「ふっざけんな──ッ!」誰も居ない夜の教室で、イケ好かないギャルの机を蹴飛ばしたら──。ぼっちで陰キャな俺の日常はハレンチに包まれた。

おひるね

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     直パン座りの真実②

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 家では擬似的にだが『ライオン使い』としてデビューを果たした俺だけど……。

 学校では相も変わらずNOと言えない日陰者の日常が待ち構えている。

 教室に入れば、今日も朝から音霧さんが俺の机の上に腰を掛けていた。

「それ美味しそぉ~! ひとつもーらい! いぇいっ!」
「あっ、ちょっとあず! 勝手に取るなし!」

 そんな音霧さんは軽井沢さん(通称ケイ)のお菓子を無垢な笑顔で強奪すると、校則から逸脱した短い丈のスカートがぴゅいっとなびき──パステルブルーの秘めたる布がチラリと姿を現した。

 席へと向かう俺の足はピタリと止まる──。

「も1個もーらいっ! いぇい!」

 またもやスカートがぴゅいっとなびき、パステルブルーが露見する。朝から巻き起こる、スカートひらりの二連撃──しかしよく見れば、これは……水玉模様!

 ……大丈夫だ。落ち着け。
 水玉模様とわかったのなら、臆することはない。

 俺は音霧さんのパンツが恐ろしくて仕方がない。その理由は言わずもがな、彼女が直パンで俺の机の上に座ってしまうからだ。

 今まさに、机に何が押し当てられているのか。その全貌がわかっているのとそうじゃないのとでは、破壊力が段違いに変わってくる。
 
 だから知りたくないんだ。
 今日、君がどんなパンツを履いているのかだけは、絶対に知ってはならない情報なんだよ……。

 だが……。水玉模様とあらば、話はべつだ!

 昨晩、四つん這いで突き出されるお尻越しに凄まじい水玉模様を見たばかりだった。

 今も脳裏に焼き付いている──あの凄まじい破壊力と比べれば、チラッと見える程度の水玉模様など、恐れるに足りない!

 それはたとえ直パンで座られていようとも、だ!

 カエデライオンとのトレーニングに感謝を抱きながら、俺は自分の席へと足を動かす──。

「つーかさ、たまにはあずも自分で買ってきなよ。食べてばっかじゃん」
「うんっ! 今度買ってくるからぁっ! ってことで、もう1個もーらい!」

 ……三連撃目。

「いや、もう本当に取るなし!」

 音霧さんのお菓子強奪(パンチラ)が続く中、俺はそぉっと自分の席の椅子を引く。
 物音立てずに悟られないように最善の注意を払いながら、気配を殺して着席する。

 ……ふぅ。

 まぁ、臆することがなければ毎朝こんな感じだ。
 
 とはいえ休み時間はほぼ必ずと言っていいほど、音霧さんは俺の机に腰を掛けてしまう。

 隣の席である軽井沢さんが窓際最奥の席で、その前の席が瀬須川さんともなれば、俺の机の上がベストポジションになってしまうのは仕方のないことだ。

 なにより、最初の頃は「ねえねえ、座っていい?」と聞かれていた。
 当然、断れるわけもなく今に至るのだから、本当に仕方のないことなんだ。

 まっ、二学期になれば席替えがあるからな。
 六月も今週で終わりともなれば、あと少しの辛抱だ。

 掃除当番を押し付けられるのとは違って、直パン問題はなにもせずとも終わりを迎えてくれる。

 だからこのままでも、いいかな。なんて思っていたりもする。


 
 ☆ ☆

 が、しかし──。
 今日は梅雨の中休みで、夏を先取ったような蒸し暑い日だった。

 そんな中で行われた三限目の体育。

「もうだめかもしれないにゃあ……」

 体操着姿で背中に汗をびっしょりと帯びた音霧さんが──。やはり俺の机の上に座っていた。

「馬鹿ね。私たちと一緒に見学すればよかったのに」
「マラソン大会の練習とか走り損っしょ。本番だけ適当に走って途中でリタイアするのは鉄板じゃね? あずは変なところで真面目だからなー」

「なっ! ズル休みはよくない!」

 およそ適切ではない瀬須川さんと軽井沢さんの言葉に共感できてしまうくらいに、救いのない状況だった。

 体育を頑張ってしまった音霧さんからは、甘美でハレンチな香りが蒸気のように、むんむんとしている。それはもう──もあもあむんむんもあむんむんと熱を帯びるように──。

 この状況で俺が講じられる対策は、せめて匂いを嗅いでしまわないようにと『口呼吸』に徹するのみ──。

「つーかあず、見てるだけで暑苦しいから早く着替えてくんない?」

 ナイス軽井沢さん! と、思ったのも束の間。言いながら音霧さんに汗拭きシートを渡してしまった。

 とてつもなく、嫌な予感がする。

「いいの? じゃあ一枚もーらい! いぇい!」
「って、あっ! 二枚取ってるし!」

 すると音霧さんは体操着の中に手を入れて脇やら身体を拭き拭きし始めた。……もちろん、俺の机の上に座ったままで。

 その拭き拭きは背中にまで伸びてきて──。

 さらには腰へと下がり……。
 そのままハーフパンツのウエスト部分にまで侵入を果たす……。

 ちょ、あの……。すぐ後ろに俺、居るんだけど……。

「あぁ~! すぅすぅするー! 気持ちいぃ~!」

 すると使い終わったであろう一枚目の汗拭きシートをゴミ箱には捨てに行かず──。そのまま腰掛ける机の上に置いてしまった!

 あ、あの……。俺の机にゴミを置くのはやめてもらっていいですか。

 ……とは、言えるわけもなく。

 二枚目は脚を拭くのに使い──。やはりどうしたって、使い終わった汗拭きシートは俺の机の上に置いてしまった。

 ちょ、本当に……あの……。

「着替えるのめんどくさいにゃあ。このまま授業受けちゃおうかなー」
「いっぱい汗をかいたのだから、着替えなきゃ風邪引くわよ? お手洗いに行くのなら付き合ってあげるから、行くなら早く行きましょう」

「うーん。いい! トイレまで行くのめんどくさいから!」

 瀬須川さんからの申し出をひと蹴りにすると、シュタっと俺の机から降りた。

 そして十秒経たずに戻って来たかと思えば、手にはスカートとワイシャツを持っていて、再び俺の机の上に座ってしまった……。

 ……まさか、ここで着替えるつもりなのか?


 そのまさかだった。音霧さんは体操着の上からワイシャツを羽織ると、もぞもぞもぞ……もぞもぞもぞ──。

 え……えぇ…………。本当に勘弁してくれよ……。

 気配を殺して、息を潜めるように座っていたことが災いした。
 音霧さんにとって、俺は意識の外に出てしまっているんだ。

 だってこんなの……。真後ろに男子が居て、至っていい行為じゃないだろ……。

 そうして体操着を脱ぎ終わると、もはやお決まりのように俺の机に置いた。……背中まで汗びっしょりになっていた、ハレンチ極まりない体操着が──まるで配膳されるように置かれてしまった。

 できたてホカホカの料理がもあもあむんむんと、その存在感を現すように──。

 ……どうして、こんなことに……。
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