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二章
五十二話
しおりを挟む「ねぇはやくぅ!! 交換しよっ!!」
「……文化の違いなのかしら。理解できないのよ」
「大丈夫っ!! 友情の証だよっ!」
「あのね、アヤノちゃん。文化の違いなのよ……。何も大丈夫じゃ……ないのよ?」
日本とミルフィーユ王国。文化の壁は超えられないのか……否だ! 諦めてたまるか。お姉さんともっともっと仲良くなりたいんだ。一つ先のステージへ。
攻めるっ!!
「お姉さんはアヤノの事が嫌いなんだね……昨日の敵は今日も敵なんだ……。うぅ……ぐすっ」
「あー、もぅ。どうしてそうなるのよ。わたしはアヤノちゃんの味方よ? …………わ、わかったわよ。脱げばいいのよね?」
「うんっ!!!!」
10分ループ50回目。ついに辿り着いた!!
友情の証。──ユニフォーム交換!!
「本当に交換するの……?」
つい数秒前に脱ぐって言ったのに。言質は取ったんだ。多少強引でも、仕方ない。だってこのままじゃ先には進めない。
「んしょっ」と着ているTシャツを勢い良く脱いでっと、お姉さんに渡すっ!
「はい、これ!!」
すかさず早く早くと急かすっ! 早くお姉さんも脱いでと手でバンバンする! 勢いが大切っ!
「ねぇ、これになんの意味があるの? どうしてもわからないのよ……」
「友情の証だよ!!」
「だってこれはキャミソールで、アヤノちゃんが着てるのはTシャツ。どちらもユニフォームじゃないのよ?」
「交換することに意味があるの。友情の証!!」
何度目かわからない質問を当たり前のように笑顔で答える。この当たり前が大切。異文化コミュニケーション!!
「で、でも……」
「神秘の泉で見たんでしょぉ? 友情の証だよぉ!」
友情の証、ユニフォーム交換!! 嘘はついてない。俺は何一つ嘘はついてない!! これが大切。
「ねぇ、アヤノちゃん。わたし……汗たくさんかいちゃってるのよ。だから、その……」
「アヤノは全然大丈夫だよ!! 友情の証だもんっ!」
「それはわかってるけど……ほら、わたしが……ね?」
くぅ。焦れったい! これなんて焦らしプレイ?
さっき良いって言ったじゃん。わかった脱ぐって言ったじゃん……。諦めない。諦めてたまるか!!
「友情の証だもんっ!!」「友情の証だもんっ!!」
ここまで来たら友情の証で推し通す!!
◆
──70回目。説得成功!
「ほんと、変態さんなんだから。責任は持たないからね。その……臭くても……知らないわよ」
「友情の証だもんっ!」
「はいはい」と、多少呆れながらも手をクロス。キャミの端を摘み……脱いだ!!
現れたのブラ越しの特盛マシュマロ‼︎
って、そうじゃない。
恥じらいながらもブラ姿でキャミソールを差し出すお姉さん。す、凄まじい。ドクンッ。
「ちょ、ちょっと。早くしなさいよ……恥ずかしいじゃない」
お姉さんからキャミを受け取──。
ズシッ。重いっ!!
なんだこの重さは。まさか、ふぇ、フェロモンの重さなのか?
吸っている。これでもかと言うほどにこのキャミソールはフェロモンを吸い尽くしている!!
ゴクリ。バサッ!!
──フルアーマー・フェロモン。verキャミソール!!
全身に纏うはフェロモン×パルファム。こ、これほどまでとは……。計り知れない戦闘力を肌で感じるっ!!
「フェロモンが体に漲っていく。すごい。すごいよ!!」
「何がすごいのかわからないわ。でも、喜んでくれてるみたいで……良かったわ……」
「頭がクラクラする、トロトロに……うぅぅぅ」
「もう。馬鹿な子ね。汗だくで汚れちゃってるんだから……臭いでしょうに」
頭がふらふらする……。
「お、お姉さん……」
「はいはい。イイコイイコよしよし」
あぁ。最高だ。このまま永遠に。このまま……このまま……。
〝ぐおん〟
世界が歪む、この感覚。
◇
「嘘でしょ?! 嘘。嘘。嘘っ!! 絶対嘘っ!!」
確かにさっきまで纏っていたはずのフルアーマー・フェロモン verキャミソールが消えた。
Tシャツ姿に戻ってる。これが……現実?
当たり前の事だった。10分で世界はリセットされる。当然、ユニフォーム交換もリセット。
フルアーマーになった際、この肌で感じた温もり、滾っていたはずのフェロモンも消え去る。心にぽっかり穴が開く。なんとも言えない喪失感。
確かにこの手で掴み取ったアーマーが、パルファムが、フェロモンが……。一瞬で剥ぎ取られた。
──虚しさだけが残る。
チラッ。……チラッ。チラッ。
目の前で横たわるお姉さん。インターバルは一分程度。奪うか? だってそのフルアーマーキャミソールは俺のだ。ユニフォーム交換したんだ。
お、俺のだーー!! 返せーー!!
◇◆
「もう言い逃れは出来ないわよ? あなた寝込みを襲おうとしたわね?」
「ち、違うよぉ!! そ、そのキャミソールは──」
ダメだ。今の世界は〝神秘の泉〟行使前。言わば正規ルート。10分ループのお姉さんじゃない。
たった一分じゃお着替えなんて無理だった。そもそも、服が入れ替わってたらそれはもう大変な事態。
記憶が錯乱してしまった。このルートのお姉さんは……散々クンクンしまくった直後。神秘の泉さえ決まれば、あのクンクンには『想い』と言う意味が見出せる。
でも今は……クンカクンカすぅーはぁーしまくるやばい奴止まり。それで寝込みを襲ったともなれば、もう状況は言わずもがな超最悪。
魔が差してしまったんだ。わかってたはずなのに忘れてた。俺はなんて愚かな……。でも、ユニフォーム交換は確かにしたんだ。おかしいのはこの世界じゃないか。
──もう、こんな世界はいらない。
早くあっちの世界に行きたい。この世界はダメだ。夢も希望もない。早く、早く、早く行かせて!!
「はぁ。やっぱりあなたは黒だったのね。……ん? 黒? 神秘の泉を行使したはず……ジャッジは……。あれ?」
そのジャッジは失敗したんだよ。だからもう一回。さっさとやれ!!
「ジャッジするまでもないわね。あなたは黒。そう黒よ!!」
すごい冷めた目。そんな目で見るな。この偽物が!!
「黒じゃないから」
「あら、ついに化けの皮が剥がれたのかしら? 口調が変わってるわよ」
「うるさいっ! とっとと神秘の泉でジャッジしろ」
もういい。こんな世界。早く会いたい。本物のジャスミンお姉さんに早く会いたい……。
──もう一度、フルアーマー・フェロモン verキャミソールをこの手に!!
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