優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

文字の大きさ
104 / 106

104

しおりを挟む
  
 俺の心はあの日からずっと、止まったままだった。

 友達になろうと好意を向けてくれた秋月さん。
 泣きじゃくる俺にハンカチまで差し出してくれた。それを振り払い、結局ここに居る。

 ──噴水、木のベンチが並ぶ憩いの場。

 ◇
 秋月さんは、自分ではない他の誰かに優しくする姿を見て好意を抱く子だったんだ。

 見返りを求めない。善度100%の優しさ。
 正義のヒーローに恋をするような真っ直ぐな子。

 俺はたぶん、条件を満たした。
 当たり障りなく過ごせば、そう遠くない未来に秋月さんと付き合える。ずっと見てきたからわかるんだ。

 ここがゴールでハッピーエンドの終着点。

 千載一遇のチャンスにして奇跡。

 ……それなのに、その想いを振り払った。


「なにやってんだよ……俺」

 馬鹿なことをしたなと後悔をしてみるも、悔やむことができない。

 これで良かったとさえ思ってしまう。

 いつの間にか俺は、目的を見失っていたんだ。
 秋月さんと付き合うためにタイムリープをしてきたはずなのに。

「…………そっか」

 〝目的を見失った先に未来はない〟

 妖精さんに口を酸っぱくして何度も言われた言葉を思い出す。

「そういうこと……か」

 ──それは、今更過ぎる答えあわせだった。


 ◇◇◇

 俺が後悔しているのは、いつだって最側のことだった。

 俺は最側のことを殆ど知らない。

 更衣室で一人で着替えることに怯えていたこと。
 ハンカチを買いに行く日、待ち合わせに遅れて来たこと。
 風間とのこと、学校を辞めたこと、友達が居ないこと。

 そして、七夕の日。
 どうしてあんなにムキになっていたのか。俺はその理由さえも知らない。

 メロンソーダが好きとか、星が大好きとか、プンスカする時は本当には怒っていないとか、そんなどうでも良いことはたくさん知っているのに、本当に知らなければいけないことを何一つ知らない。

 それでも、一つだけ確かなことがある。

 それは、俺が関わったせいで学校を辞めてしまったこと。

 関わることで、きっと不幸にしてしまう。
 だから……関わらないことが、唯一してあげられること。

 そうすれば、未来は元の形を辿る。
 最側は四天王になって学校を辞めることもない。

「わかってる、はずなのに……」

 どうしてこう、心や気持ちってやつは言うことを聞いてくれないのかな。

 会いたい。話したい。側に居たい。

 とめどめない想いが、溢れてくる。

 気を抜くと、すぐにでも会いに行ってしまいそうで……怖い。

 住んでいる団地の部屋番号も知っている。
 携帯電話の番号も脳裏に焼き付いている。

「…………」

 だからもう、おしまいにしよう。
 この世界に、さよならをしよう。

 ◇◇◇

 穏やかに流れる風。
 空を見上げると満天の星。

 月明かりも綺麗で風が気持ちい。

 絶好の死に日和だ。

 結局、運命は変わらない。こうなるように出来ているのかもしれない。
 もしかしたら、宿命と呼ぶのが正しいのかも……しれない。

 だって、俺はいま、
 自分の意思で学校の屋上に来ているのだから。

 ここまでの足取りはとても軽かった。
 まるで、こうなることを望んでいるかのように、軽快な足取りだった。

 ──やっと、終われる。


 でも、あの時とは少し違う。
 申し訳ない気持ちが押し寄せてくる。

「……妖精さん、ごめんね」

 心残りがあるとしたら、始まりの日に交わした妖精さんとの約束だった。

 死ぬなと何度言われたのか、正直わからない。

 でも、運命には逆らえない。
 ……都合よく、運命を口にしているだけかもしれない。


 それでも、もう……。
 地面のないこの先の一歩を踏み出さずにはいられない。


「……妖精さん、今までたくさん、ありがとう」

 精一杯の感謝を、言葉に乗せて。


 ──俺は、最後の一歩を……踏み出した。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...