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第6章

6-11イメージング

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 ルイーナの特訓は、体感時間で2週間目に入った。
 内容は、知識や基礎訓練から実践的なものに移り、いずみもやっと本来の活気を取り戻し始めていた。
 「今日からは、それぞれの能力強化に特化した訓練に入ります」
 「その前にちょっといい? ルイーナ』
 即座にいずみが発言して、話のヒザを折る。
 「なんでしょうか? 特に重要でなければ後にして欲しいんですけど…」
 明らかに不快な応答だ。
 「すぐに済むから。この特訓は後どのくらい続くの?」
 いずみにしては真剣な表情で詰め寄る。
 対してルイーナは脱力した表情で、
 「あなたがソレを言いますか?」
 ため息とともに答えた。
 「へ?」
 「いずみの成果次第なんですよ。いつまで続くか…」
 (ゲッ! ヤブヘビだったぁ~)
 いずみは内心悔やんだが、すぐに持ち直す。
 「ま、まぁ、実践的な訓練になったからすぐに追いつくと思うなぁ…」
 何にしても、これから挽回すると自信たっぷりないずみ。
 「お願いしますね。ただ、これからはもっと厳しくなるのでその分も覚悟しておいてくださいね」
 と、ルイーナもただでは了解しなかった。
 「え~~っ!」
 「さて、脱線しましたが…」
 と、いずみを一瞥して話を戻す。
 「今後は各々イメージカラーを設定して、連携攻撃に活かせる戦闘方法を訓練します」
 「イメージカラー? それはどういう…」
 またしてもいずみが口を挟む。
 「それをこれから説明するんです。少し静かに聞いていてください」
 とうとう冷めた目で威嚇するように睨む。
 さすがにこれ以上茶化すわけにはいかないと感じ、口を尖らせながらも黙り込んだ。
 最近、いずみは何かにつけて、大した意味もなくルイーナに突っかかっていた。
 ルイーナはもちろん、大介も湧も気付いてはいるのだが、だからと言ってその理由が分かるはずもなく、ただ静観するしかなかった。
 「じゃあ今度こそ話を戻します。イメージカラーというのは、自分自身が何色なのか? 他者は自分を色に例えると何色と思っているのか? それを認識してもらいたいのです」
 ルイーナはモニターに幾つかの色のタイルを表示した。
 「ここに表示したのは、私が今現在、クリーチャーたちに有効な必殺技を色に例えたものです」
 モニターには赤・青・黄・緑・黒・白・ピンク・紺の8色の単純な長方形が表示されている。
 「この中で紺もしくは紫は、日本では古来より神聖な色として扱われてきました。本来の紫とは赤に黒(墨)を混ぜたくすんだ色でしたが、中世には顔料の研究によって今の紫っぽい紺色になり、さらに現代は発色性の良い紫になっています」
 「そういえば紫って…」
 そこまで口にして、ルイーナが睨んでいることに気づいたいずみは慌てて口をつぐんだ。
 「色というのは大変重要なファクターで、はっきりと定義しているのは3次元世界のみなのです」
 「え? 他の次元では色がない? ってこと?」
 思わず湧が聞き返す。隣でいずみが湧を睨むが、ルイーナは湧の質問にはきちんと答えた。
 「それは“物質”として定義できるからです。4次元以上の世界はイマジネーションによって、同じものでも違った色に見えるのです」
 「それはどういう?」
 「今ここ(6次元)にあるものは、3次元と同じ条件で“物質”として存在います。でも本来は単なるエネルギー体なので、どのような色味にも変化するのです」
 「あ、色というものが曖昧なのか?」
 「そうです。受け手のイマジネーションによって、赤いものも黄色に見えたり、白いものも黒く見当たりするのです」
 「3次元は基本的に“物質”世界だから、イメージも何もないってことか」
 湧が何やら感心している。
 「3次元において、色というのは重要だと言いましたが、それは対象物を認識するのになくてはならないものなのです」
 物質である以上、光が当たるとその物体ごとの色が反射する。
 表面で反射するもの、少し物質の中で反射するもの、透過するものなど物体の特性を顕著に表している。
 物体であれば、光の反射は必ず起こるのだ。
 「そのため、高次元からのクリーチャーを含む来訪者(ビジター)は、物質の真似をしてイメージを対象者の思念に送りつけるのです。しかし、思念を受け付けないものには単なるエネルギー体でしかなく、せいぜい放電現象のような形にしか見えないのです」
 「でも俺たちが襲われたのは確かに物体化したクリーチャーだったと思うけど…」
 「そうだよね。実際に切られてるし…」
 湧に続いていずみも便乗する。
 「それはあなた方を含め、水無月の方々は能力者ですから。エネルギー体としてではなく、思念をもキャッチしていたからです。それに切られるのは放電現象にしか見えない人たちも同じですよ」
 「あ、そういうことか! 俺たちはクリーチャーとして認識していたが、見えない人たちは…かまいたちの様にいつの間にか切られていたと?」
 大介が納得した様に呟いた。
 「大介さんの言う通りです。見えない人たちは相手を認識することなく絶命しているんです」
 いずみも何か言おうとするが、言葉が見つからない。いずみも今の大介の言葉で大まかに納得してしまった。
 「そこで先ほどからお話ししている“イメージカラー”を用いた戦術です。私は3次元に赴いて、しばらくの間はアメリカの諜報活動に従事していました。3次元での活動期間は12年ほどですが、実際の活動期間は168年にも及びます」
 「はい? ルイーナって今いくつなのっ!」
 とうとういずみが叫び出す。
 これにはさすがにルイーナも無視できず、一拍置いてから5人に語り始めた。
 「私は先日お話ししたように“エルフ”の末裔です。この6次元世界でならほぼ不老不死であり、意味はないですが3次元世界での生活年齢にすると256歳だと思います」
 さすがのいずみも顎の筋肉が軟化したように、だらしなく口を開けている。
 「3次元では12年間ほとんど身体的変化がなく、何度も過去に赴いてこの世界の脅威と戦ってきました。その総時間が168年ほどです」
 「な、なんで過去に? もしかするとアルフ絡み?」
 本心から心配するような悲しそうな表情でルイーナを見つめる。
 ルイーナはそんないずみに微笑みを返して、話を続けた。
 「アルフ絡みと言うより、私はアルフを捕縛するために3次元に赴いたのです」
 「え? 最初からアルフを?」
 「前に私が生まれ育ったのは“アーカム”だと言いましたよね? 3次元世界には“セーラム”という街に限定的なゲートを設定してました」
 「ああ、亜空間ゲートね」
 「何故かというと、より高次元からやってきたと推測されるアルフは、この3次元世界で活動するために、私たちの街の住人…思念生命体をエネルギー源にするべく…ソウルコンバーターを作り上げたのです」
 「なんだって!」
 青ざめた表情で湧が叫んだ。
 「正確にはソウルコンバーターを作り上げられる世界を“作った”のです」
 「あれは俺の父親が作ったんじゃないのか?」
 ルイーナに詰め寄る湧。しかしルイーナは苦渋の表情で答えた。
 「あなたのお父様はアルフに利用されているのです。アルフはこの世界の物体に干渉できません。あなたのお父様と融合して、意のままに操っていると言ってもいいでしょう」
 「アルフに利用? だって仮にもソウルコンバーターを発明したのは俺の父親で、そのための特許も製造権も保有して、化石燃料や原子力を利用しないエネルギー開発の唯一の成功者として名声も手に入れたんだぞ」
 「それはこの世界の名声であり、アルフには全く興味がないと思われます」
 「じゃあ、アルフの目的は一体なんなんだ?」
 「それは私にも分かりません。ただ、今まで誰も扱ったことのない膨大な…もしかすると太陽にも匹敵するエネルギーを得ようとしてるのではないかと推測されます」
 「ち、ちょっと待ってよ。この地球上で太陽に匹敵するエネルギー? そんなことになったら地球なんか一瞬で消滅しちゃうわよ!」
 いずみも慌てて叫びだす。
 今までの深刻さとは比べものにならない、とんでもない事態だと理解したのだ。
 「だから! 私はこの3次元世界でアルフの企みを阻止すべく、活動をしてきたのです」
 「あ、じゃあさっきから言ってる“イメージカラー”による必殺技の習得って…」
 「そうです。3次元だけじゃなく6次元も含め、世界の破滅を回避するには何でもやってみる価値があります」
 ついにルイーナは己の存在理由に繋がる、重要な秘密を明かしたのだった。
    <続く>
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