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14.誓い
しおりを挟む『あの日君と出会うずっと前から私は君のことが好きだった』
その言葉の後、ヨルト様はあの日に出会う前から私のことを知っていて、夜会の度にバルコニーから庭園にいる私をいつも見ていたと聞きました。確かに1度、バルコニーにいるヨルト様を見たことはありますがそんなにいつも見ていたんでしょうか?
「…君を見る度にどうしてこんなにも君のことが気になるのかわからなかった。だからあの日、仕事で落ち込むことがあったというのは嘘で、本当はその気持ちの正体を知るために君に会いに行ったんだ。嘘をついてしまってすまない」
「…いえ。そうだったんですね」
まさかヨルト様がそんなにも私に会うためにあの場所に居たとはとても驚きです。
「ああ。まぁ君に会うためにあそこに行ったんだが当然見つからなくてな。愕然としたよ。私は一体何をしているんだとな。衝動のまま馬を走らせこんな所まで来るなんてと。そんな自分に呆れ、帰ろうと思った時に君に出会うことができたんだ」
「………」
「そして、あの日に君に連れて行ってもらって見た光景は本当に素晴らしかった。とても平和な光景でより自分の仕事に誇りを持つことができた」
「…ヨルト様」
「景色を見ながら君と過ごす時間は何事にも変えられない尊い時間であったが、途中から君の横顔から目を離せなくなった。そして、私にありがとうと言って微笑んだ時、君の言葉に胸が打たれると共に、私が今まで見てきたものの中で1番綺麗だと思った」
… 綺麗?
「そして、最後の別れで見せてくれた君の笑顔にやっと君のことを愛しているんだと気がついた。自分でも自覚するのが遅すぎたと思うが、私はそれからずっと君に恋をしているし、君を愛している」
そう言ったヨルト様のお顔は今までに見たことがないくらい真剣な目をしており、そんなヨルト様から私も目が離せません。
「ユユ。今まで自分勝手な愛を押し付けて、君の気持ちを蔑ろにしてしまってすまなかった。もっと早くに君とこうして向き合って話をすればよかったんだ。なのに、臆病な私は君から嫌われることを恐れて逃げてしまった…。だが、そんな私に、君は歩み寄ってきてくれた。それがどれだけ嬉しく救われたことか。…こんな情けない男ですまない。だがこれからはもう逃げない。もう間違えない。ユユ、君を本当に心の底から愛しているんだ。もう結婚しているのにこんなことを言うのはおかしいことかもしれないが私の妻となって欲しい」
「っ」
「ユユ、君を愛している」
「ふ…ぅ……」ポロポロ
「ユユ!?」
私はどれだけダメな人間なのでしょう。ヨルト様に愛を伝えるだなんて言っておいて結局は何も言えず、全てヨルト様に言われてしまいました。
「ぅぅ……」ポロポロ
「ど、どうしたんだ?ユユ?も、もしかして迷惑だったか?」
「っそんなことないです!…ヒック…ぅ…すみません。…違うんです」
「違う?」
「はい。…ヨルト様は私に愛を押し付けていたと言っていましたがそんなことありません。悪いのは私です。恥ずかしいからと自分の殻に閉じこもってあんなにも愛を伝えて下さっていたヨルト様をずっと蔑ろにしていました」
「っそんなことは!」
「いえ、私の態度が悪くなければここまで私達の関係が拗れることはありませんでした」
「………」
「そして、ヨルト様が離れていけば今度は飽きたのだと自分を納得させ、ヨルト様と向き合うことから逃げました。あなたがいつもどんな顔をしていたのかも知らないでっ」
ヨルト様が亡くなってしまうまでそんな事にも気づきませんでした。いえ、気づこうともしていませんでした。いつも自分のことばかり
「…ヨルト様。間違いばかりで酷いことをたくさんして貴方の心を傷つけてしまって本当にすみませんでした…。ーー私ももう逃げません。諦めません。間違えません。そしてロゼリア様にも決して負けません」
今までロゼリア様の言葉をただ俯いて聞いているばかりでしたがもう下は向きません。ロゼリア様も私と同じでヨルト様を本当に愛しているのでしょう。ですが、ヨルト様だけは渡しません。
そんな気持ちのまましっかりとヨルト様の目を見つめて私も伝えます。
「…私もずっと前からヨルト様のことが好きでした。…愛しています。だから私をヨルト様の妻にして欲しいです」
「ああ…ユユ愛している」
「はい…私も愛しています」
そう言ってヨルト様は私に手を伸ばし強く抱きしめてくれます。私もそんなヨルト様に負けないように彼の背に腕を回し抱きしめます。ずっとすれ違ってばかりいましたが今度こそ誰も失わずに、2人で幸せになって見せます。
そして、夕日に照らされる中、どちらともなく顔を近づけると誓い合うよつに唇を合わせるのでしたーー
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