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私の決めた結婚③
それを言われてしまっては、ユリには返す言葉がない。
5年という交際期間は、長すぎるとまではいわないが、決して短くはない。
お互いの性格も、ライフスタイルも、十分すぎるくらいに知っている。
ときめきからはすでに遠く、恋人同士としては倦怠期に突入していたともいえる。
付き合い始めの2年間は、ユリはとにかく結婚したくて仕方なかった。
慣れない仕事や学生時代とは違う生活環境、友人の少ない孤独な毎日がただただ辛く、秀夫に依存しきっていた。
そんな若さや幼さからくるユリの甘えを、秀夫は認めなかった。
秀夫自身、仕事で成果を上げて、希望の部署、勤務先への移動を勝ち取ろうと必死な時期だった。
そんな秀夫に突き放され、ユリは泣く泣く仕事に打ち込んだ。
3年目を迎えるころには、環境にも慣れ、仲間も増え、責任のある仕事も任されて、忙しくも楽しい、充実した毎日を送りはじめた。
逆にそのころ、秀夫は結婚をほのめかすようになった。
社内での地位も固まり、年齢も30代に入った。そろそろ身を固めろと、周りからもささやかれたのだろう。
しかし、今度はユリがその気になれない。
今の毎日が楽しい。
両親も、20代前半の結婚には良い顔はしないだろうと必死で言い訳した。
友人も、まだまだ独身のほうが多く、ユリは自由な時間を求めていた。
8歳の年の差は、2人の人生のタイミングをことごとくずらした。
転勤が決まった秀夫からのプロポーズは、ロマンチックとは程遠く、最後通牒に近いものだった。
結婚するか、別れるか。
このままずるずると遠距離恋愛を続けるつもりも、時間も、自分には無いと。
「どうする?」と迫られれば、ユリの結論は一つだ。別れたいと思ったことなどないのだから。
頷いて指輪を受け取ったら、お互いの両親への挨拶、職場への報告、結婚式の準備と、順番に進めていくだけ。
結納の前後や、ウェディングドレス選びなど、心の浮き立つ瞬間も多少はあったけれど、どちらかといえば、惰性で流されているような感覚のほうが強かった。
忙しいばかりで、楽しめない日々に、ついつい愚痴は実の母親にむかう。
「手伝ってほしいと、はっきり言えばいいでしょう」
「不満は具体的に伝えないと。察してほしいは我が儘よ」
父の会社の経理を一手に引き受けるやり手の母は、つまらない愚痴に同調などしてはくれない。
「いやだと思うなら、そんな結婚はやめなさい」
「あなたが決めた結婚でしょう」
ユリは何も言い返せない。
5年という交際期間は、長すぎるとまではいわないが、決して短くはない。
お互いの性格も、ライフスタイルも、十分すぎるくらいに知っている。
ときめきからはすでに遠く、恋人同士としては倦怠期に突入していたともいえる。
付き合い始めの2年間は、ユリはとにかく結婚したくて仕方なかった。
慣れない仕事や学生時代とは違う生活環境、友人の少ない孤独な毎日がただただ辛く、秀夫に依存しきっていた。
そんな若さや幼さからくるユリの甘えを、秀夫は認めなかった。
秀夫自身、仕事で成果を上げて、希望の部署、勤務先への移動を勝ち取ろうと必死な時期だった。
そんな秀夫に突き放され、ユリは泣く泣く仕事に打ち込んだ。
3年目を迎えるころには、環境にも慣れ、仲間も増え、責任のある仕事も任されて、忙しくも楽しい、充実した毎日を送りはじめた。
逆にそのころ、秀夫は結婚をほのめかすようになった。
社内での地位も固まり、年齢も30代に入った。そろそろ身を固めろと、周りからもささやかれたのだろう。
しかし、今度はユリがその気になれない。
今の毎日が楽しい。
両親も、20代前半の結婚には良い顔はしないだろうと必死で言い訳した。
友人も、まだまだ独身のほうが多く、ユリは自由な時間を求めていた。
8歳の年の差は、2人の人生のタイミングをことごとくずらした。
転勤が決まった秀夫からのプロポーズは、ロマンチックとは程遠く、最後通牒に近いものだった。
結婚するか、別れるか。
このままずるずると遠距離恋愛を続けるつもりも、時間も、自分には無いと。
「どうする?」と迫られれば、ユリの結論は一つだ。別れたいと思ったことなどないのだから。
頷いて指輪を受け取ったら、お互いの両親への挨拶、職場への報告、結婚式の準備と、順番に進めていくだけ。
結納の前後や、ウェディングドレス選びなど、心の浮き立つ瞬間も多少はあったけれど、どちらかといえば、惰性で流されているような感覚のほうが強かった。
忙しいばかりで、楽しめない日々に、ついつい愚痴は実の母親にむかう。
「手伝ってほしいと、はっきり言えばいいでしょう」
「不満は具体的に伝えないと。察してほしいは我が儘よ」
父の会社の経理を一手に引き受けるやり手の母は、つまらない愚痴に同調などしてはくれない。
「いやだと思うなら、そんな結婚はやめなさい」
「あなたが決めた結婚でしょう」
ユリは何も言い返せない。
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