11 / 31
三通目①
しおりを挟む
翌朝。一人で簡単な朝食をすませ、ユリは秀夫が起きてくるのを少し緊張しながら待っていた。
昨夜はやはり飲み会になったようで、秀夫の帰りは遅かった。泥酔した状態では、まともな話などできないだろう。ユリは早々にあきらめてベッドに入り、すぐに眠ってしまった。
洗濯機を回しながら居間とキッチンに簡単に掃除機をかけ、コーヒーメーカーをセットしてから、玄関に郵便物を取りに行った。ダイレクトメールが数通。その間に、すでに見慣れた花柄の封筒を見つけて、ユリは息をのんだ。
『佐藤 綾乃』からの、三通目だった。
ユリさん
先日は、取り乱した手紙を書いて、ごめんなさい。
本当に反省しています。
ユリさんからの返事が、なかなか届かないことにイライラしてつい、あんなひどい手紙を書いてしまいました。
ユリさんにだって、都合がありますよね。本当にごめんなさい。
実は最近、甲斐さんが少し冷たいんです。
一緒にいても、いつもユリさんのことを思い出しているんだと思います。
ユリさん。お願いですから教えてください。
どうしたら、あんなに甲斐さんに愛されるんですか?
どうしたら、愛してもらえるんですか?
お願いです、ユリさん。教えてください。
そして、彼をあなたから開放してください。
お願いです。返事を下さい。
ずっと待ってます。
一通目と同じ、きちんとした文字で書かれた手紙。相変わらず、意味不明の内容。
ユリは引き出しから、封筒と便箋のセットを取り出した。
昨年の秋に使った残りなので、色とりどりの紅葉がデザインされた、少し季節外れの柄だが気にしない。
前略
お手紙拝見致しました。
失礼ながら、なにか勘違いされていらっしゃるようです。
当方には、まったく心当たりがございません。
迷惑に感じておりますので、もうこれっきりにしていただきたいと存じます。
草々
佐藤 綾乃様
内藤 ユリ
できるだけ事務的な文章をつづり、封筒の裏に書かれたアドレスを確認する。
(本当に、届くのかしらね…)半分疑いながら、宛先を記入して、切手を貼った。
近所のコンビニまで歩いて、途中にあるポストに投函した。
肩の荷が一つ降りたような気がして、青い空を見上げた。日差しがまぶしい。こんなに良いお天気の日曜日を、1日寝て過ごすのはもったいない。秀夫を起こして、二人で出かけよう。買い物をして、おいしい物を作って、乾杯しよう。昨日決めたとおり、二人でたくさん話し合おう。
久しぶりに気分が浮き立つのを感じながら、ユリは急いで家に戻った。
昨夜はやはり飲み会になったようで、秀夫の帰りは遅かった。泥酔した状態では、まともな話などできないだろう。ユリは早々にあきらめてベッドに入り、すぐに眠ってしまった。
洗濯機を回しながら居間とキッチンに簡単に掃除機をかけ、コーヒーメーカーをセットしてから、玄関に郵便物を取りに行った。ダイレクトメールが数通。その間に、すでに見慣れた花柄の封筒を見つけて、ユリは息をのんだ。
『佐藤 綾乃』からの、三通目だった。
ユリさん
先日は、取り乱した手紙を書いて、ごめんなさい。
本当に反省しています。
ユリさんからの返事が、なかなか届かないことにイライラしてつい、あんなひどい手紙を書いてしまいました。
ユリさんにだって、都合がありますよね。本当にごめんなさい。
実は最近、甲斐さんが少し冷たいんです。
一緒にいても、いつもユリさんのことを思い出しているんだと思います。
ユリさん。お願いですから教えてください。
どうしたら、あんなに甲斐さんに愛されるんですか?
どうしたら、愛してもらえるんですか?
お願いです、ユリさん。教えてください。
そして、彼をあなたから開放してください。
お願いです。返事を下さい。
ずっと待ってます。
一通目と同じ、きちんとした文字で書かれた手紙。相変わらず、意味不明の内容。
ユリは引き出しから、封筒と便箋のセットを取り出した。
昨年の秋に使った残りなので、色とりどりの紅葉がデザインされた、少し季節外れの柄だが気にしない。
前略
お手紙拝見致しました。
失礼ながら、なにか勘違いされていらっしゃるようです。
当方には、まったく心当たりがございません。
迷惑に感じておりますので、もうこれっきりにしていただきたいと存じます。
草々
佐藤 綾乃様
内藤 ユリ
できるだけ事務的な文章をつづり、封筒の裏に書かれたアドレスを確認する。
(本当に、届くのかしらね…)半分疑いながら、宛先を記入して、切手を貼った。
近所のコンビニまで歩いて、途中にあるポストに投函した。
肩の荷が一つ降りたような気がして、青い空を見上げた。日差しがまぶしい。こんなに良いお天気の日曜日を、1日寝て過ごすのはもったいない。秀夫を起こして、二人で出かけよう。買い物をして、おいしい物を作って、乾杯しよう。昨日決めたとおり、二人でたくさん話し合おう。
久しぶりに気分が浮き立つのを感じながら、ユリは急いで家に戻った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる