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第3章
3-12コンタクト
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【…ナ…ん。判りますか?】
さくらは思念の波調を変えて、数回試みた。
〔あっ!〕
ルイーナが実声とともに思念で応える。
「さくらの声が聞こえたのね」
いずみが確認するとコクリと頷き、ルイーナは思念に集中した。
〔判ります! あなたがさくらさんですね?〕
【初めまして…というのもおかしいわね。あなたは最初から私を認識していた様だし(笑)】
〔そんなことまで分かるんですか? 驚きました〕
ルイーナが目を丸くして、本当に驚いていた。
しかし、いずみには何も聞こえない。
〈ちょっと! 私には何も聞こえないんだけどぉ?〉
【聞こえないのは修行が足りないからでしょ! 何も難しい事してるわけじゃないから、自分で努力しなさいっ!】
〈え~、努力って、どうしたら良いのぉ?〉
【感性をもっと研ぎ澄ませるのよっ! ルイーナへの話ができないから自分で工夫しなさい!】
〈げぇ~〉
〈…? あれ? さくらぁ~〉
さくらはルイーナへの思念に集中したらしく、いずみの問いかけに答えなくなった。
〈仕方ない…色々試してみよう…かな?〉
いきなり手持ち無沙汰になったので、さくらに言われたように修行してみる。
が、
「……うん。私には…無理ね」
数分どころか数秒で挫折した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
【大まかに説明するとこんな感じです】
久しぶりに思いっきりおしゃべりできたせいか、さくらは満ち足りた気分を味わっていた。
〔そうですか、すごくよく判りました。さくらさんって博識なんですね〕
ルイーナは本心からそう思っていたらしく、目を潤ませている。
これが芝居なら相当な手練れだ。
しかし、さくらはそれを疑うまでには、性格が歪んではいなかった。
【やだなぁ、博識なんかじゃないですよぉ。ただ、分析することが好きだったせいで、色々なものに興味を持っているだけよ】
〔それにしても、フレンズになってから3ヶ月ということですが、ご自分のことだけでなく世界の在り方まで理解するというのは並大抵のことではできません〕
【そんな大げさな…でも、いずみが理解出来るように説明するのは… ? …あれ?】
〔どうかしましたか?〕
訝しげなルイーナの問いにも答えられない程、さくらは気が動転した。
つい今しがたルイーナと話し合った内容を、いずみにも伝えなければ…と考えた途端に…
【あれ? ルイーナと何を話したんだっけ? 随分長い時間話したのに…思い出せない…】
〔………〕
ルイーナもさくらの独り言には反応を示さない。
それどころか、さくらの周囲は時間が止まったように全く動いていなかった。
【? 何この状態…】
【いずみ、ルイーナさんに説明終わったよぉ】
一瞬の疑念も、勝手に自分から発した思念により霧散した。
〈早っ! さっきさくらが私を省ってからまだ2分も経ってないよ? そんなに短時間で話せるわけないじゃない!〉
といういずみのツッコミに、即座に返事ができなかった。
【失礼な! かなりしっかりとお話できたわよ? で、でも…】
〈? さくらぁ? 本当に大丈夫?〉
いつもの反応とあまりに違うことに、いずみも急に不安になった。
【(一体どういうこと? 確かに何時間も話したような感覚は残っているのに…何を話したのか…覚えていないなんて…)】
さくらは大いに混乱した。
「私もさくらさんに色々お聞きした…と、思うんですが…何を聞いたのかを…思い出せないんです」
「はい? 何言ってるの? 二人とも」
とても口裏を合わせているような雰囲気ではない。
それだけ二人の表情は困惑と不安で彩られていた。
「ルイーナ。さくらとは本当に話ができたの?」
「ええ、それはもう充分に。さくらさんとは解り合えました」
「そ、そうなんだ。じゃあ私たちが今どういう状況にあるかもわかっているのね?」
「まあ大体のことは。でも問題は…」
<ピピピピピピッ…、ピピピピピピッ…、ピピピピピ…>
その時、いずみの携帯に緊急メールを告げる着信音が鳴り響いた。
【いずみ、宗主が呼んでるから行ってくるね】
〈判った! 後でね〉
「いずみさん?」
「待って! ルイーナ。急ぎのメールが来たから!」
「はい? …急ぎ?」
ルイーナの応答を待たず、いずみが携帯を確認する。
本来、この携帯は他者に見せてはならないものだった。のだが…、それどころではないと直感した。
「なにこれ?」
メールは大介からだった。
殺人事件の容疑者が特定できたという連絡だ。
“小菅 豊。都立築地川高等学校3年。バスケット部部長大塚慎司とは何らかのトラブルを抱えていた模様。
…”
「何で今こんな連絡を緊急メールで送って…」
と呟いたところで、いずみは目を見張った。
“なぜか、小菅はいずみを探していたらしい。嫌な予感がするので、今、如月君をそちらに向かわせた。隅田川の護岸公園で落ち合ってくれ。多少でも人目があれば急襲は抑止できるだろう”
もちろん、いずみは小菅などとは全く面識がない。
その相手が、殺人事件の容疑者が自分を探しているという恐怖は言葉にし難かった。
「な、どういうこと?」
しかし、大介が緊急メールを送ってくるのは尋常ではない。
「ル、ルイーナ、あのね…」
ルイーナをここに置いて行くのには、かなり不安だ。もしかすると巻き添えを喰らう可能性は高い。
だからと言って、ルイーナを自宅に連れて行くのも問題が多かった。
いずみが思い悩んでいると、ルイーナが心配そうに
「いずみさん? 何か問題でもあったのですか? それなら…」
<ガシャンッ!>
ルイーナの声を遮るように、部屋の窓ガラスが破裂した。
『「きゃぁ!」』
二人は思わず抱き合って、後じさった。
ベランダに毛むくじゃらのモンスターが立っていた。
「あっ! 私が見たモンスターと似てます!」
「へ? ルイーナ?」
この状況で、パニクるでもなく、冷静に自分の意見を主張するところは予想外だった。
「ちょっと何言ってるのよ! 逃げるのよっ!」
「あ、ああ、はい」
いまいち緊張感のないルイーナの手を引っ張って、いずみは玄関から廊下に飛び出す。
モンスターは、幸いサッシの窓枠に阻まれ、侵入に手間取っていた。
エレベーターの中で、掴んできた靴を履く。
どんな時でも、足場の安全を確保する修行をしてきた賜物だった。
「これからどうしますか?」
ルイーナはごく普通に話しかけてきた。
この状況にあって、錯乱していないのは大いに助かるが、逆にこの冷静さは?
いずみは益々ルイーナに対して不信感を募らせた。
マンション前の通りからでは、モンスターが乱入してきたベランダの真下を通ることになる。
反対側の裏通りから佃大橋下の道路に回り込むことにした。
ルイーナはおとなしくついてくるが、このままでは湧と会うことになる。
そうなれば、水無月家のことについても説明せざるを得ないだろう。
いずみがこれからのことを思い悩んでいたら、堤防のコンクリート壁の上から影が落ちてきた。
<どん!>
「きゃあ」
ルイーナが横殴りで吹っ飛ばされる。
「ルイーナ!」
いずみがルイーナを庇おうと手を伸ばした瞬間、眼前にモンスターが現れた。
咄嗟に横跳びに躱し、いずみは斬撃を逃れる。
モンスターは手に針金の束のような剣を掴み、護岸公園のコンクリート床に叩き込んだのだ。
「何よ、その反則的な武器はっ!」
モンスターと対峙して、初めてまともにモンスターの全身を見た。
まるで雪男のように全身が長毛で覆われているが、かろうじて人間のようなプロポーションをしている。
「こいつ…人間?」
件の小菅豊なのかもしれない。どうしてこんな姿になったのかはわからないが、いずみは直感した。
だが、言葉は交わせないらしい。
さっきから、シュゴシュゴと変な息遣いしか聞こえてこないのだ。
「言っても解らないようね。なら、相手してあげるわ」
相手の強さが解らないものの、ここで退くわけにはいかない。
ルイーナはと視線を巡らせると、幸いコンクリート壁前の植え込みに落ちたらしく、大した怪我はしていないようだった。
いずみは構え直し、モンスターに向き合った。
獲物がないため、大いに不利だが、水辺なので充分に対応できるだろうと考えた。
いずみの験力は水と相性がいいらしく、いわゆる“水属性”なのだ。
まず相手の行動力を低下させるために…
「氷壁(アイシクルウォール)!」
モンスターの周りに氷の壁を作り封じ込めた。
「やった!」
いずみが成功を喜んだのもつかの間、すぐに壁は砕かれた。
「あう~、やっぱ無理かぁ~」
<ギャオオオオオオッ>
モンスターは剛毛を逆立てて、すごい勢いで突っ込んでくる。
「わわわっ!」
幅の狭い護岸公園の上では、横方向に避けるのは至難の技だ。
いずみはうまく躱し続けた。それでも…
「痛いっ!」
しかし、モンスターの剛毛は着実にいずみを捉え始めた。
躱すたびにいずみの制服は避け、血が滲み始めた。
「このままじゃ、殺られる…」
いずみが生成した氷の剣は、モンスターの剛毛より短いため、なかなか攻撃が届かない。
しかも毛のくせに全く切断できないほど硬かった。
毛の短い顔の部分を狙うが、懐深く潜り込まないと致命的な攻撃にならないだろう。
その時、最初にモンスター自身が破壊したコンクリート床のくぼみに足を取られた。
「チャンス!」
いずみは可能な限り氷剣を伸ばし、思い切って飛び込んだ。
<ガキッ!>
いずみの剣がモンスターの額に確かに届いた。
が、
無残にも剣が砕けた。
モンスターの皮膚が剣よりも固かったのだ。
「しまった!」
いずみが後悔するよりも早く、モンスターの岩のような手がいずみの後頭部を握りしめた。
「ぎゃああ! あ、頭がっ!」
後頭部を万力で握られたような激しい痛みがいずみを襲う。
そして…
モンスターはそのままいずみの頭をコンクリート床に叩きつけた。
「!」
いずみが見た最後の景色は眼前に迫るコンクリート床のタイルだった。
<続く>
さくらは思念の波調を変えて、数回試みた。
〔あっ!〕
ルイーナが実声とともに思念で応える。
「さくらの声が聞こえたのね」
いずみが確認するとコクリと頷き、ルイーナは思念に集中した。
〔判ります! あなたがさくらさんですね?〕
【初めまして…というのもおかしいわね。あなたは最初から私を認識していた様だし(笑)】
〔そんなことまで分かるんですか? 驚きました〕
ルイーナが目を丸くして、本当に驚いていた。
しかし、いずみには何も聞こえない。
〈ちょっと! 私には何も聞こえないんだけどぉ?〉
【聞こえないのは修行が足りないからでしょ! 何も難しい事してるわけじゃないから、自分で努力しなさいっ!】
〈え~、努力って、どうしたら良いのぉ?〉
【感性をもっと研ぎ澄ませるのよっ! ルイーナへの話ができないから自分で工夫しなさい!】
〈げぇ~〉
〈…? あれ? さくらぁ~〉
さくらはルイーナへの思念に集中したらしく、いずみの問いかけに答えなくなった。
〈仕方ない…色々試してみよう…かな?〉
いきなり手持ち無沙汰になったので、さくらに言われたように修行してみる。
が、
「……うん。私には…無理ね」
数分どころか数秒で挫折した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
【大まかに説明するとこんな感じです】
久しぶりに思いっきりおしゃべりできたせいか、さくらは満ち足りた気分を味わっていた。
〔そうですか、すごくよく判りました。さくらさんって博識なんですね〕
ルイーナは本心からそう思っていたらしく、目を潤ませている。
これが芝居なら相当な手練れだ。
しかし、さくらはそれを疑うまでには、性格が歪んではいなかった。
【やだなぁ、博識なんかじゃないですよぉ。ただ、分析することが好きだったせいで、色々なものに興味を持っているだけよ】
〔それにしても、フレンズになってから3ヶ月ということですが、ご自分のことだけでなく世界の在り方まで理解するというのは並大抵のことではできません〕
【そんな大げさな…でも、いずみが理解出来るように説明するのは… ? …あれ?】
〔どうかしましたか?〕
訝しげなルイーナの問いにも答えられない程、さくらは気が動転した。
つい今しがたルイーナと話し合った内容を、いずみにも伝えなければ…と考えた途端に…
【あれ? ルイーナと何を話したんだっけ? 随分長い時間話したのに…思い出せない…】
〔………〕
ルイーナもさくらの独り言には反応を示さない。
それどころか、さくらの周囲は時間が止まったように全く動いていなかった。
【? 何この状態…】
【いずみ、ルイーナさんに説明終わったよぉ】
一瞬の疑念も、勝手に自分から発した思念により霧散した。
〈早っ! さっきさくらが私を省ってからまだ2分も経ってないよ? そんなに短時間で話せるわけないじゃない!〉
といういずみのツッコミに、即座に返事ができなかった。
【失礼な! かなりしっかりとお話できたわよ? で、でも…】
〈? さくらぁ? 本当に大丈夫?〉
いつもの反応とあまりに違うことに、いずみも急に不安になった。
【(一体どういうこと? 確かに何時間も話したような感覚は残っているのに…何を話したのか…覚えていないなんて…)】
さくらは大いに混乱した。
「私もさくらさんに色々お聞きした…と、思うんですが…何を聞いたのかを…思い出せないんです」
「はい? 何言ってるの? 二人とも」
とても口裏を合わせているような雰囲気ではない。
それだけ二人の表情は困惑と不安で彩られていた。
「ルイーナ。さくらとは本当に話ができたの?」
「ええ、それはもう充分に。さくらさんとは解り合えました」
「そ、そうなんだ。じゃあ私たちが今どういう状況にあるかもわかっているのね?」
「まあ大体のことは。でも問題は…」
<ピピピピピピッ…、ピピピピピピッ…、ピピピピピ…>
その時、いずみの携帯に緊急メールを告げる着信音が鳴り響いた。
【いずみ、宗主が呼んでるから行ってくるね】
〈判った! 後でね〉
「いずみさん?」
「待って! ルイーナ。急ぎのメールが来たから!」
「はい? …急ぎ?」
ルイーナの応答を待たず、いずみが携帯を確認する。
本来、この携帯は他者に見せてはならないものだった。のだが…、それどころではないと直感した。
「なにこれ?」
メールは大介からだった。
殺人事件の容疑者が特定できたという連絡だ。
“小菅 豊。都立築地川高等学校3年。バスケット部部長大塚慎司とは何らかのトラブルを抱えていた模様。
…”
「何で今こんな連絡を緊急メールで送って…」
と呟いたところで、いずみは目を見張った。
“なぜか、小菅はいずみを探していたらしい。嫌な予感がするので、今、如月君をそちらに向かわせた。隅田川の護岸公園で落ち合ってくれ。多少でも人目があれば急襲は抑止できるだろう”
もちろん、いずみは小菅などとは全く面識がない。
その相手が、殺人事件の容疑者が自分を探しているという恐怖は言葉にし難かった。
「な、どういうこと?」
しかし、大介が緊急メールを送ってくるのは尋常ではない。
「ル、ルイーナ、あのね…」
ルイーナをここに置いて行くのには、かなり不安だ。もしかすると巻き添えを喰らう可能性は高い。
だからと言って、ルイーナを自宅に連れて行くのも問題が多かった。
いずみが思い悩んでいると、ルイーナが心配そうに
「いずみさん? 何か問題でもあったのですか? それなら…」
<ガシャンッ!>
ルイーナの声を遮るように、部屋の窓ガラスが破裂した。
『「きゃぁ!」』
二人は思わず抱き合って、後じさった。
ベランダに毛むくじゃらのモンスターが立っていた。
「あっ! 私が見たモンスターと似てます!」
「へ? ルイーナ?」
この状況で、パニクるでもなく、冷静に自分の意見を主張するところは予想外だった。
「ちょっと何言ってるのよ! 逃げるのよっ!」
「あ、ああ、はい」
いまいち緊張感のないルイーナの手を引っ張って、いずみは玄関から廊下に飛び出す。
モンスターは、幸いサッシの窓枠に阻まれ、侵入に手間取っていた。
エレベーターの中で、掴んできた靴を履く。
どんな時でも、足場の安全を確保する修行をしてきた賜物だった。
「これからどうしますか?」
ルイーナはごく普通に話しかけてきた。
この状況にあって、錯乱していないのは大いに助かるが、逆にこの冷静さは?
いずみは益々ルイーナに対して不信感を募らせた。
マンション前の通りからでは、モンスターが乱入してきたベランダの真下を通ることになる。
反対側の裏通りから佃大橋下の道路に回り込むことにした。
ルイーナはおとなしくついてくるが、このままでは湧と会うことになる。
そうなれば、水無月家のことについても説明せざるを得ないだろう。
いずみがこれからのことを思い悩んでいたら、堤防のコンクリート壁の上から影が落ちてきた。
<どん!>
「きゃあ」
ルイーナが横殴りで吹っ飛ばされる。
「ルイーナ!」
いずみがルイーナを庇おうと手を伸ばした瞬間、眼前にモンスターが現れた。
咄嗟に横跳びに躱し、いずみは斬撃を逃れる。
モンスターは手に針金の束のような剣を掴み、護岸公園のコンクリート床に叩き込んだのだ。
「何よ、その反則的な武器はっ!」
モンスターと対峙して、初めてまともにモンスターの全身を見た。
まるで雪男のように全身が長毛で覆われているが、かろうじて人間のようなプロポーションをしている。
「こいつ…人間?」
件の小菅豊なのかもしれない。どうしてこんな姿になったのかはわからないが、いずみは直感した。
だが、言葉は交わせないらしい。
さっきから、シュゴシュゴと変な息遣いしか聞こえてこないのだ。
「言っても解らないようね。なら、相手してあげるわ」
相手の強さが解らないものの、ここで退くわけにはいかない。
ルイーナはと視線を巡らせると、幸いコンクリート壁前の植え込みに落ちたらしく、大した怪我はしていないようだった。
いずみは構え直し、モンスターに向き合った。
獲物がないため、大いに不利だが、水辺なので充分に対応できるだろうと考えた。
いずみの験力は水と相性がいいらしく、いわゆる“水属性”なのだ。
まず相手の行動力を低下させるために…
「氷壁(アイシクルウォール)!」
モンスターの周りに氷の壁を作り封じ込めた。
「やった!」
いずみが成功を喜んだのもつかの間、すぐに壁は砕かれた。
「あう~、やっぱ無理かぁ~」
<ギャオオオオオオッ>
モンスターは剛毛を逆立てて、すごい勢いで突っ込んでくる。
「わわわっ!」
幅の狭い護岸公園の上では、横方向に避けるのは至難の技だ。
いずみはうまく躱し続けた。それでも…
「痛いっ!」
しかし、モンスターの剛毛は着実にいずみを捉え始めた。
躱すたびにいずみの制服は避け、血が滲み始めた。
「このままじゃ、殺られる…」
いずみが生成した氷の剣は、モンスターの剛毛より短いため、なかなか攻撃が届かない。
しかも毛のくせに全く切断できないほど硬かった。
毛の短い顔の部分を狙うが、懐深く潜り込まないと致命的な攻撃にならないだろう。
その時、最初にモンスター自身が破壊したコンクリート床のくぼみに足を取られた。
「チャンス!」
いずみは可能な限り氷剣を伸ばし、思い切って飛び込んだ。
<ガキッ!>
いずみの剣がモンスターの額に確かに届いた。
が、
無残にも剣が砕けた。
モンスターの皮膚が剣よりも固かったのだ。
「しまった!」
いずみが後悔するよりも早く、モンスターの岩のような手がいずみの後頭部を握りしめた。
「ぎゃああ! あ、頭がっ!」
後頭部を万力で握られたような激しい痛みがいずみを襲う。
そして…
モンスターはそのままいずみの頭をコンクリート床に叩きつけた。
「!」
いずみが見た最後の景色は眼前に迫るコンクリート床のタイルだった。
<続く>
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