優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

文字の大きさ
74 / 106

74話

しおりを挟む

「ねぇ、りっくん。彩乃(あやの)って呼んでくれなきゃ、やーだ♡」

 

 ……ハッ! 

『どうしたリク? そんなに青冷めて』

 ベッドの上……俺の部屋。……夢か。はぁはぁ。


『大丈夫か? 死ぬのか?』
『大丈夫。なんでもないから』

『じーーーーーっ』

 妖精さんの視線を感じる。さすがに隠してはおけないか。


 今日は七月最初の日曜日。最側とハンカチを買いに行く日だ。

 約束をしてから三週間ほどが経った。
 ちほとのあれやこれやで俺の都合がつかず、結局七月に入ってしまった。

 その間も最側とは何度か飲み行き「ハンカチを買いに行く日は~」などと盛り上がり、もうこれデートプランじゃないの? と思うくらい話は暴走、進んでしまった。

 「え~、バイト仲間じゃないですかぁ!」

 魔法の言葉を前に、俺はなぜか頷いてしまうんだ。


 ──そのタイミングでこの夢。最悪の目覚めだ。


『じーーーーーっ』

 疑いの眼差しは止まる気配なし。

『今日、最側と……デートなんだよ』

 小細工はなし。だってどう考えてもデートだ。


『は、はぁぁぁぁぁ?!』

 当然の反応。包み隠さず全てを話した。メロンソーダで乾杯した事、抱きついてしまった事。魔法の言葉、バイト仲間。その他、色々と。


 ◆◇

『どうして断らなかった? IDは交換したのか? 毎週水曜日の事はわかっておるのか?』

 当然の質問責め。でも質問の毛色が肯定的なのは何故だろう。てっきり怒られるかと思った。

『やるなら、上手くやれよ? 苦しむのはリクなんだから』

 なんだよそれ。どうしてそんな事言うんだよ……。

『上手くってなんだよ』
はたからみたら浮気じゃ。少なくと最側ちゃんにその気はない。せいぜい友達くらいにしか思ってないじゃろ。でもな、リクはどうなんじゃ?!』
『べ、別に好きじゃない』

『じゃあ、なぜ断らなかった? ただの一度でも断ったのか?』
『バイト仲間……だからかな』

 本当にわからないんだよ。やめてくれよ妖精さん。もう何も言わないでくれよ……。

『戻ろうか。二見ちゃんとの今後を考えると、リクが苦しむのは目に見えてる。行かせられんよ。それともこの世界で〝ボロ雑巾計画〟を行うか?』

『今はまだ……できない』


『じゃあ、戻るぞ』

 指パッチンのポーズに入った。
 数秒後、最側と過ごした全ての時間がなくなる。いままでの日常に戻る。いいんだ。これで……いいんだ。


『な、なんじゃ⁈ どうした⁈』

 無意識だった。
 気付いたら妖精さんの指を押さえていた。体が勝手にタイムリープを拒んでしまったんだ。

『涙まで流して……。もうそこまでなのか』

 涙? 嘘だろ……?

『こ、これは違うんだ。何かの間違いで……』

 苦し過ぎる言い訳だ。でも本当にわからないんだ。どうして俺は……。


『はぁ。もうええ。ぶっちゃけるとのぉ、どうせ三年生になったら秋月ちゃんと同じクラスになる。この世界は休憩とは言ったが、その場面に直面するまでは保留のつもりだったんじゃ』
 

 そうか。三年生になると……。でも妖精さんのこの様子、今までを振り返るとなんとなくわかる。俺が秋月さんを選ぶ事を確信しているんだ。


 数十年に渡る想い。死をも厭わなかったあの日。
 

『目的は見失ってないから。大丈夫だから』


『遅かれ早かれ……じゃな。好きにするとええ。じゃがな、妖精さんはいつだってリクの味方じゃ。それだけは忘れるなよ‼︎』


 
 ──ありがとう妖精さん……。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...