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第7章
7-13思念の強さ
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ルイーナの仮説によると、アルファブラッドはほぼ100%親から子へ受け継がれるらしい。
しかし、血に内包されたエネルギーを召喚するには、霊的・超人的能力が必要であり、水無月家では方術の源となる験力がそれにあたる。
いわゆる一般的には魔力と呼ばれる能力のことだ。
「でもさ…、それだけじゃウチのスタッフに能力差が出るのが納得できないんだけど…」
「遺伝は確かに行われます。しかし、その強度が曖昧なんです」
「なんだそれ?」
アルファブラッド保有者で能力者の両親でも、産まれてくる子が能力者とは限らない。
そして能力者でなければアルファブラッドの力を行使することはできない。
その能力に差があるとなると、安定して力を使えるものは至極限定的になってしまうのではないだろうか?
「私の考えでは多分、思念の強さだと思います」
「思念の? 強さ?」
「いずみはウェンディゴ小菅に殺された時、強く強く生きることを願った。それは思念体としてYOUの血の力を使って、自らの身体を新生するに至ったのだと考えます」
「そういうのが思念の強度?」
「多分…。そして、YOUのお母様はYOUがこの力に翻弄されるのを…」
「恐れた」
「いずみ…?」
ルイーナの言葉を引き継いだいずみを湧は驚きの眼差しで見つめた。
「恐れた…って、何を?」
「湧が未知の力に飲み込まれてしまうのを…、お母様は夫であるお父様の研究に協力したいという気持ちと、湧がその力によって不幸になってしまうんじゃないかという、相反する思いがあったんだと思うの」
いずみは悲壮な表情で語った。
「不幸…」
己の過去を振り返っているのだろう。
湧の視点は中空を見つめていた。
やがて、ふといずみに焦点を合わせた。
「確かに色々と辛いこともあった…けど…」
「けど?」
湧にしては珍しく口籠り、顔を赤くしながら続けた。
「そのおかげでいずみと出会うことが出来た。…だから不幸だとは、思っていない」
鼻の頭をかきながら、うつむく。
「…湧… わた…」
「うおっほん!」
ルイーナはわざと大きな咳払いをして割り込む。
「!…ルイぃ~~ナぁ~~」
いずみは誤魔化すようにルイーナを睨みつけた。
「さて、仮説の上に仮説ですがぁ~」
強引に話を戻そうと、ルイーナは湧だけに視線を合わせて続けた。
(にゃぁろぉ~~)
いずみは心の中で悪態を吐く。
「YOUのお母様は、全く正対する気持ちを持っていたとすると、アルファブラッドの遺伝は50%、お父様からは100%だと思うので、トータルで見ると75%が引き継がれたことになります」
「確かに…」
湧は複雑な表情でうなずく。
「はむ…なるほど…」
いずみも俄然興味が涌いたようだ。
「いずみは、殺される前はYOUより遥かにアルファブラッドの効果は少なく、でも他のスタッフよりはずば抜けて能力値が高かった」
「だろうね」
湧が即答した。
「そして、その能力…アルファブラッドの力をほとんど使っていない状態での思念の力によって、YOUの血を使って細胞をコピーし、再生…、さらに身体の全てをオリジナルの肉体に置き換えて新生したのだと考えられます」
「…元から思念が強かったってこと?」
「強かった…程度の問題ではありません。いずみの思念は言い換えれば、非物質である思念体を物質化してしまったということです。これは驚異の事象です」
「へぇ~そうなんだ… …でもそんなに褒められるとちょっと恥ずかしい…」
いずみは頬を染めて、はにかんだ。
「何言ってるんですかぁ! 褒めてるんじゃありません。こんなことが敵に伝わったら大変なことになりますよ。絶対に口外しないでくださいっ!」
ルイーナは本気で激怒した。
「それより、いずみの身体は…というより、いずみの血は純度100%のアルファブラッドを得たのです」
「純度100%? でも感覚的に前と何も変わっていないんだけど…胸とか…」
いずみは自分の胸を見下ろしながら、不満げに漏らす。
別に小さいわけではないのだが、長年さくらと比較してきたことで本人的にはコンプレックスになっているようだ。
「そりゃそうですよ。血液としてはごく普通のB型RH+でしかないんですから…」
「じゃあ純度なんて意味ないじゃん」
「いや、身体の中で血液として機能してる時は、その方が無難だろう。さっきルイーナも言ってたように思念の力が必要な時に、爆発的な力を得られる方がいい」
「YOUの言う通りです。それに“賢者のBB弾”にすれば、術式展開さえできれば誰でも強力な召喚ができます。そこが一番重要です」
「誰でも…分かったわ。私も出来る限りBB弾作りに協力するわ。でも…もう一つ聞きたいんだけど…」
「なんでしょう?」
「私と湧の血を混ぜたら、もっと効率良く作れない? 同じB型RH+だし…」
「どういう意味ですか?」
ルイーナはキョトンとした顔でいずみの質問の意味を考えた。
「今は私の血と湧の血を分けて製作してるでしょ?」
「ああ、そういう意味ですか…、それも可能ですが、さっきも言ったようにお二人の血のエネルギー召喚能力は25%も違います。混ぜてしまうと1:1では12.5%も最大召喚能力が落ちてしまいます。万一のことを考えて、最大威力のBB弾を用意しておくべきだと考えています」
「そっか、ごめんね変なこと言って。ルイーナに全て任せておけばいいんだよね」
「いずみ…私も精一杯頑張りますね」
女子(一人は人間ですらないが)二人がお互いを認め合い、信頼しあっている光景は湧にも希望と力を与えた。
しかし…その時無情にも、クリーチャー出現のアラートが鳴り響いた。
<続く>
しかし、血に内包されたエネルギーを召喚するには、霊的・超人的能力が必要であり、水無月家では方術の源となる験力がそれにあたる。
いわゆる一般的には魔力と呼ばれる能力のことだ。
「でもさ…、それだけじゃウチのスタッフに能力差が出るのが納得できないんだけど…」
「遺伝は確かに行われます。しかし、その強度が曖昧なんです」
「なんだそれ?」
アルファブラッド保有者で能力者の両親でも、産まれてくる子が能力者とは限らない。
そして能力者でなければアルファブラッドの力を行使することはできない。
その能力に差があるとなると、安定して力を使えるものは至極限定的になってしまうのではないだろうか?
「私の考えでは多分、思念の強さだと思います」
「思念の? 強さ?」
「いずみはウェンディゴ小菅に殺された時、強く強く生きることを願った。それは思念体としてYOUの血の力を使って、自らの身体を新生するに至ったのだと考えます」
「そういうのが思念の強度?」
「多分…。そして、YOUのお母様はYOUがこの力に翻弄されるのを…」
「恐れた」
「いずみ…?」
ルイーナの言葉を引き継いだいずみを湧は驚きの眼差しで見つめた。
「恐れた…って、何を?」
「湧が未知の力に飲み込まれてしまうのを…、お母様は夫であるお父様の研究に協力したいという気持ちと、湧がその力によって不幸になってしまうんじゃないかという、相反する思いがあったんだと思うの」
いずみは悲壮な表情で語った。
「不幸…」
己の過去を振り返っているのだろう。
湧の視点は中空を見つめていた。
やがて、ふといずみに焦点を合わせた。
「確かに色々と辛いこともあった…けど…」
「けど?」
湧にしては珍しく口籠り、顔を赤くしながら続けた。
「そのおかげでいずみと出会うことが出来た。…だから不幸だとは、思っていない」
鼻の頭をかきながら、うつむく。
「…湧… わた…」
「うおっほん!」
ルイーナはわざと大きな咳払いをして割り込む。
「!…ルイぃ~~ナぁ~~」
いずみは誤魔化すようにルイーナを睨みつけた。
「さて、仮説の上に仮説ですがぁ~」
強引に話を戻そうと、ルイーナは湧だけに視線を合わせて続けた。
(にゃぁろぉ~~)
いずみは心の中で悪態を吐く。
「YOUのお母様は、全く正対する気持ちを持っていたとすると、アルファブラッドの遺伝は50%、お父様からは100%だと思うので、トータルで見ると75%が引き継がれたことになります」
「確かに…」
湧は複雑な表情でうなずく。
「はむ…なるほど…」
いずみも俄然興味が涌いたようだ。
「いずみは、殺される前はYOUより遥かにアルファブラッドの効果は少なく、でも他のスタッフよりはずば抜けて能力値が高かった」
「だろうね」
湧が即答した。
「そして、その能力…アルファブラッドの力をほとんど使っていない状態での思念の力によって、YOUの血を使って細胞をコピーし、再生…、さらに身体の全てをオリジナルの肉体に置き換えて新生したのだと考えられます」
「…元から思念が強かったってこと?」
「強かった…程度の問題ではありません。いずみの思念は言い換えれば、非物質である思念体を物質化してしまったということです。これは驚異の事象です」
「へぇ~そうなんだ… …でもそんなに褒められるとちょっと恥ずかしい…」
いずみは頬を染めて、はにかんだ。
「何言ってるんですかぁ! 褒めてるんじゃありません。こんなことが敵に伝わったら大変なことになりますよ。絶対に口外しないでくださいっ!」
ルイーナは本気で激怒した。
「それより、いずみの身体は…というより、いずみの血は純度100%のアルファブラッドを得たのです」
「純度100%? でも感覚的に前と何も変わっていないんだけど…胸とか…」
いずみは自分の胸を見下ろしながら、不満げに漏らす。
別に小さいわけではないのだが、長年さくらと比較してきたことで本人的にはコンプレックスになっているようだ。
「そりゃそうですよ。血液としてはごく普通のB型RH+でしかないんですから…」
「じゃあ純度なんて意味ないじゃん」
「いや、身体の中で血液として機能してる時は、その方が無難だろう。さっきルイーナも言ってたように思念の力が必要な時に、爆発的な力を得られる方がいい」
「YOUの言う通りです。それに“賢者のBB弾”にすれば、術式展開さえできれば誰でも強力な召喚ができます。そこが一番重要です」
「誰でも…分かったわ。私も出来る限りBB弾作りに協力するわ。でも…もう一つ聞きたいんだけど…」
「なんでしょう?」
「私と湧の血を混ぜたら、もっと効率良く作れない? 同じB型RH+だし…」
「どういう意味ですか?」
ルイーナはキョトンとした顔でいずみの質問の意味を考えた。
「今は私の血と湧の血を分けて製作してるでしょ?」
「ああ、そういう意味ですか…、それも可能ですが、さっきも言ったようにお二人の血のエネルギー召喚能力は25%も違います。混ぜてしまうと1:1では12.5%も最大召喚能力が落ちてしまいます。万一のことを考えて、最大威力のBB弾を用意しておくべきだと考えています」
「そっか、ごめんね変なこと言って。ルイーナに全て任せておけばいいんだよね」
「いずみ…私も精一杯頑張りますね」
女子(一人は人間ですらないが)二人がお互いを認め合い、信頼しあっている光景は湧にも希望と力を与えた。
しかし…その時無情にも、クリーチャー出現のアラートが鳴り響いた。
<続く>
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