないっす!!」
「じゃあ今度鏡の前でやるか? そうすればどんだけお前がエロくて可愛い顔してんのかわかるだろ? 姿見用意しておくのもありだな」
「はあ!? 冗談っすよね!? 絶対嫌っすよそんなの!! 姿見なんか用意したらもう絶対ボスとはキスしないっすからね!」
「チッ」
「チッじゃないっすよ!? 本当に嫌っすからね!? 本当にやろうとしたら許さないっすからね!?」
「可愛いのに勿体ねぇな……」
「ボス!!」
この顔のボスは本気で拒絶しないとやる。絶対に用意する。したら許さない!
「わぁったわぁった。しねぇよ。悪かった」
そう言ってボスが俺の目尻へと口付ける。う~! っと睨めばふっと優しく笑われた。
「ツキ」
「っ/// ……ボ――」
「っ~~だから僕を忘れないでってば!!!」
「!? わ、わっ!!」
フレイ君に腕を引っ張られた。
「チッ」
「チッじゃないから! 僕の真横で変な雰囲気だしてキスしようとしないでよ!! 甘い雰囲気ださないでよ!? ツキさも酷い!! 完全に今僕のこと忘れかけてたよね? 僕そんなに影薄いの!?」
「え? あ、い、いや~そんなことないっすよ?」
フレイ君から目を逸らしあらぬ方を向いた。
あ、危なかったっすっ! またボスの顔近づいてきてたっすよね!? 抵抗忘れてたっす。完全にボスのペースに乗せられてたっす。フレイ君忘れてごめんっす!!
これ以上ボスの側にいたらまた同じことになりそうだと、もう一度ボスを睨むフレイ君の後ろに回り込み、今度は座って目を閉じ、耳に手を当て、ぎゅっと口を噤んだ。
ボスを見ちゃダメっす! 声を聞いちゃダメっす! 喋っちゃダメっす! またボスのペースに乗せられるっすよ? 見ちゃダメ聞いちゃダメ喋っちゃダメっす!!
「くそ……っ後もう少しだったのに邪魔すんなよフレイ!」
「邪魔してほしくないなら場所考えてよ!」
「じゃあ二人っきりにさせろよ!! 俺が何年我慢してきたと思ってんだ!!」
「そんなの知らないし! 僕に関係ないし!」
ボスの悔しそうな声とフレイ君の噛みつくような声が聞こえる。
……二人の声大きくて耳塞いでても全然聞こえるっすね。
それでもぎゅっと目を閉じ、耳を塞ぎ、口を閉じた。
「関係あんだろうが!! 日中はほぼお前ツキにくっついてんだろうが!! 俺に寄越せよその場所!!」
「嫌!! でも僕の前でイチャイチャしないで! 気まずいでしょ!? どっか僕がいない穴見つけるか、日中以外でイチャイチャしなよ!」
「できたらやってんだろうが!! 何が穴見つけろだ! んなこと言っててめぇ俺への嫌がらせにずっとツキに引っ付いて離れねぇだろうが! その他に穴見つけようにもやっぱお前含む全員ツキがいなくなればすぐに探しにくるし、夜は夜で余計に見張りが厳っ――」
ビュンッ ガッ!!
「ヒッ!?」
「「…………」」
間近で聞こえた風を切る音と大きな音にパッと目を開いて音の正体を探せば、フレイ君とボスの間に剣が壁に突き刺さっていた。
「――お~い坊ちゃん、お前まぁた俺達が見てない隙にツキに手ぇ出したな!」
「「ツキから離れろ!」」
「モージーズー!」
強力な盾発見!
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