どうしてあなただけ幸せなんですか?

ゆん2022

文字の大きさ
21 / 31

突然のピリオド②

しおりを挟む
ユリが突然やってきたことに、何か理由があると最初から見抜いていたのだろう。志保子と真奈美は、何も言わずにユリが泣き止むまで優しく背中を撫でてくれた。
「落ち着いた?何があったか、聞いてもいい?」
ティッシュの箱を差し出しながら、志保子が尋ねる。
ユリは、今朝届いた写真と手紙について、秀夫との言い争いについて、すべてを隠さず話した。話しながらまた少し泣けたけれど、うなずきながら聞いてくれる二人の優しさが心に沁みた、安堵の涙だった。
「何それ…信じられない!手紙もだけど、内藤さんの態度も!」
志保子が憤る。
「それは立派なストーカーだねぇ。警察に相談するのが当たり前だと思うよ」
口調は相変わらずおっとりとしているが、真奈美の表情は険しい。
二人がユリの分まで怒ってくれるのが分かって、ユリの気持ちは段々と落ち着いた。
「私ねぇ、志保子に話を聞いてからずっと思ってたんだけど…」
こてんと首を傾げながら、真奈美が話し出した。
「『佐藤 綾乃』?の住所はこの町なんだよね?ねぇ、会いに行ってみない?」
「あんた、なに馬鹿な事っ」
驚いた志保子が叫ぶ。ユリは両手で口元を覆って、目を見開いた。
自分から『佐藤 綾乃』に会いに行くなんて、考えたこともなかった。
「だってぇ。それが一番、手っ取り早い気がしない?ユリちゃんだって、いつまでも怖い思い、していたくないでしょう?それにさぁ。何だか腹が立つじゃん。相手だけ、一方的にこっちのことを知ってて、主導権握られてるみたいな感じって」
真奈美が好戦的に口の端を上げた。以前から知ってはいたけれど、実は彼女は絶対に敵に回してはいけないタイプの人間だと思う。
志保子もユリも戸惑ったが、真奈美の言うとおり、結局それが一番良い解決策に思われた。何より、3人一緒だということが、心強かった。
志保子に預けてあった手紙のリターンアドレスを頼りに、近くまでユリの車で移動した。手近なスーパーの駐車場に車を止め、小雨の降る中、それぞれに傘をさして電柱や角々の家の番地を見て回った。一度だけ出した返事はちゃんと届いたようだから、架空の住所ということはないだろうが、本当に『佐藤 綾乃』はそこに居るのだろうか?
番地が近づくにつれて、ユリの胸は苦しいほどにドキドキしてきた。
「あった」
前を歩く志保子がつぶやいた。まだ新しい2階建ての一軒家。『Satou』と筆記体で書かれた、透明のアクリル製のしゃれた表札が掛かっている。玄関先に、グレーの軽乗用車が止まっていた。
少し、意外な感じがした。勝手に、一人暮らしのアパートを想像していた。『佐藤 綾乃』は、この家の娘なのだろうか?
「ユリちゃん、大丈夫?」
真奈美が心配そうにユリの肩に手を置いた。ユリの顔は真っ青だったが、ここまで来て引き返す気はなかった。
「いくよ」
志保子が玄関のチャイムを押した。やや間があって、
「はい、どちら様ですか?」
インターフォン越しに、女性の声が聞こえた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...