不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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136.美人な不審者っす! 

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「めっちゃ人集まってるっす」


 訓練所につくと若いも老いも男も女も関係なく、どこからともなく集まり握手をしてもらうための列を作っていた。そして握手をしてもらった人はその周辺でその手を見ながらデレっと顔を溶かしている。


「……あいつら何馬鹿なことやってんだ?」


 そう言って呆れるボスの背中から離れて、俺はそっと列のその先、先頭不審者を見に行った。


「――ふふ」


「ぴ!」


 微笑みを浮かべた流し目に身体が飛び跳ね、さささささっ! っと急いでボスの元へ戻り背中へと引っ付いた。そして、興奮のままにぴょんぴょんと飛び跳ねる。


 ふわ~! ふわ~! すごいっす! 本当に綺麗っす! 美人さんっす!!


 空色の髪と虹がかかったような瞳。腰まで伸びた髪は先に行くほど軽く波を描いていて、神秘的な光を纏い、また羽織ったかのような真っ白い服を着たとても綺麗な女の人だった。今はボスの後ろに戻ってしまったが、見た女の人を頭に思い浮かべて思わずぽーっと見惚れてしまう。


 ……俺も握手してほしいっす。なんかいい運もらえそうな気がするっす。


「……! ……!! …………テレ///」


 握手してもらいたい。だが、ちょっと恥ずかしくて近寄れない。握手待ちの列をチラチラと見ながらモジモジと身だしなみを整えた。するとパシッとボスに頭を叩かれる。


「いた! 何するんっすか!」


「デレっとすんな」


「し、してないっすよ!」


 ただ綺麗だなと思っていただけなのに叩かれてムッとする。でもボスも俺と同じでムッとした顔をしていた。


「……ぷぷぅー(笑)、器の小せぇ男だな(笑)」


「ぷぷぷぷぷぅー(笑)、付き合えてんのに余裕ねぇのかね(笑)」


「ぷぅっぷぅっー(笑)、可哀想に(笑)」


「……てめぇらよっぽど死にてぇらしいな?」


 ボスが凄めば列に並んでいた仲間達は一斉に素早くそっぽを向いた。が、


「お前ら邪魔だから散れ」


「「「「えーーーー!!!」」」」


「えーじゃねぇよ。あとは俺が対応するからお前らはさっさと帰れ散れ邪魔だ」


 ボスがそういうと一斉にみんな文句を言い始めた。


「ボスそりゃないぜ! 俺の順番まであともう少しだったのに!」


「そうだそうだ! こんな美人、滅多にお目にかかれねぇんだぞ! 特に手を握ってくれるなんて機会ないんだぞ!」


「あぁっ……触ったらなんだか若返りそうな気がしたのにっ残念!」


「そうよねー! 肌も綺麗で……どうやったらああなれるのかしら?」


「対応ってどうせボスも美人さんと喋りたいだけの癖によ!」


「え? そうなんっすか?」


 そうだったのかとボスを見上げれば疲れた顔で「……んなわけあるか」と返される。


「じゃあなんだ! ボスも握手してほしいのか! 俺達の前だと恥ずかしいからか!」


「まだチェリーちゃんだからか!」


「可哀想に(笑)!」


「あ゛あ゛ァ? 誰のせいなんだゴラァ!!」


「「「「「ひゃーーーー!!!」」」」」


「うひゃー!」


 早いっす!!


 ボスが怒鳴った瞬間モージーズーとレト兄以外の全員が蜘蛛の子散らすように逃げていった。もう誰もいない。


 みんな逃げ足早すぎっすよ!!


「……はぁぁあ」


 そんな光景を見てボスは頭を痛そうに片手で抱え、疲れたように大きな溜息を吐いてしまった。なので、俺はトントンと背中を叩いて慰めてあげた。


「……おい、レト、お前らも帰っとけ」


「いや~流石にそれは……」


「「「できねぇよなぁ~」」」


「?」


 ん? なんっすか? みんなどうしたんっすか???


 レト兄やモー達三人がなんとなくボスを守るかのような雰囲気をだした。なんだなんだ急に???


「クスクス――本当に面白い方達ですね。それにフレイも随分面白い格好を」


「「!」」


 むくむくと育つ警戒心を折るような、凛とした透き通った綺麗な声が聞こえた。光り輝くような美人不審者さんが親しげにこちらに近づいてきたのだ。そんな美人さんにひしっ! っとボスの背にくっつく手を強めた。


 うぅ~眩しいっすぅ!


「……部下達が悪かったな」


「いいえ。とても有意義な時間でした」


「そう言ってもらえると助かる」


「ええ」


「?」


 んん? ……なんかボス、変な感じっすね。


 いつものボスなら相手が誰であっても不遜な態度を崩さない。特に相手は美人さんといえども知らない不審者さんなのだ。なのに今のボスはどことなく硬く、どこか緊張しているようにも見えた。


 どうしたんっすかね……?


 いつもと違うボスの様子にちょっと不安になりボスの背に隠れる範囲を増やした。


「ご挨拶が遅れました。わたくしの名はセルフィアーネ。フレイの姉です。弟がお世話になっております」


「……ああ」


 差し出される美人さんの手に、ボスはピクリと身体を揺らし難しい顔をする。


「……ふふ。そう硬くならなくても結構ですよ。普段通りで構いません。私はただ話をしにきただけですので」


「……そうか。俺はラックだ」


 ボス?


 少し肩の力を抜いたボスはそう返し、美人さんの手を握り返した。だが、なぜボスはこんなにも緊張しているのだろうか。珍しいくてじーっとボスを見上げた。


『ボスも美人さんと喋りたいだけの癖によ!』


『ボスも握手してほしいのか! 俺達の前だと恥ずかしいのか!』


「…………」


 ぎゅっとボスの服の握りしめ、くいくいと引っ張りボスを見上げる。


「ツキ?」


「……デレデレっすか?」


「は?」


「……目移りっすか?」


 なるほど。このボスの様子。さてはフレイ君のお姉さんの美しさに緊張し、照れてしまっているのか。


 うんうんわかるっすよボス。俺もそうだったっすから!


「…………」


「痛っ!? ~~なんで頭叩くんっすか!」


「……期待した俺が馬鹿だった。くだらねぇ間違いに納得して頷いてんじゃねぇよ」


 ムッ。また心読んだっすね!…………って


「ええ!? フレイ君のお姉さん!?」


「…………反応おせぇな」


 いや、あまりに自然に言ったっすから! でも確かにそっくりっすね!



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