5人の日記

10m

モネ「……おかしくないですか？」

ムベージュ「何がよ？……お、これ中々美味い」

メルズ「……薄々、感じてたのは私だけじゃなかったのね、良かった。」

先程休憩してから、もうかれこれ3時間は登っている。前回はこれぐらいで頂上付近にたどり着いていたのだが、今回は何故かまだ半分も登れていない。

ルフェラ「……1/3ぐらいかしらね。いくら休憩したとはいえ、足が痛いわ」

ミテス「この山、化け山なんかねぇ。」

化け山。入ってくる人を拒むことは決してないが、入りこんだものを飽きるまでもて遊ぶという山。どこかの地域にある化け山で迷い込んだ少女が入ったきり出てこないのを心配した親が捜索願いを出し、山の内部調査に乗り込もうとしたそうだが、何度入っても30分で入り口に戻ってきてしまったらしい。結局その少女は18日後に、元気な姿で戻ってきたそうだが、少女が帰ろうとしても同じ場所に戻って来てしまって、帰ることができなかったと言っていたそうだ。
　人々はこの山を恐ろしく思い、焼いてしまおうとしたそうだが、何度松明を持っていってもその場で火をつけようとしても、その度に運が良いのか悪いのか、豪雨が降り注ぎ失敗に終わったと言うことから、化け山と人々は名付け決して近づかないようにしたそうだ。

メルズ「しょうがないわね。使い飛ばすわ。」

ムベージュ「なら、私もやろ。」

メルズの使い魔は空烏カラガラス、ムベージュの使い魔は夜蝋蟲ヨロウヂュウである。どちらも飛行能力は会得しているが互いに少し特徴が違う。
　空烏は夜目が効きとても遠くまで見渡せるが、耳が悪く、メルズ自身が手話ができず会話が難しいため、見て得た情報はメルズ本人が同感覚魔法を通じてのみ得ることができる。
　一方、夜蝋蟲は感覚が鋭いため、どのくらいの範囲に何がいるのか把握できるが、足が遅く、月の光に反射しやすい為夜の鳥達の餌になりやすい。そのため、ムベージュと2m以上離れることができないため、ムベージュは夜蝋蟲を飛ばす時には自分が樹に登り、できるだけ夜蝋蟲が自由に飛べるようにしている。

モネ「ここで召喚して大丈夫なんですか？」

ルフェラ「でもこの山で私達が飛んで、またミテスが頭ぶつけて嫌だし……」

ミテス「嫌味か？嫌味なら買うぞー。」

以前の山探検の帰り、全員で箒で飛んで帰ることにしたのだが、その山も化け山だったらしく、ミテスが最終的に近場の木の根に捉えられて運悪く倒れ込んだ先に大岩があり、頭をぶつける事故が起こった。全治6ヶ月。

メルズ「まぁ、もう飛ばしちゃったから帰ってくるまで大人しくしてましょ。」

ムベージュ「……今回は何ヶ月で帰れるかなぁ」

使い魔が探索を終えるまでの間、彼女達は待機して待つことにした。
　登ってきた月がやけに青く輝いていた。