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2話
しおりを挟む俺はいま、学校の屋上に居る。
月明かりが綺麗で風が気持ちい。絶好の死に日和だ。
秋月さんに振られた今、生きる理由など何一つない。
この先の人生は灰色。
死にほど好きだった。この想いに嘘偽りはない。
「《死》をもって君への想いを芸術にしよう。永遠に。この場所に。刻もう」
卒業式の今日、秋月さんは新たな一歩を踏み出した事だろう。
俺も一歩、踏み出す。地面の無いこの先の一歩を。
「さよなら秋月さん。ずっとずっと……愛してる」
──シュッ。
俺は踏み出した。地面まであっという間。秋月さん、君に出会えて良かった。
「本当に……ありがとう」
〝パチンッ〟
『気に入った! 気に入ったぞ!』
死んだのか……?
『その病み具合、人知を超えておる!』
俺は確かに飛び降りた。地面は……?
『勝手に惚れて勝手に振られて、飛び降りる!』
何が起こってる?
死後の世界か?
『ヤンデレって言うのか? デレては無いから……ヤンヤン? プッ』
……??
『おーい、聞いておるのかぁ? 死にたがりぃー?』
……??
『ええーい焦れったい! このまま死ぬか、秋月ちゃんとやらと付き合うか決めろ! 今すぐ!』
ははっ。意味がわからない。
けど……そんなのは決まってる。
「付き合いたい」
『よぉーし! よく言った!』
〝パチンッ〟
◆ ◇
あ……れ?
ここは……俺の部屋。
カーテンから漏れる日差しが眩し……。
待て。生きてる……のか?!
………………。なんてことだ。生きてる。
ベッドに横たわってる場合じゃない。早く死なないと。
『カカカ! そんなに急いでどぉーした? まぁーた死のうとしておるのかぁ?』
この声……「誰だ?! どこにいる?!」
『目の前におるじゃろ!!』
「っっ?!」
目を疑った。全長にして15cm程だろうか。綺麗な羽根の生えた女の子。
小人と言うにはあまりにも小さ過ぎる。この生物は……妖精……?
『いつまでボケーッとしておる! この死にたがり病み男が!』
この声、爺様口調、何処かで……。
あれは、夢じゃなかったのか?
いや、今が夢……。うん、そうだ。そうだよな。これは夢だ。俺は確かに飛び降りた。あの感覚は夢じゃない。
『おーーい!
拗らせ死にたがり~?
マーキング死にたがりぃ~!
病み落ち童貞~、おーーい!』
「黙れ」ギロッ。
イラつくな。夢にしては茶番が過ぎる。
『カカカ! 良い目をするじゃないかぁ! おまえの病み具合気に入ったぞ!』
「待てよ、夢だとしても度し難い。一つおかしいのがあったな。マーキングってなんだよ? 取り消せよ」
『そこなの⁈ 病み男はぶっ飛んでるのぉ!』
こ、こいつ。いけしゃあしゃあと……夢のくせに。
『なぁ、死をマーキングしようとしたじゃろ?』
人差し指を上に突き出し偉そうにしやがって。本当にムカつくなこいつ。
『いいか、八ノ瀬 陸。死だけはマーキングしてはならん。残された者の気持ちを考えろ』
なんだよこれ。説教されちゃってるのか。
もうシカトだ。構ってられない。夢だとしても。
『ストーーップ! 何処に行くつもりじゃ? 最後まで話を聞けい! 病み男がぁ!』
あ……れ?
体が動かない。なんだろ……感覚がリアル過ぎる。夢だろ? 悪夢か?
『はぁ。結論から言おう。タイムリープじゃ。過去に戻って秋月ちゃんと付き合えるまで面倒を見てやる』
「はぁ?」
今なんて言ったこいつ?
『既に一年前じゃ。気付かないのか?』
信じられるわけがない。けど、落ち着いた雰囲気で放たれるその言葉には妙な説得力があった。
部屋を見渡した。……一目瞭然だった。
恐る恐るスマホの日付を確認すると、去年の日付。
急に現実味を帯びてしまったせいか、心も体もふわっとする。
夢か幻か……現実か……わからない。
でも、秋月さんと……付き合いたい。
この想いだけは確かにここにあって、紛れもく本物だ。
『シャキッとせい! これから全力でサポートしてやる! 恋愛マスターにして、とってもきゃわぃぃこのプリチーな妖精さんがな! よろしく!』
◆
──死の直前に妖精さんと出会った。ここから始まるのはタイムリープ。
何度でも過去に飛べる不思議な力を持った妖精さん。
未来へ行く事は出来ないけれど、何度でもやり直せる。
俺は、全力で秋月さんを攻略してみる事にした。
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