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第4章
4-06アルフ
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「YOUはなぜ“アルファブラッド”と言う、特殊な血液があると思いますか?」
ルイーナは苦しげな表情で聞いてきた。
「それはさっきのエネルギー開発に関わること…なんだね?」
「そうです。その究極的な形態が“アルファブラッド”なんです」
高次元精神体との融合を果たした、この世界の人間が脆弱な身体では長生きできない。
それは体力だけでなく、精神的にも強靭な魂を維持できなければ、目的を達成できないのだ。
「それに現代のように電力ネットワークが存在しない、昔の世界では簡単にエネルギーの生成・保存ができないのです」
「あ、そうか。必要な時に膨大なエネルギーを得ることは不可能だね」
「そして、いつでも・どこでも・いくらでも、エネルギーとして利用出来るシステムが構築されました」
「そんなことが可能なのか?」
そんなものに心当たりが全くない。
大介は訝しげに首をひねった。
逆に湧は背中に冷や汗をかいていた。
今さっきルイーナが“エネルギー開発→アルファブラッド”と言ったばかりではないか。
(まさか…この血は…)
「ある人物は、不眠不休で理論の構築をなし、ある者は既存の常識では思いつかなかった新たな戦闘術を編み出し、そして、異常な長寿を全うしたものもいました」
ルイーナたちの調査では、278歳の魔法使いと呼ばれた女性もいたらしい。
「そして、その子孫たちは皆、“アルファブラッド”保有者です。しかし、ある条件下でなければ、普通の血液と何ら変わらないのです」
「ある条件下? もしかすると霊的能力…とか?」
「その通りです。実際に霊的能力と言われるのは、高次元からのエネルギーですが、それはダークエネルギーの一種なのです」
「ダークエネルギー? 俺がゾーン力とか大介さんたちが験力と呼んでいる力のことかな?」
「広義ではその通りです。しかし、ダークエネルギーは本来6次元以上の空間に存在します」
ルイーナは断定的に言うが、同時にそれを証明する方法はこの3次元空間にはないということでもある。
「高次元からのエネルギー抽出、電気エネルギーへの変換など、その全てを行うのが“ソウルコンバーター”なのです。が、昔は製作自体が不可能でした」
「あ、そうか一応“工業機械”だから、昔は“ソウルコンバーター本体”そのものが作れないのか…」
湧は素直に納得したが、ならば何で代用したのか? さらなる疑問が生まれた。
「そこで、高次元精神体は人の血液を“蓄電池”代わりにしたのです」
「… ! ち、蓄電池ぃ?」
「そうです。実際、私たちも電力ネットワークから離れた場所では、電話・照明・動力など様々なものの電源に、乾電池やバッテリーを使っています」
「人間を生きた電源にしたっていうのか?」
「大雑把な例えですが、その通りです。残念ながらエネルギーの保管庫としての目的が大きかったようです…」
「あ! それじゃぁ…」
湧は思わず叫ぶ。
ルイーナは悲痛な表情で続けた。
「悲しいことにYOUの考え方は正しいのです」
「母が、俺を襲ったのは…父親に…、とすると、やはり俺の父親はっ!」
『アルファビジター』
「アルファビジター? なんだそれ?」
「アルフの呼び名です。彼…と言っていいのかわかりませんが、本人も好んで『アルファ』もしくは『アル』『アルフ』などと呼んでいたそうです」
「来訪者α…という意味か…」
それまで黙っていた大介が呟いた。
「子、孫などには、アルファブラッドが受け継がれますが、配偶者には伝達できません。しかし…YOUを生むことによって、体内にアルファブラッドが生成されます。そうなると、少なからず影響が出ると思われます」
「それじゃ、母さんがおかしくなったのは…俺の…せい? 俺が母さんを…」
今日まで、母親が異常をきたしたのは父親のせいだと思い込んできた湧は、ルイーナの言葉に打ちのめされた。
「それはごく一部です。お母様が精神的に異常をきたしたのは、どうやらソウルコンバーターの実験によるところが大きかったと思われます」
「でも…きっかけは俺だったのかもしれない…」
「だったら、なぜ幼いYOUを襲ったと思いますか? YOUに浄霊された時、お母様は笑顔だったと聞きました。それは父親の思い通りにYOUをエネルギーなどにさせずに済んだからじゃないでしょうか?」
「何でそんなことが言えるんだよっ! 見てたわけじゃないだろっ!」
湧は怒鳴り、ルイーナを睨みつけた。
「わかります。有紀さんに聞いて…私が直接聞いてきました」
「へ?」
ルイーナが言った意味が理解できなかった。
「正直に言います。私が直に聞いてきたのです。YOUのお母様はとても悔しがっていました。しかし、お父様が“アルフ”と融合する前からの付き合いだったので、いつか戻ってくれるだろうと信じていたそうです」
湧の母親がどれほど苦労をしてきたのかは、湧が一番良く知っている。
しかし、父親を信じていたことだけは全く知らなかった。
「YOUが襲われる前に放置されていたのは、極限状態まで精神にダメージを与えて、精神エネルギーを高めることが目的だったそうです」
「…確かに…俺はあの時、身体を動かすことすらできなかった。全て気合だけで生きていた。それこそが…父親の、アルフの思惑だったのか…」
「悔しい気持ちはよく分かります。私の仲間も大勢、同じ目に合いましたから…」
ルイーナも湧に負けず、顔を歪ませた。
「何でそこまでして、エネルギーを欲したんだろう? そのアルフは…」
大介は二人の気持ちを和らげるため、話題を変えようと試みた。
しかし、それはさらなる精神的苦痛を二人に与えることとなってしまった。
<続く>
ルイーナは苦しげな表情で聞いてきた。
「それはさっきのエネルギー開発に関わること…なんだね?」
「そうです。その究極的な形態が“アルファブラッド”なんです」
高次元精神体との融合を果たした、この世界の人間が脆弱な身体では長生きできない。
それは体力だけでなく、精神的にも強靭な魂を維持できなければ、目的を達成できないのだ。
「それに現代のように電力ネットワークが存在しない、昔の世界では簡単にエネルギーの生成・保存ができないのです」
「あ、そうか。必要な時に膨大なエネルギーを得ることは不可能だね」
「そして、いつでも・どこでも・いくらでも、エネルギーとして利用出来るシステムが構築されました」
「そんなことが可能なのか?」
そんなものに心当たりが全くない。
大介は訝しげに首をひねった。
逆に湧は背中に冷や汗をかいていた。
今さっきルイーナが“エネルギー開発→アルファブラッド”と言ったばかりではないか。
(まさか…この血は…)
「ある人物は、不眠不休で理論の構築をなし、ある者は既存の常識では思いつかなかった新たな戦闘術を編み出し、そして、異常な長寿を全うしたものもいました」
ルイーナたちの調査では、278歳の魔法使いと呼ばれた女性もいたらしい。
「そして、その子孫たちは皆、“アルファブラッド”保有者です。しかし、ある条件下でなければ、普通の血液と何ら変わらないのです」
「ある条件下? もしかすると霊的能力…とか?」
「その通りです。実際に霊的能力と言われるのは、高次元からのエネルギーですが、それはダークエネルギーの一種なのです」
「ダークエネルギー? 俺がゾーン力とか大介さんたちが験力と呼んでいる力のことかな?」
「広義ではその通りです。しかし、ダークエネルギーは本来6次元以上の空間に存在します」
ルイーナは断定的に言うが、同時にそれを証明する方法はこの3次元空間にはないということでもある。
「高次元からのエネルギー抽出、電気エネルギーへの変換など、その全てを行うのが“ソウルコンバーター”なのです。が、昔は製作自体が不可能でした」
「あ、そうか一応“工業機械”だから、昔は“ソウルコンバーター本体”そのものが作れないのか…」
湧は素直に納得したが、ならば何で代用したのか? さらなる疑問が生まれた。
「そこで、高次元精神体は人の血液を“蓄電池”代わりにしたのです」
「… ! ち、蓄電池ぃ?」
「そうです。実際、私たちも電力ネットワークから離れた場所では、電話・照明・動力など様々なものの電源に、乾電池やバッテリーを使っています」
「人間を生きた電源にしたっていうのか?」
「大雑把な例えですが、その通りです。残念ながらエネルギーの保管庫としての目的が大きかったようです…」
「あ! それじゃぁ…」
湧は思わず叫ぶ。
ルイーナは悲痛な表情で続けた。
「悲しいことにYOUの考え方は正しいのです」
「母が、俺を襲ったのは…父親に…、とすると、やはり俺の父親はっ!」
『アルファビジター』
「アルファビジター? なんだそれ?」
「アルフの呼び名です。彼…と言っていいのかわかりませんが、本人も好んで『アルファ』もしくは『アル』『アルフ』などと呼んでいたそうです」
「来訪者α…という意味か…」
それまで黙っていた大介が呟いた。
「子、孫などには、アルファブラッドが受け継がれますが、配偶者には伝達できません。しかし…YOUを生むことによって、体内にアルファブラッドが生成されます。そうなると、少なからず影響が出ると思われます」
「それじゃ、母さんがおかしくなったのは…俺の…せい? 俺が母さんを…」
今日まで、母親が異常をきたしたのは父親のせいだと思い込んできた湧は、ルイーナの言葉に打ちのめされた。
「それはごく一部です。お母様が精神的に異常をきたしたのは、どうやらソウルコンバーターの実験によるところが大きかったと思われます」
「でも…きっかけは俺だったのかもしれない…」
「だったら、なぜ幼いYOUを襲ったと思いますか? YOUに浄霊された時、お母様は笑顔だったと聞きました。それは父親の思い通りにYOUをエネルギーなどにさせずに済んだからじゃないでしょうか?」
「何でそんなことが言えるんだよっ! 見てたわけじゃないだろっ!」
湧は怒鳴り、ルイーナを睨みつけた。
「わかります。有紀さんに聞いて…私が直接聞いてきました」
「へ?」
ルイーナが言った意味が理解できなかった。
「正直に言います。私が直に聞いてきたのです。YOUのお母様はとても悔しがっていました。しかし、お父様が“アルフ”と融合する前からの付き合いだったので、いつか戻ってくれるだろうと信じていたそうです」
湧の母親がどれほど苦労をしてきたのかは、湧が一番良く知っている。
しかし、父親を信じていたことだけは全く知らなかった。
「YOUが襲われる前に放置されていたのは、極限状態まで精神にダメージを与えて、精神エネルギーを高めることが目的だったそうです」
「…確かに…俺はあの時、身体を動かすことすらできなかった。全て気合だけで生きていた。それこそが…父親の、アルフの思惑だったのか…」
「悔しい気持ちはよく分かります。私の仲間も大勢、同じ目に合いましたから…」
ルイーナも湧に負けず、顔を歪ませた。
「何でそこまでして、エネルギーを欲したんだろう? そのアルフは…」
大介は二人の気持ちを和らげるため、話題を変えようと試みた。
しかし、それはさらなる精神的苦痛を二人に与えることとなってしまった。
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