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🏰第1章「辺境のうそつき、帝都へ」(全4話)
第1章 第2話「キレ芸ヒロインと目が合った(冷たい)」
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帝国身分登録局──それは、華麗なるマウント合戦の戦場である。
「“祭事と神官の家”か……お堅そうだけど、清潔感は合格ね」
「“武芸と職人の家”って……ぶっちゃけ脳筋でしょ?」
「“海賊と商人”? え、それ冗談じゃなくて?」
午前十時、登録所の待合ホールは、貴族たちの“目線だけの社交界”と化していた。
サシャ・アルバは、隅の椅子にふんぞり返りながら、鼻の奥で笑う。
(おっと、視線が痛い。帝都の貴族って、“無言で悪口言う選手権”でも開催してるの?)
自分の職業身分〈海賊と商人〉は、帝国内では最底辺。
ここにいる全員が、彼を「場違い」と断じている。
だが──サシャは、そんな空気を気にも留めなかった。
というか、ちょっと楽しい。
(誰も僕を信用してない。最高の立ち位置だよね)
そのときだった。
「――リナ・ローレンス様、受付へどうぞ!」
場が、凍った。
足音すら神々しく聞こえるほどに静まり返るなか、ひとりの少女が入ってきた。
長く美しい蒼髪が揺れる。
清楚な白と青のドレスに身を包み、背筋は1ミリも曲がらない。
頬には紅の一閃。瞳は、宝石より澄んでいる。
「うわ……」
「やば……やっぱ令嬢の格、違うって……」
「ちょ、カメラ回していい?」
モブ女子たちが騒ぐなか、サシャはひとこと。
「……完璧な、炎上体質だなあ」
なぜなら──彼女の持っている身分証に、こう書かれていた。
《政策と貴族の家》
(ガチ中枢じゃん。ヤバ……この人、間違いなくめんどくさい)
予感は、当たった。
「貴方……サシャ・アルバ、ですか?」
リナ・ローレンスが、歩み寄ってきた。
眉一つ動かさずに、サシャの書類を見下ろす。
「“海賊と商人”。しかも、滞在許可証が“手書き”ですって……? 本気で提出なさったのですか?」
「ええ、もちろん。帝都の皆さん、寛大ですから」
「ふざけないで。私、冗談で炎上したこと、何度もありますのよ?」
(うわぁ、火薬積んでるなあこの人)
それでもサシャは、にっこりと笑った。
「じゃあ気をつけないと。……その髪、思ったより燃えやすそうだし」
刹那。
リナの眉がぴくりと跳ねた。
空気が一瞬、凍る。
(え、今の、引いた? それともキレた?)
「この……低能がァ!!」
来たッ!!
周囲の魔力が爆ぜ、地面が凍る。
何もしてない受付嬢が「えっ!?何!?また氷!?」と叫ぶ中、サシャは床を滑って逃げた。
「え、ちょ、ちょっと!?僕まだ書類提出してな──」
「黙りなさいこのクズ!!」
叫ぶリナ。
キレ芸の化身と化した貴族令嬢。
その瞳が、青く輝いていた──氷魔法、暴走モード。
でも。
(……すげぇ、キレてんのに、上品だな)
不思議と、魅せられるものがあった。
結果。
建物の一部が凍結し、身分登録が一時中断。
だが事件は、さらに続く。
「……あら。あなた、皇帝からの召喚状が来てますわね」
怒りを沈めたリナが、淡々と封筒を差し出してきた。
「まさかとは思いますけど。貴方も、“選ばれた側”?」
「さあ。帝都って、ミスを“見なかったことにできる”街らしいですし」
「こんなひとと組むなんて・・・」
「信じたの? ……それが、君の負けだよ」
ふたりの間に、火花が散った。
そして凍った。
受付のモブ女子が、こっそり呟いた。
「……これ、絶対、相性最悪からのバディ化するやつじゃん」
「“祭事と神官の家”か……お堅そうだけど、清潔感は合格ね」
「“武芸と職人の家”って……ぶっちゃけ脳筋でしょ?」
「“海賊と商人”? え、それ冗談じゃなくて?」
午前十時、登録所の待合ホールは、貴族たちの“目線だけの社交界”と化していた。
サシャ・アルバは、隅の椅子にふんぞり返りながら、鼻の奥で笑う。
(おっと、視線が痛い。帝都の貴族って、“無言で悪口言う選手権”でも開催してるの?)
自分の職業身分〈海賊と商人〉は、帝国内では最底辺。
ここにいる全員が、彼を「場違い」と断じている。
だが──サシャは、そんな空気を気にも留めなかった。
というか、ちょっと楽しい。
(誰も僕を信用してない。最高の立ち位置だよね)
そのときだった。
「――リナ・ローレンス様、受付へどうぞ!」
場が、凍った。
足音すら神々しく聞こえるほどに静まり返るなか、ひとりの少女が入ってきた。
長く美しい蒼髪が揺れる。
清楚な白と青のドレスに身を包み、背筋は1ミリも曲がらない。
頬には紅の一閃。瞳は、宝石より澄んでいる。
「うわ……」
「やば……やっぱ令嬢の格、違うって……」
「ちょ、カメラ回していい?」
モブ女子たちが騒ぐなか、サシャはひとこと。
「……完璧な、炎上体質だなあ」
なぜなら──彼女の持っている身分証に、こう書かれていた。
《政策と貴族の家》
(ガチ中枢じゃん。ヤバ……この人、間違いなくめんどくさい)
予感は、当たった。
「貴方……サシャ・アルバ、ですか?」
リナ・ローレンスが、歩み寄ってきた。
眉一つ動かさずに、サシャの書類を見下ろす。
「“海賊と商人”。しかも、滞在許可証が“手書き”ですって……? 本気で提出なさったのですか?」
「ええ、もちろん。帝都の皆さん、寛大ですから」
「ふざけないで。私、冗談で炎上したこと、何度もありますのよ?」
(うわぁ、火薬積んでるなあこの人)
それでもサシャは、にっこりと笑った。
「じゃあ気をつけないと。……その髪、思ったより燃えやすそうだし」
刹那。
リナの眉がぴくりと跳ねた。
空気が一瞬、凍る。
(え、今の、引いた? それともキレた?)
「この……低能がァ!!」
来たッ!!
周囲の魔力が爆ぜ、地面が凍る。
何もしてない受付嬢が「えっ!?何!?また氷!?」と叫ぶ中、サシャは床を滑って逃げた。
「え、ちょ、ちょっと!?僕まだ書類提出してな──」
「黙りなさいこのクズ!!」
叫ぶリナ。
キレ芸の化身と化した貴族令嬢。
その瞳が、青く輝いていた──氷魔法、暴走モード。
でも。
(……すげぇ、キレてんのに、上品だな)
不思議と、魅せられるものがあった。
結果。
建物の一部が凍結し、身分登録が一時中断。
だが事件は、さらに続く。
「……あら。あなた、皇帝からの召喚状が来てますわね」
怒りを沈めたリナが、淡々と封筒を差し出してきた。
「まさかとは思いますけど。貴方も、“選ばれた側”?」
「さあ。帝都って、ミスを“見なかったことにできる”街らしいですし」
「こんなひとと組むなんて・・・」
「信じたの? ……それが、君の負けだよ」
ふたりの間に、火花が散った。
そして凍った。
受付のモブ女子が、こっそり呟いた。
「……これ、絶対、相性最悪からのバディ化するやつじゃん」
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