どうしてあなただけ幸せなんですか?

ゆん2022

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二通目①

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「内藤さん。書類、そろいましたか?」
人事部の女性社員に、後ろから声をかけられた。肩がびくりと跳ねる。
「すみません。まだ、住民票を用意してなくて…」
「早めにお願いしますね。保険証の切り替えや、通勤手当の絡みもありますから」
「はい。すみません…」
ユリは卑屈なほどにぺこぺこと頭を下げた。
(うううっっ、恥ずかしい…)注意されたことへの羞恥心は、そのまま秀夫へのイライラに置き換わる。
実は、ユリたちはまだ入籍をしていなかった。
もちろん、婚姻届けは記入済み。
本当は、結婚式の翌日、金曜日に秀夫と二人で役所に提出するはずだった。
そのまますぐに新しい住民票を取得して、ユリの様々な名義変更の手続きを済ませ、夜には二人きりで改めてお祝いの乾杯をする予定だったのだ。
結婚式は平日ということもあって、2次会はセッティングしなかった。
ユリの友人たちは、披露宴が終わるとそれぞれに帰宅した。
みんな遠方から出席してくれたので本当に申し訳なかったが、「連休にでも、あらためて集まろうね!」と笑って約束してくれた。
しかし、秀夫の方の出席者は、この町の住人が圧倒的に多かった。
遠方からの出席者でも、この町に実家がある幼馴染など、宿泊のあてのある人ばかり。
披露宴で適度にアルコールが入り、夕方に解散など、できるはずもなかった。
結局、町の繁華街のスナックで日付が代わるまでまでどんちゃん騒ぎ。
男ばかりの宴会で『初夜』への下世話な冗談を浴びせられながら、ユリは気まずい時間を笑顔で耐えた。
金曜日、秀夫は二日酔いで昼過ぎまで動けなかった。
それでも、ユリは秀夫が起きるのを辛抱強く待った。どうしても、今日中に婚姻届けを提出したかった。
午後2時を過ぎたころ、さすがに待ちきれずに揺り起こすと、頭の痛そうな顔をしかめながら、とんでもないことを言い出した。
「ごめん、今日無理。この後、達也たちと飲み会。準備しなきゃ」
達也とは、昨日紹介されて挨拶した、秀夫の幼馴染の名だ。
「何言ってるの?今日は私と出かける約束してたよね?」
「達也たち、昨日はそれぞれ実家に泊まって、明日帰るんだよ。みんな、今回俺の結婚式のために帰省したから、連休は帰ってこないんだって。だから、今日しか飲めないんだ」
仕方ないだろ?そうつぶやきながら、秀夫は大きく伸びをした。
「だって、それじゃあ婚姻届けは?」
「まだ役所、間に合うだろ?ユリが一人で出してきなよ」
「はぁ?」
自分でも、びっくりするほど大きな声が出た。
「なんで?婚姻届けだよ!一緒に出すって言ったじゃない!」
ユリの剣幕に驚いたのか、秀夫は気まずそうに頭を下げ、拝むように両手を合わせた。
「ごめん!でも、今日はほんっとに無理!そうだ、来週!来週のどっかで時間合わせて、昼休みに一緒に役所行こう!ねっ?」
どうやら、今日の約束はすっかり出来上がっているらしい。これ以上は、何を言っても無駄だろう。
「約束何時?送ってくよ」
すっかりあきらめて、ユリは尋ねた。
「5時!そうだ、ユリも一緒に行かない?ねっ?」
機嫌をとるように、甘えた声で秀夫が誘う。また昨夜のような、居心地の悪い飲み会などまっぴらだ。
「絶対、いや!!」
にらみつけると、秀夫は首を縮めて浴室に消えていった。








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