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第4章

4-07アルファブラッド

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 アルファブラッドについて、ルイーナはその能力を端的に語った。
 それによると、純度の高いアルファブラッド保有者なら、原子炉一基分が一ヶ月に製成する電気量に匹敵するということだ。
 「それほどまでか?」
 大介ならず湧まで驚きの声を上げた。
 「普通の人間なら、せいぜい一日分といったところです」
 「それはソウルコンバーターを通して変換した場合…なのかな?」
 「その通りです。ソウルコンバーターは細胞一つ一つまで、原子レベルでエネルギーの抽出を行います。不純物は全て塩化ナトリウムとして排出するのです」
 「それで、塩が残されるのか?」
 「ということは、人によって塩の残留量は全くことなるんじゃないか?」
 大介は人一人分を約1kgほどだと思っていた。
 今のルイーナの説明が正しければ、犠牲者は予想より少ない可能性もある。
 「しかしそれは物質としての残留物で、気力などの精神体は高次元からのエネルギーの抽出となるので、塩の量はもっと多いようです」
 「物質ではない方が塩として残る量が多い? どうして?」
 大介の疑問はもっともなことだ。
 何故なら塩とはいえ、無から生み出されることになるわけで、エネルギー保存の法則から大きく逸脱するからである。
 「それはこの3次元での考え方です。次元を超えてのエネルギー量は変化していないのです」
 「そうなのか…、どうもその辺りがイマイチ理解しにくいんだよな」
 大介はどちらかというと現実主義者なのだ。
 基本的に自分の目や耳、心で確認・分析して理解する。
 「大介さんはそれでいいと思います。感性だけで理解すると、独断専行することが多くなり、指揮官としては孤立してしまうでしょう」
 ルイーナは大介の立場から、無理に納得する必要がないと言いたいらしい。
 「ところでルイーナ、それほどのエネルギーを何に使う気なんだ? そのアルフは…」
 「それは不明です。ただ、この世界は“ソウルコンバーター”が製作されやすい環境にあります。そこに何かヒントがあるように感じます」
 ルイーナが珍しく自信なさげに言うが、確かに“ソウルコンバーター”の基礎理論(そんなものは誰も知らないが…)は、この世界に突発的に現れたものが多い。
 「確かにこの世界には、験力や霊力、その他に如月君がいう“ゾーン力”というのが存在する。でも、もしかするとそんな力がない世界になってた可能性も十分に考えられる」
 「そこです。私たちはもしかすると高次元という前に、別の可能性の世界とも行き来できるのかもしれません」
 ルイーナが語る可能性の別世界は、きっと怪異や“ソウルコンバーター”などという奇怪な装置が存在していない可能性もある。
 「アインシュタインやガリレオ、その他の科学者が発表した理論は、当時は一般人の常識の外にあったなぁ。彼らは別世界から来た人間だったりして…」
 大介は今まで疑問に思っていたことを口にした。
 「どちらにしても、アルファブラッドが乾電池代わりに使われたんじゃ堪らない。せめて…?」
 「どうしました?」
 湧が何か言いかけたのに口ごもってしまった。
 「うん。過去に原子炉で作り出すような巨大なエネルギーが関わったことって…」
 「有名なのは核実験…だろうな。世界各国で1940年代から行われている」
 「でもそれは、大規模な装置で核弾頭を作り出してますよね? と、いうことはエネルギーの出処はアルファブラッドのような、未知の物質ではないと思うんです」
 「如月君が言いたいのは、原因不明の巨大エネルギーによるものだね? ならば、1908年のツングースカ大爆発がある」
 「シベリアの森林地帯が一瞬にしてなぎ倒された事件ですよね?」
 「でも…、あの爆発がアルファブラッドの力を解放したのなら、果たしてあの程度で済んだのかな?」
 「YOUが言いたいのは、今までに蓄えられたアルファブラッドが“何に”使われたのか?  っていうことですよね?」
 「うん。目的があるからエネルギー源として蓄えられたんだろう? なら、何かに使う前に試験的に実験するんじゃないかと思ったんだ」
 本番で使い物にならないと話にならない。
 その考え方からすれば、事前にテストをするのは当然であり、その痕跡が必ず残されているはずだ。
 「ソウルコンバーターが開発されるまで、何百年もの時間をかけてコクーンを精製するのはおかしい。それまでにも、何らかの方法で使用されてきたはずだよ」
 「何百年? あ、そうか。如月君の古文書は約200年前で、宗主のはそれよりさらに300年前だったね?」
 「そうなんですね? そういうことだったんですね」
 ルイーナが妙に納得した返事をする。
 「やはりアルファブラッドは、今から少なくとも500年以上前に完成していたようです」
 「完成? 作られたってことか?」
 大介は納得いかないようだ。
 何しろ医療技術が発達した今日も、人工的に血液を生成することには成功していないのだ。
 「可能性としては…」
 湧が続けた。
 「何らかのアクシデントがあり、怪我人を救済するために血液を強化したんじゃないかな? 俺やいずみのように…」
 「もしかすると、人体錬成…かも」
 ルイーナが呟きを、全員が固唾を飲んで聞いていた。
 皆、言葉を失い、数秒が経過した。

 「パラケルススの人体錬成に関係する実験は、まさに今から500年前のことです」
 ルイーナは自分の調査結果を参照にして、宗主の古文書がパラケルススの時代と合致していることを確認した。
 「じゃあ、人間を作るために…まさか! 賢者の石?」
 大介は錬金術でおなじみのアイテム名を挙げた。
 「アルファブラッドは賢者の石だったのかっ!」
 「その可能性は充分にあります。何しろYOUはそれで蘇生してますし、いずみに至っては今まさに…人体を新生…言い方を変えると…錬成中なのですから…」
 みんなの背筋に冷たい汗が流れ、誰もそれ以上言葉を発せなかった。
 空想の産物だとばかり思っていた“賢者の石”は、驚くべき形で出現した。

 アルフは本当に『人体錬成』をしていたのかも知れない。
 ならば、作られた人間は?
 いずみは“ホムンクルス”ということになるのだろうか?
 アルファブラッドは…、アルファブラッドの保有者は皆、『ホムンクルス』なのだろうか?

 皆が言葉にすることをためらった。
 それは、自分が“人”とは違う“モノ”かも知れないという、最大の最悪の恐怖心からだった。
    <続く>
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