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第3章

3-13死闘

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 (顔が熱い…溶けていく…苦しい…)
 まるで強力なバーナーで焼かれているみたいな熱さだった。
 痛みなどとうに通り越し、自分の身体が、顔が溶けてゆくような、気持ちの悪さしか感じない。
 <ぎゃん!>
 追い討ちをかけるように背中じゅうに激痛が走った。
 モンスター小菅は、いずみの頭を鷲掴みにしたまま、今度は背中を護岸公園のコンクリート床に容赦なく叩きつけた。
 まるで無数の剣で串刺しにされたような、骨の一本一本が砕かれる感触だ。
 普通の人間なら、既に何度も即死しているだろう。
 なのにいずみの意識は、まだいずみの身体に留まり続けている。
 (なんでこんなに苦しいの? なんでこんな思いをしなければ…)
 いずみの思考はそればかりを無限に繰り返していた。
 <ボスッ! バリッ!>
 身体に感じる音の質が変化した。
 まるでボロボロの雑巾を床に叩きつけてるような音だった。
 (ああああああああああ…、か、身体がっ! …燃え上がる、燃えてる!)
 目が見えず、音も聞こえなくなり、身体を貫く痛みが遠のいてゆく。

 モンスター小菅は、いずみの身体を何度も何度も振り回しながらコンクリートの床に叩きつけた。
 内臓は破裂し、骨が粉砕されたため、筋肉が収縮して、手足が奇妙な形に曲がりくねった。
 (こ、これが…私の身体? これじゃあ、もう元に戻れないじゃない…)
 いつの間にか、いずみの意識はいずみの外側から自分の身体を感じていた。
 (この感じは…、ああ…そうか、曼荼羅を見たときの感じと同じだわ)
 第三の視点から、いずみは傍観していたのだ。
 それでも、破壊されてゆく自分の身体を見ているのは耐えられない苦痛だった。
 (だ、誰か…、助けて…、い、いや死にたくないっ! まだ…)
 いずみは初めて、おそらく生まれて初めて、誰かに救いを求めた。
 (私、まだ気持ちを伝えていないのっ! わ・た・し…、湧! 湧が好き! 助けて湧ぅ!)
 その気持ちが届いたのか、護岸公園の先に湧の姿を見つけた。
 その顔は蒼白になり、呼吸が荒く、目が怒りに燃え上がっていた。
 こんな湧を見たのは初めてだ。
 (ゆ、湧? あれは…湧?)
 いずみには単に人の形をした“湧”ではなく、何か凄まじいパワーをまとった巨人のように見えた。
 (湧が来てくれた。湧に会えた…)
 いずみの意識に何か温かいものが流れ込む…
 しかし、次の瞬間。視点が凄まじい勢いで上空に飛び上がり、次に隅田川に没した。
 モンスター小菅は、新しいおもちゃを与えられた子供のように、ボロ布と化したいずみには興味が無くなったばかりに、無造作に隅田川に投げ捨てたのだ。
 (あ、湧が…湧が見えなく…なっちゃった…)
 自分の死より、愛しい湧の姿が見えなくなったことの方が、いずみに深い絶望感を与えた。

 いずみの意識はそのまま深い闇に沈んでいった。
    <第4章に続く>
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