8 / 133
1
4.猶予は約1年
しおりを挟むせっかく過去に戻りもう一度会うことができた旦那様がすぐにお仕事に行ってしまったため、寂しく感じてしまいます。
「……奥様。そろそろお部屋に戻った方がよろしいかと」
「…え?あ、そうですね。すみません」
いつまでも旦那様が去った方を見ていた私に執事さんがそう言葉をかけてきました。…そういえは起きてすぐに走ってきたのでまだ寝巻きのままです。
「いえ、朝食はいつもの様にお部屋にお持ちしてもよろしいでしょうか?それとも少し休まれますか?」
私はいつも朝食はお部屋で食べています。初めは旦那様と一緒に食べていましたが、旦那様が屋敷を出ていく時間が早くなったことで起こすのも申し訳ないと言われ一緒に食べることがなくなったのです。それは夜ご飯の時も同じです。仕事ならば仕方がありません。寂しい気持ちを隠しながら我儘を言って困らせてしまってはいけないと思い素直に了承しました。……今思えば私が頷いた時、旦那様のお顔が少し悲し気だったような気がします。
「……あの、奥様大丈夫ですか?」
「え?」
「何やら難しそうなお顔をなされていましたので…。やはり一度お部屋に戻られてお休みになられた方が…」
昔のことを思い出して複雑な表情になっていたようです。いけません、早く言葉を返さなければ。
「……いえ、大丈夫です。朝食をお願いできますか?」
「…はい。かしこまりました」
執事さんは何か言いたげな雰囲気でしたが、私の言葉に了承を示し、下がっていきました。
…とりあえず旦那様との食事のことは後で考えましょう。先に確認しなければいけないことがあります。私はすぐに部屋に戻ると今日の日付を確認しました。
「……ちょうど昨日が私と旦那様の結婚記念日の日。では、私は『あの日』から約1年前に戻ったと言うことなんでしょうか…」
…1年後に旦那様は死んでしまう。どうすればその死を回避できるのかは分かりません。教会に行ってみなければ分かりませんが、私にはもうスキルは1つしかないでしょう。私が持っていたスキルは「***リープ」と「回顧」。あの日までは名前や使い方、その意味すらもわかっていませんでしたが、まさか過去に戻ることができるとは思いませんでした。
…あの日、失意に沈んだ私の頭の中にスキルの名称…タイムリープと言う言葉が浮かび上がり、使い方が流れてきました。
あの力はたった1度しか使えない力。もう失敗は許されません。ずっと役立たずのスキルだと笑われていましたがまさかこんなにすごいスキルだとは思いませんでした。
せっかく得ることができたこのチャンス。必ず旦那様の未来を変えて2人で幸せになって見せます。
「まずは、旦那様はずっと私に嫌われているのだと思っていたのですよね?その払拭をせねば!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
282
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる