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それから①
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髪を拭きながら寝室を覗くと、軽いいびきが聞こえた。秀夫もまた、定位置となったベッドの端で、ユリに背を向ける格好で小さくなって寝ている。
結婚して、このダブルベッドで眠るようになってから、一度も秀夫と向き合って眠ったことがないことにユリは気づいた。
お互いに背を向けて、広いベッドの端と端で眠る。なんだ、最初から…私たち、別々の方向を向いていたんだね…。思わず笑いがこぼれる。
秀夫と逆のベッドの端にもぐりこんで、ユリは静かに目を閉じた。
6時ころに起きだして、身支度を整えた。秀夫が起きてくる気配はない。
『休日出勤です』ダイニングテーブルにメモを残し、車で家を出た。
どこに行く当てもない。
コンビニでサンドウィッチとペットボトルのミルクティーを買って、しばらくうろうろと走り回った。
思いついて、町の運動公園の駐車場に車を停める。少し窓を開けると、朝野球だろうか。グラウンドの方から、カキーンと響く甲高い音と、かすかな歓声が聞こえた。
良いお天気の日曜日だ。窓から吹き込む風が心地いい。サンドウィッチでお腹が膨らむと、急に瞼が重くなってきて、ユリはシートのリクライニングを倒した。あっという間に、深い眠りに引き込まれていった。
どれくらい眠っただろう。ハッと目を覚まし、時計を確認すると、まだ9時前だった。
デパートも本屋も、ユリが時間をつぶせそうな場所はまだ開いていない。
(少し、散歩でもしようかな)車を降りて、軽く伸びをした。どっちに行こうか。ぐるりと周りを見渡す。
不意に、駐車場の入り口のそばに小さな不動産屋の看板を見つけた。
引き寄せられるように、そちらに歩いた。店の前で、小柄な年配の女性が掃き掃除をしている。ユリに気づくと、笑顔で挨拶してくれた。
「おはようございます。気持ちのいいお天気ですね」
「おはようございます。ええ、本当に…。あの、こちらのお店は、もう開いてるんでしょうか?」
ユリは会釈を返しながら尋ねた。
「あら、失礼しました、お客様だったんですね。どうぞどうぞ、お入りください」
ガラスの引き戸を開けて、ユリを中に案内してくれる。
正面にキャビネットと事務机。入って右側には、少し年季の入った革張りのソファーセット。木製のテーブルの上には、実家で見たことがあるような大きめのガラスの灰皿が置かれ、かなり短くなった吸い殻が2本入っていた。
痩せた白髪の男性が一人、片方のソファーに腰かけて新聞を読んでいる。女性が声をかけると、老眼鏡をずらしてぎろりとユリを見た。
「いらっしゃい」
愛想のかけらもない声で言う。
(どうしよう…)来てはいけない場所だっただろうか。もしかして、その筋のお店…?失礼な考えが頭をよぎる。そもそも、不動産屋に用など無いのに…。
向かいあうソファーを勧められて、恐る恐る腰を下ろす。すぐに先ほどの女性が、お茶を出してくれた。
「それで、どう言ったご用件ですか?」
「あの…実は…」
すみません、失礼しました。謝って、すぐに店を出よう…
「部屋を、探してるんです。一人で暮らせる部屋を」
考えてもいなかった言葉が、ユリの口から飛び出した。
結婚して、このダブルベッドで眠るようになってから、一度も秀夫と向き合って眠ったことがないことにユリは気づいた。
お互いに背を向けて、広いベッドの端と端で眠る。なんだ、最初から…私たち、別々の方向を向いていたんだね…。思わず笑いがこぼれる。
秀夫と逆のベッドの端にもぐりこんで、ユリは静かに目を閉じた。
6時ころに起きだして、身支度を整えた。秀夫が起きてくる気配はない。
『休日出勤です』ダイニングテーブルにメモを残し、車で家を出た。
どこに行く当てもない。
コンビニでサンドウィッチとペットボトルのミルクティーを買って、しばらくうろうろと走り回った。
思いついて、町の運動公園の駐車場に車を停める。少し窓を開けると、朝野球だろうか。グラウンドの方から、カキーンと響く甲高い音と、かすかな歓声が聞こえた。
良いお天気の日曜日だ。窓から吹き込む風が心地いい。サンドウィッチでお腹が膨らむと、急に瞼が重くなってきて、ユリはシートのリクライニングを倒した。あっという間に、深い眠りに引き込まれていった。
どれくらい眠っただろう。ハッと目を覚まし、時計を確認すると、まだ9時前だった。
デパートも本屋も、ユリが時間をつぶせそうな場所はまだ開いていない。
(少し、散歩でもしようかな)車を降りて、軽く伸びをした。どっちに行こうか。ぐるりと周りを見渡す。
不意に、駐車場の入り口のそばに小さな不動産屋の看板を見つけた。
引き寄せられるように、そちらに歩いた。店の前で、小柄な年配の女性が掃き掃除をしている。ユリに気づくと、笑顔で挨拶してくれた。
「おはようございます。気持ちのいいお天気ですね」
「おはようございます。ええ、本当に…。あの、こちらのお店は、もう開いてるんでしょうか?」
ユリは会釈を返しながら尋ねた。
「あら、失礼しました、お客様だったんですね。どうぞどうぞ、お入りください」
ガラスの引き戸を開けて、ユリを中に案内してくれる。
正面にキャビネットと事務机。入って右側には、少し年季の入った革張りのソファーセット。木製のテーブルの上には、実家で見たことがあるような大きめのガラスの灰皿が置かれ、かなり短くなった吸い殻が2本入っていた。
痩せた白髪の男性が一人、片方のソファーに腰かけて新聞を読んでいる。女性が声をかけると、老眼鏡をずらしてぎろりとユリを見た。
「いらっしゃい」
愛想のかけらもない声で言う。
(どうしよう…)来てはいけない場所だっただろうか。もしかして、その筋のお店…?失礼な考えが頭をよぎる。そもそも、不動産屋に用など無いのに…。
向かいあうソファーを勧められて、恐る恐る腰を下ろす。すぐに先ほどの女性が、お茶を出してくれた。
「それで、どう言ったご用件ですか?」
「あの…実は…」
すみません、失礼しました。謝って、すぐに店を出よう…
「部屋を、探してるんです。一人で暮らせる部屋を」
考えてもいなかった言葉が、ユリの口から飛び出した。
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