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第6章

6-12レッド

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 「アルフの目的は未だに不明ですが、何故アーカムの住人をエネルギー源として利用したのかは、おおよその見当がつきました」
 ルイーナが悲痛な表情で語り出した。
 「どういうこと?」
 「思念体というのはエネルギーそのものだということは以前にお話ししたと思います」
 いずみの質問にまともに答える覚悟のようだ。
 「逆に純粋なエネルギーとして利用しようとすると、思念体の協力が不可欠になります」
 「その場合は思念体が自分の身体の一部を提供するってこと?」
 「この3次元ではそういうことになるでしょう。しかし、6次元以上の世界は回路を形成して、エネルギーの供給をサポートすることになります」
 「思念体自体のエネルギーは減らないってこと?」
 「そうです。だから3次元にエネルギーを送るなら、私たち6次元の住人に協力を求めていれば、さほど問題はなかったと思います」
 「だったら何故?」
 「それが不明なんです。アルフは6次元以上の思念体だと思われるのですが、この6次元の住人をエネルギー源にする以上、この世界で何らかの活動を行っていたはずです」
 「その形跡がない…とか?」
 いずみが訝しそうな表情で聞き返す。
 「エリアごとまるまるエネルギーに変えて3次元に送るならともかく、ピンポイントで6次元の住人を一人一人搾取していたんです。その手段が解りません」
 「それは確かにおかしいわね。トラブルでも起こって。相手に恨みでもあるならともかく、いきなり無差別に誘拐(?)できないよね?」
 いずみも夜道の暗がりに潜む不審者のイメージを想像した。
 でもその方法だと少なからず、第三者に目撃される可能性が高い。
 「しかもアルフが肉体を持つ6次元の住民のみを…正確には3次元の住民も含めてですが、肉体からのエネルギー搾取に限定していることも不明です」
 「? どういうこと?」
 「もし、より高次元の者なら、わざわざ物質からエネルギーを搾取する必要がないと思われるからです」
 「あ、そうか。さっきの話からすれば、7次元以上ならアルフ自体もエネルギー体のはずだものね」
 「そういうことです。なのに、3次元では肉体を持たず、3次元の住人と融合している。もしかするとアルフの操ることができるエネルギーだけでは、3次元に肉体を構成できないのかも知れません」
 そこまで聞いて、いずみは以前に聞いた話を思い出した。
 「前にルイーナが言ってた、アルフが人体練成の実験をしてるかもって言ってたのは、それが理由なのね?」
 「はい。アルフは3次元の物質のみで自分の肉体を作ろうとしたのではないか? と考えたのですが…」
 「ん? 何か?」
 「果たして3次元で…時間に制約を受けた世界で肉体を持つ必要性があるのか? そこが疑問なんです」
 「ああ、そうだよね。私たちはせいぜい70~80年しか生きられないもの。今のように融合すれば、次々と相手を変えて行けるから、わざわざ時間的制約のある肉体を持つ必要性がないもの」
 いずみの言う“生きる”というのは、あくまで3次元にとどまるということだ。
 「ちょっといいかな?」
 その時、湧が口を挟んできた。
 「なんでしょう?」
 「もし仮にアルフが6次元以上の思念体だとしたら、何のために3次元での肉体というか、人体錬成にこだわるのかな?」
 「? どういうことですか?」
 「だって、肉体が欲しいならこの6次元で作った方が、もっと簡単にできるんじゃないかと思ったんだ」
 「確かにその通りですね。また、6次元で肉体を持っていたなら、わざわざ3次元に行く必要もないだろうと思われます」
 ルイーナも同意する。
 「なんで? 3次元が気に入ってたのかもよ?」
 「それならなおさらです。私たちがいるこの空間のように、ここなら3次元と同じ空間を作れます。なのに敢えて3次元にこだわるのが疑問なんです」
 ルイーナも悔しいのだろう。打開する方法が未だに見つけられないのだ。
 「あ! そうか! 3次元に戻ったら引っ捕まえて聞き出せばいいじゃん!」
 「は?」
 「簡単に言うけど、どうやって居所を突き止めるんだよ?」
 湧まで呆れて否定する。
 「何言ってんのよ。アルフって湧のお父さんと融合(?)してるんじゃないの?」
 「あ? あ、そうか。でも俺の父親は行方不明だぞ」
 「会社にいるんじゃないの?」
 「会社というか、研究所にいるのかも知れないけど…、その場所を俺は知らない」
 「電話で聞いてみたら?」
 いずみは当たり前のように言う。
 「会社の電話も分からないんだ。聞けるわけがないだろ?」
 「あの、それなら私が調べますよ」
 ルイーナまで簡単そうに口を挟んできた。
 「え? 分かるの?」
 「ええ、戻ったらすぐに」
 笑顔で返す。
 当の湧が眉間に皺を寄せながら、二人の会話を横で聞き流していた。
 今ここで反論したところで埒が開かないと思っていたからだ。

 「コホンっ…、さて、本題に戻りますよ」
 「え? なんだっけ?」
 早速いずみが茶化した。
 「いずみぃ~」
 ルイーナが氷点下の眼差しでいずみを射る。
 「ごめんごめん。色だよね。なんでもいいなら私は青がいいな」
 <え?>
 一同の視線がいずみに集中する。
 「俺は黒だな」
 今度は湧が呟いた。
 「ち、ちょっと待ってください。いずみかYOUには是非“レッド”をお願いしたいのですが」
 ルイーナが慌ててストップを入れる。
 「『なんで?』」
 見事なユニゾンで返す二人。
 「イメージ的にはリーダーの如月君がレッド。攻撃の主力たるいずみは“ブラック”のつもりで準備を進めていたんだが…」
 大介が簡潔に解説した。
 「俺はレッドには向いてないですよ。そもそも今までも人外との闘いは人目につかないように黒っぽい服装で活動してきましたから…」
 湧が反論する。便乗するようにいずみも…、
 「私も名前からして水をイメージする“青”もしくは“藍”がいい!」
 「ええっー!?」
 ルイーナも思わず叫んでしまった。
 「どうする? この二人は頑固だから絶対に主張は曲げそうにないぞ?」
 ほとほと困ったというていで、少し芝居掛かった言い方でルイーナに話しかける大介。
 「YOUは絶対にレッドを希望すると思ってたんですが、可能性としてはいずみもレッドに固執すると…」
 「それ、どういう意味ぃ?」
 いずみは不満そうに呟いた。
 「だって、レッドですよ。ヒーローですよ。リーダーですよ?」
 ルイーナも下がらない。
 「うん。いずみの方が俺よりふさわしいよね」
 「それ、どういう意味ぃ~」
 湧が他人事の様に同意したのが気に入らない。
 「湧はいつもレッドのソーシャルダンスを恥ずかしげもなく踊ってるんだから、湧の方が適任だよっ!」
 いずみもキレ気味に反論する。
 「いやぁ、いずみは今までもチームを率いて闘ってきたじゃないか。それに対して俺はずっとソロだったから、リーダーには向いてないんだよ」
 湧が自分には向いていないのだと、いずみに説得する様に諭す。
 「でもこれからはリーダーとして、このチームを率いていけばいいじゃん」
 「このチームのリーダーは大介さんじゃないか。あ、大介さんがレッドならみんな文句ないでしょ?」
 急にレッドを振られて、今度は大介が戸惑った。
 「俺はリーダーじゃなくて参謀役だよ。なら、ここはやっぱりいずみにリーダーを任せるしかないだろう」
 なんか汗をかきながら、いずみに矛先を向けた。
 「参謀って、この状況じゃルイーナが適任じゃないの? いろいろウラの事情にも詳しいし…」
 3人のレッド押し付け合いを目の当たりにして、ルイーナは絶望感すら感じていた。
 「レッドの奪い合いになると思っていたのに、押し付け合いって何ですかっ!」
 とうとう叫んでしまった。
 「私が一存で決めます! 拒否は許しません! いいですかっ!!」
 “はいっ!”
 あまりの剣幕に5人は揃って返事をしてしまった。
 「まずレッドはいずみです。YOUはブラック。大介さんはイエロー。坂戸さんはグリーン。初美はブルー。私はホワイトにします」
 「え~。湧だけ希望通りってずるいっ!」
 早速いずみが抗議した。
 「でも、まあなんとなくイメージ通り…かな?」
 今まで一度も発言しなかった初美がポツリと言った。
 「そうだな…」
 坂戸が即座に同意する。
 すると不思議なもので、いずみ以外の3人もなんとなく受け入れていた。
 「え? ええっー?」
 レッドという大役に抜擢されたいずみは、嬉しさより今後の心配ばかりが頭をよぎっていった。
 「リーダーって、私、何すればいいのよっ!」
 いずみの悲鳴は6次元の片隅の小さな空間だけに響き渡って…消えた。
    <続く>
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