どうしてあなただけ幸せなんですか?

ゆん2022

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三通目③

だめだ!とっさにそう思った。
このまま話を終わらせてしまったら、今までと何も変わらない。
「あとね、もう一つ相談があるの」
急いで3通の手紙をテーブルに並べる。
「読んでみてほしいの」
秀夫は怪訝な顔で最初の手紙を開いた。読み進めるうちに、その表情はどんどん険しくなる。

「何、これ」
「先週の土曜日に、一通目が届いたの。二通目が昨日、三通目が今朝届いた。ねぇ、どう思う?」
「どう思うって…」
後の2通にもざっと目を通しながら、秀夫は不機嫌な声を出した。
「この、『佐藤 綾乃』って誰?ユリの知り合い?」
「全然知らない人」
「『甲斐さん』は?前にうちの会社にいたあの人?」
「それもわからない。そもそも書いてあることが、滅茶苦茶なんだもの」
「ふ~ん。これ、ユリはどうしたの?」
「今朝、返事を書いて出したよ。ちゃんと届くかわからないけど」
「返事?なんて書いたの?」
心なしか、秀夫がどんどん不機嫌になっていく気がする。
「私には心当たりがないです。迷惑だから、もうやめてくださいって」
「ふ~ん。じゃあもう、いいんじゃない?いたずらだよ、きっと!」
吐き捨てるように秀夫が言った。
「いたずらって…そんな風には思えないよ。気持ち悪い」
「じゃあ、聞くけどさ。俺にどうしてほしいの?」
「え?」
どうしたらいいか分からないから、相談しているのだ。秀夫の突き放したような言い方に、ユリはひどく驚いた。
「だって…こんなの、どうしたらいいのか…」
「ユリ、返事したんでしょ?だったら、それで終わりでしょ」
まさか、相談せずに勝手に返事を出したことを怒っているのだろうか?
「そんな言い方…本当に悩んでたのに」
「そもそもさ、いたずらじゃないなら、この人はなんでこんな手紙よこしたの?」
「それが分からないから、気持ちが悪いんだよ?」
微妙に話が噛み合っていない気がする。ユリは何だか泣きそうな気持になってきた。
「あのさ。確認だけど。ユリ、本当に心当たりないの?」
「え?」
何を言いたいの?ユリは首を傾げる。
「だから。甲斐さんと。本当にそういうことは無かったの?」

突然頬を張られたような衝撃だった。この手紙を読んだ秀夫が、そんなことを考えるなんて思ってもみなかった。
全身の血が、一気に冷えるような感覚を覚える。のどがひりついて、上手く声が出ない。
「秀夫さん…私を疑ってるの?」
震えるような声を絞り出す。
「そうじゃないけど…そうじゃないけど!じゃあ、この手紙は何なんだよ!」
「私の方が聞きたいわ!!」
思わず叫んだ。気まずい沈黙が流れる。

「だからさ。きっとただのいたずらなんだよ」
秀夫がつぶやいた。自分自身に言い聞かせているようにも聞こえる。
「悪いけど、俺、もうひと眠りするよ。ユリは買い物にでも行って来たら」
もう話すことはないとばかりに、秀夫は寝室に戻った。
結局手を付けられなかったサンドウィッチにラップをしながら、なぜこんなことになってしまったのかを考える。もうユリにも、食欲は全くなかった。









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