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76話
しおりを挟む「あっ、初めに言っておきますけど、うちは一般家庭なのでっ! 彼女さん基準に考えないで下さいねっ!」
「お、おう」
ぐいぐいと勢いある行動と言動。断る余地がない。
なにやってんだ俺は……。それでも、断らないと。
「気遣ってくれるのは嬉しいけど、ごめん。家には行けない」
──しっかりと、お断りをした。
俺にはちほが居るんだから。
◇◆◇◆◇◆
「おっじゃましまぁーーすっ!」
「いや、誰もいねーから」
「いやいや、一応ですよ! 礼儀ですっ」
俺の家に入るや否や、興味津々にあたりを見渡し始めた。
「ちゃんと掃除してます~? 女の子を招く玄関では無いですね。はい。及第点もあげられませんっ!」
決して招いたわけではない。ついて来ちゃったんだよ。それはもうぐいぐいと。
さすがに最側の家のお風呂には入れない。彼女だって居るし、別の女の家に上り込むなんて絶対ダメ。
そう、思ったんだけど…………。
状況悪化してませんかね?!!
「とりあえず、俺の部屋でくつろいでていいよ。シャワー浴びて着替えてくるから」
タタタタタタっ!
「先輩の部屋はここかぁ!! あっ、違う」
「こっちだから。落ち着いてくれよ」
「あははっ、ごめんなさい」
この様子なら安心だな。やましい事なんてない。いつもの最側だ。バイト仲間の家に遊びに来た。
たぶん、その程度の感覚だろう。
ガチャンッ。
「ここな。適当にくつろいでて」
部屋に入るや否や、ベッドにダイブした。
「うげ~、先輩のにおいだぁ……」
「おまえ、失礼だな!!」
「てへっ! って、パソコンも電気も付けっ放し。え~、動画垂れ流しですかぁ? ……もぐもぐ男爵25世?」
「勝手に物色するな! シャワー浴びて来るから、またな」
さてと。──とは、ならない。
◇◆
『り、り、り、り、り、り、リク?!』
はい。当然の反応。
『お、女を連れ込んで来た!! 二見ちゃんじゃない女を!!!!』
おっしゃる通り。
『しゃ、シャワー浴びてくる? さ、先に?!』
〝先に〟とは言ってません!
『妖精さん。これには深い事情があって……』
驚いた様子こそ見せたが、何やら自己完結したようにふむふむし出した。誤解しているのは明らかだ。
『何をぼけーっとしておるのじゃ! とりあえず紅茶でも出せっ! まったく気の利かんやつじゃ』
あぁ、そうか。誰かが家に来ることなんて初めてだから考えもしなかった。
『ほれっ』と、妖精さんお気に入りのアップルティーを手渡された。
──よし、お茶入れ完了。持ってくか。
『どこへ行く? 茶菓子はどうした? せっかく最側ちゃんが来てくれたんじゃ。しっかりとおもてなしをするのじゃ!』
おもてなしって。これは重症だな。
でも、今朝のことがある手前……。
『ほれっ』と、今度はモンブランを手渡して来た。
『え、これは……』
『ええんじゃ。精一杯のおもてなしをしよう。この家に初めて女の子が来たのじゃから!』
お・も・て・な・し。
はぁ。
どうしてこんな事に。今日は厄日なのかな……。
無数にあったはずの選択肢を尽く間違え続け、今の状況を生んだ。
どれか一つでも欠けてたらこうはなっていない。
いったい俺は……なにがしたいんだろう。
──自分で自分がわからなくなってしまった。
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