優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

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92話

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「バカなんですか? 絶対お母さんに誤解されましたよ。もー、最悪です」


 最側の部屋に二人きり。
 帰れと言われても引き下がらなかった……俺のわがままを押し通す形で、今こうやって二人で居る。

「な、なんですか? さっきからジロジロと」

「髪、伸びたなって。可愛くなったな」

 あれ、俺、今なんて……。まぁいいか。もう、素直になるって決めたんだ。
 
「は? はぁぁー?! も、元から可愛いですからっ!!」

「そうだな。そうかもしれない」
「かもじゃなくて、そうなんですッ!」

 そう言うと最側はプイッとわざとらしく膨れた様子でそっぽを向いた。あぁ、懐かしい。この感じ。俺はいま、最側と話してる。四ヶ月ぶりに。

 きっと、今のこの姿が四天王になった時の最側だったんだ。相変わらずのわがままそうな幼い顔立ちなのに、どこか垢抜けて少し大人っぽく見える。
 肩下まで伸びた艶らかなミルクティー色の髪はサイドでアレンジされていて、あの頃とはまったく違う。

 住む世界が違うと直感的に感じてしまうような、人を寄せ付けない……まるで人形のような、そんな美しさが滲み出ている。

 でも、どこか寂しいような。とげとげしさを感じる。

「えっ、先輩……? どうして……泣くんですか?」

 あ……れ? 目を擦ると指が濡れる。
 なんだよ。ははっ。

「これは、その……自然現象。気にすんな」
「なにそれ。勝手な人。ほんと、先輩は勝手な人です。泣くくらいならどうして──、はぁ」

 途中まで言いかけて、ため息をついた。なにを言いかけたのか、わからない。でも、そのため息からは呆れと諦めが感じとれた。

 夏が終わって秋がきて、もう冬になろうとしている。

 俺と最側の空白の四ヶ月。今更過ぎる。俺は本当に勝手なやつだ。

 ……それでも。

「久々にさ、一杯やろうよ。今日はお前と飲みたい気分なんだ」
「はぁ? ほんと、勝手な人。ていうか学校はどうしたんですか? サボりですか?」
「まぁ、そんなとこ」
「学校サボって、昼間から女の家に上がり込んで、一杯やりたい、飲みたいとか。チャラチャラしてますね」

 あぁ、なんだろ。最側っぽい。

「ほらっ、今日は俺の奢りだから。好きなだけ飲んでくれよ!」

 大量に持って来たメロンソーダの袋を最側の前に出し、一本、手に持たせた。

「こ、こんなにいっぱい……飲めるわけないじゃないですか……」
「お前、これ好きだったろ」

「なんですかそれ……先輩はほんとズルいです。そうやっていつも──」

 〝〝カンッ〟〟

 言葉を遮るように、あの日を取り戻すかのように、俺は蓋を開けてもいない缶ジュースをぶつけた。

 最側は突然のことで驚いた表情を見せたが「バカ……」と小さな声で零すと、どっと深いため息をつき、優しく笑ってくれた。

「しょーがないから付き合ってあげます。学校サボって来ちゃった不良な先輩にッ。今日だけ特別です」

 ◇

 それから、空白の時間を埋めるように想い出に浸りながら俺たちは飲み会をした。

 もう迷わない。最側に踏み込む。今までずっと彼女が居るからと踏み込まなかった。

 踏み込めなかったわけじゃない。踏み込まなかったんだ。ちほを言い訳にして、自分に嘘をつき続けた。


 例え、何日掛かろうと。何回、繰り返そうとも。

 ──俺はもっと、お前を知りたい。
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