どうしてあなただけ幸せなんですか?

ゆん2022

文字の大きさ
11 / 31

三通目①

翌朝。一人で簡単な朝食をすませ、ユリは秀夫が起きてくるのを少し緊張しながら待っていた。
昨夜はやはり飲み会になったようで、秀夫の帰りは遅かった。泥酔した状態では、まともな話などできないだろう。ユリは早々にあきらめてベッドに入り、すぐに眠ってしまった。
洗濯機を回しながら居間とキッチンに簡単に掃除機をかけ、コーヒーメーカーをセットしてから、玄関に郵便物を取りに行った。ダイレクトメールが数通。その間に、すでに見慣れた花柄の封筒を見つけて、ユリは息をのんだ。
『佐藤 綾乃』からの、三通目だった。


ユリさん

先日は、取り乱した手紙を書いて、ごめんなさい。
本当に反省しています。
ユリさんからの返事が、なかなか届かないことにイライラしてつい、あんなひどい手紙を書いてしまいました。
ユリさんにだって、都合がありますよね。本当にごめんなさい。
実は最近、甲斐さんが少し冷たいんです。
一緒にいても、いつもユリさんのことを思い出しているんだと思います。
ユリさん。お願いですから教えてください。
どうしたら、あんなに甲斐さんに愛されるんですか?
どうしたら、愛してもらえるんですか?
お願いです、ユリさん。教えてください。
そして、彼をあなたから開放してください。
お願いです。返事を下さい。
ずっと待ってます。


一通目と同じ、きちんとした文字で書かれた手紙。相変わらず、意味不明の内容。
ユリは引き出しから、封筒と便箋のセットを取り出した。
昨年の秋に使った残りなので、色とりどりの紅葉がデザインされた、少し季節外れの柄だが気にしない。


前略

お手紙拝見致しました。
失礼ながら、なにか勘違いされていらっしゃるようです。
当方には、まったく心当たりがございません。
迷惑に感じておりますので、もうこれっきりにしていただきたいと存じます。

草々

佐藤 綾乃様
内藤 ユリ


できるだけ事務的な文章をつづり、封筒の裏に書かれたアドレスを確認する。
(本当に、届くのかしらね…)半分疑いながら、宛先を記入して、切手を貼った。


近所のコンビニまで歩いて、途中にあるポストに投函した。
肩の荷が一つ降りたような気がして、青い空を見上げた。日差しがまぶしい。こんなに良いお天気の日曜日を、1日寝て過ごすのはもったいない。秀夫を起こして、二人で出かけよう。買い物をして、おいしい物を作って、乾杯しよう。昨日決めたとおり、二人でたくさん話し合おう。
久しぶりに気分が浮き立つのを感じながら、ユリは急いで家に戻った。

感想 0

あなたにおすすめの小説

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。