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第4章
4-17前哨
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「今回の作戦は、今後の我ら水無月家の存亡に関わる重要な任務だ」
大介はお社の舞台上に立って、スタッフ全員に喝を入れるように叫んだ。
巷を騒がせているモンスターの噂は、もはやホラーや都市伝説のレベルでは抑えきれなくなっている。
写真でも撮影されてしまえば、ネットでの拡散は避けられない。
そうなればパニックから暴動に発展する可能性が非常に高くなる。
現行政府では対応は不可能。警察や防衛省が絡めば、問題を大きくさせるだけだろう。
前回の瘴気による大量不明者の時に、戒厳令を発令することしかできなかったことが、最悪の事態をもたらしたことすら、未だに気づいていないのだ。
人知れず早期に解決させる必要が有り、ついに宮内庁は本格的対応に乗り出した。
ルイーナによってもたらされた貴重な情報により、対抗手段が検討されたが、それにはまず、湧の自宅地下に設置されている可能性のあるソウルコンバーターを破壊、もしくは停止させる必要があった。
何故なら、高次元からの凶悪なモンスターは、湧の自宅地下のソウルコンバーターによって召喚されているらしい、と判明したからだ。
現在、確認されているモンスターや怪異は大きく分けて4種類。
・既存の幽霊や人にほとんど害をなさないもの。
・下級霊などのイタズラ程度にしか、人に干渉できないもの。
・いずみや湧が浄霊・消霊してきた怪異と呼んでいたもの。
ーこれにはリッチなどの人を殺害できる凶悪な力を持つものも含まれるー
・そして、湧を殺害したモンスターである。
ー湧を襲ったモンスターはリッチなどの怪異とは桁外れに強く、特徴は間髪入れずに襲いかかってくることだ。
外観は湧の証言しか得られていないが、刃のように研ぎ澄ませた白骨で組み上げた、蜘蛛やサソリのような昆虫の形だったらしい。
ただ、アチコチに腐肉のような悍ましい何かが、こびりついていたという。
見ただけで吐き気を催したと、湧が話していたー
そして、このモンスターこそが、アルフがエネルギーの回収のために召喚した使い魔らしい。
「今まで我々が闘ってきたものとは、全くことなる形相なので一目で区別がつくと思われる。ただ、決して一人では立ち向かわないように努力してほしい」
「師範代! それは危険だからという意味ですか?」
チームリーダーの坂戸が代表して声をあげた。
「その通りだ。率直に言って、我々では太刀打ちできない。攻撃は如月湧のチームのみが行い、他は後方支援に専念してほしい」
「え? それはどういう?」
あまりに身も蓋もない回答に、坂戸は一瞬戸惑った。
「皆も知っての通り、ルイーナによれば、今回の敵は高次元エネルギーを自在に扱い、物理的にも精神的にも我々の想像を超える攻撃を仕掛けてくる」
大介の説明では単なる物理攻撃は無効。験力による術式もモンスターに難なく吸収されてしまうということだった。
「じゃあ、俺たちには有効な攻撃手段がないってことじゃないですか?」
「その通りだ。アルフのモンスター…便宜上アルファクリーチャーと呼ぶこととするが、これはいずみと湧、ルイーナの3人が対処する。俺たちが相手にするのは、アルファクリーチャーに群がってくる敵対モンスターだ」
「師範代! アルファクリーチャーに敵対するなら戦われておけばいいのでは?」
坂戸が矛盾に気づいて発言する。
「俺たちの代わりに戦わせて、アルファクリーチャーが弱まったところを総攻撃すれば…」
「そういうわけにはいかないんだ」
坂戸に皆まで言わせずに否定する大介。
「ソウルコンバーターの特徴は知ってるだろう。近くに引き寄せた従来の怪異やモンスターは、そのままソウルコンバーターのエネルギー源にされてしまう。そのエネルギーでさらに高次元からアルファクリーチャーが召喚されることが予想される」
「それじゃキリがないじゃないですか?」
「だから怪異やモンスターを寄せ付けず、ソウルコンバーターのエネルギー源を絶ってしまう必要があるのだ。俺たちの役目は総力をもって、ソウルコンバーターの作動範囲外に怪異やモンスターを追いやることだ」
「そういうことですか。承知しました」
坂戸は理解が早く、納得すればこだわりなく自分の役目を全うするのだ。
「決行は三日後、作戦の詳細は明日配る。前日の20時には相模原市のアジトに移動する。以上だ」
スタッフの人数は48人。外部協力者も200人ほどが参加するが、真相を知らされないので、単なる封鎖要員でしかない。
極めて厳しい闘いとなるのは目に見えているが、仕方なかった。
大介は一人でも多くの仲間が、ここに戻ってこられることを願った。
「私が一瞬でも現物を見られれば、ソウルコンバーターの停止方法が解明できます」
大介がお社でスタッフに説明してる時、別室では兼成以下の潜入チームがミーティングを行っていた。
ルイーナの説明によれば、透視などでは幻覚との区別ができない。
肉眼で実際に見なければならないということだった。
「見る時間は一瞬で結構です。その瞬間に時間の流れを停止させ、詳細を調べ尽くします」
「そんなことができるのか?」
湧は素直に驚いた。
「私の能力では停めた時間の中でも動き回ることができます。ソウルコンバーターについても10年近く研究してきました。この任務は私しかできないのです」
「10年? ルイーナ今いくつなの?」
今まで黙って聞いていたいずみが鋭く突っ込みを入れた。
「そのことはまた後で…」
ルイーナは意味深な言い方で、いずみにウインクする。
「はあ…まあ、いいけど…」
「ところで、ソウルコンバーターの解析が済んで…そのあとは?」
“見にいくだけ”みたいな作戦が理解できない、と言わんばかりに湧はルイーナに聞き直した。
「率直に言って、ウイークポイントを見つけ出し、一点突破で撃破します」
「…一点突破って…、簡単に言ってくれるけど…。…あれ?」
「いずみどうかしましたか?」
話の途中で急に考え込むなど、いずみらしくない。
ルイーナは、いずみが何か妙案を思いついたと気付いた。
「あのさ、うちのガッコにあったソレをぶっ壊した時…」
「は? え? ぶっ壊した? ソウルコンバーターを? いずみがですかっ?」
ルイーナが喰い付いた。
「うん。湧と大ちゃんと私で」
「だって、築地川高校にあったヤツは特別仕様の強化版ですよ? レポートでは建物の一部が倒壊して潰されたってことでしたが…」
ルイーナは鼻息も荒く、いずみにつかみかかった。
「ルイーナ、そんなに興奮してどうしたの?」
対照的にいずみは冷めた目で見返す。
「意図的に特別仕様のソウルコンバーターを破壊できたことは、今までになかったんですよ? それをっ?」
「そなの?」
「一体どうやって破壊できたんですか?」
「う~ん、まず凹って! 蹴って! ぶった切って!…」
その時のことを思い出しているのだろう。
いずみはジェスチャーを交えて詳しく説明しているつもりらしい。
「あ~ん! 全然わかんないです!」
「だから凹って…」
「それじゃあ、いつものいずみと同じじゃないですかぁ~」
「な、なにおぉ??」
「わかった! わかったから…俺が説明するよ!」
とうとう湧が割り込んだ。
「早い話が…、ソウルコンバーターの近くには近づけないから、いずみがぶち抜いた天井から垂直攻撃することにしたんだ」
「垂直攻撃?」
湧は、大介と相談してソウルコンバーターの上空から物理攻撃を行うことにした経緯を説明した。
「電柱? あっ! そんな手があったんですか!」
ルイーナは素直に感心した。
「でもよく妨害されませんでしたね?」
早速確信を付く質問を返してくるあたり、やっぱりルイーナは一流、いや超一流のエージェントだ。
「確かに。そこが問題だったんだ。だから験力で上空に持ち上げたけど、落下に関しては電柱の質量を利用したんだ」
「質量?」
「うん。落下開始まで位置や向きを微調整しつつ保持したけど、落下を開始したらコースの修正は外から験力を当てる。そうやって妨害された時も逆方向に験力を当てて対応したんだ」
「おおっ! なるほどっ! それなら軌道修正も妨害も同じ方法で干渉するから、対応が可能ですね。しかも電柱ほどの大質量では大きな軌道変更は難しいでしょうし…」
コンクリートと鉄骨の塊だ。質量に加え、落下の加速エネルギーには対抗できない。
「しかし…、今回はその方法も使えないだろうね」
「ですね。だから私がいる意味があるんですけど」
ルイーナは自分を指差して微笑んだ。
「具体的にはどうするんだ? ただ、見ればいいって言ったけど…」
「私が6次元から来たことはお話ししましたよね?」
「ああ、そうだったね。今ひとつ実感できていないけど…」
湧が困ったような顔で呟く。
「透視では幻覚なのか実体なのか判別できないんです。なぜならエネルギー体としては全く同じだからです」
「え? どういうこと?」
「この世界の“物質”は、安定凝固したエネルギーであり、可視光線の波長範囲内でしか情報を返しません。でも流動的なエネルギーは揺らぎという形で絶えず情報を発しているのです」
「え~と、つまり今回の作戦は“物質”としてのソウルコンバーターを破壊することだから、透視などのエネルギーそのものを見る方法じゃ、位置を特定できない…って、言いたいのかな?」
湧はあまり自信なさげに答えた。
「まあ、そんな感じです」
「意味がわかりません」
いずみは不満げに呟いた。
「いずみには後で詳しく説明するから、今はおとなしく聞いていてくれ」
「むぅ~、なんかバカにされた気分」
さらに口を尖らせて抗議するが、湧はスルーした。
「ルイーナ。繰り返しになるけど、実際に見た後はどうする気なんだ?」
「短的に言って、この世界の時間を止めて、アルフの情報を収集します」
「でも、アルフも時間の操作はできるんじゃないのか? いくら時間を止めても危険はないのか?」
「今、アルフはYOUのお父様と融合していると思われるので、瞬間的な時間経過までは監視しきれないはずです」
「お父様なんかじゃない。父親ではあるが、それだけだ。撃退すべき敵でしかない」
「YOU…」
「それに…、さくらさんを殺し、いずみにまで手をかけた。他にも多くの人々を…」
「湧…、そこまで思って…。私も頑張るからねっ!」
いずみが力強く拳を握りしめた。が、
「あ、いや。いずみは今回だけは頑張らないでくれ」
湧が冷静に抑え込んだ。
「え~、あんでよぉ~」
「だから、いずみには最終決戦で全力を出してもらうから、それまで力を温存しててくれ」
「そうですよ。それに最終決戦はそんな先のことではないのです。多分、今回の作戦後半月以内に行われるでしょう」
「あ、そなの? なら今回はルイーナの活躍を拝見させていただきましょう!」
一体どこからの目線なのか、いずみはルイーナを励ました。
「…は、はい。頑張りますね…、あれ? うふふ…」
ルイーナもつい素で返してしまったが、何かおかしいことに気づいて笑い出してしまった。
そして、侵攻作戦が開始された。
<続く>
大介はお社の舞台上に立って、スタッフ全員に喝を入れるように叫んだ。
巷を騒がせているモンスターの噂は、もはやホラーや都市伝説のレベルでは抑えきれなくなっている。
写真でも撮影されてしまえば、ネットでの拡散は避けられない。
そうなればパニックから暴動に発展する可能性が非常に高くなる。
現行政府では対応は不可能。警察や防衛省が絡めば、問題を大きくさせるだけだろう。
前回の瘴気による大量不明者の時に、戒厳令を発令することしかできなかったことが、最悪の事態をもたらしたことすら、未だに気づいていないのだ。
人知れず早期に解決させる必要が有り、ついに宮内庁は本格的対応に乗り出した。
ルイーナによってもたらされた貴重な情報により、対抗手段が検討されたが、それにはまず、湧の自宅地下に設置されている可能性のあるソウルコンバーターを破壊、もしくは停止させる必要があった。
何故なら、高次元からの凶悪なモンスターは、湧の自宅地下のソウルコンバーターによって召喚されているらしい、と判明したからだ。
現在、確認されているモンスターや怪異は大きく分けて4種類。
・既存の幽霊や人にほとんど害をなさないもの。
・下級霊などのイタズラ程度にしか、人に干渉できないもの。
・いずみや湧が浄霊・消霊してきた怪異と呼んでいたもの。
ーこれにはリッチなどの人を殺害できる凶悪な力を持つものも含まれるー
・そして、湧を殺害したモンスターである。
ー湧を襲ったモンスターはリッチなどの怪異とは桁外れに強く、特徴は間髪入れずに襲いかかってくることだ。
外観は湧の証言しか得られていないが、刃のように研ぎ澄ませた白骨で組み上げた、蜘蛛やサソリのような昆虫の形だったらしい。
ただ、アチコチに腐肉のような悍ましい何かが、こびりついていたという。
見ただけで吐き気を催したと、湧が話していたー
そして、このモンスターこそが、アルフがエネルギーの回収のために召喚した使い魔らしい。
「今まで我々が闘ってきたものとは、全くことなる形相なので一目で区別がつくと思われる。ただ、決して一人では立ち向かわないように努力してほしい」
「師範代! それは危険だからという意味ですか?」
チームリーダーの坂戸が代表して声をあげた。
「その通りだ。率直に言って、我々では太刀打ちできない。攻撃は如月湧のチームのみが行い、他は後方支援に専念してほしい」
「え? それはどういう?」
あまりに身も蓋もない回答に、坂戸は一瞬戸惑った。
「皆も知っての通り、ルイーナによれば、今回の敵は高次元エネルギーを自在に扱い、物理的にも精神的にも我々の想像を超える攻撃を仕掛けてくる」
大介の説明では単なる物理攻撃は無効。験力による術式もモンスターに難なく吸収されてしまうということだった。
「じゃあ、俺たちには有効な攻撃手段がないってことじゃないですか?」
「その通りだ。アルフのモンスター…便宜上アルファクリーチャーと呼ぶこととするが、これはいずみと湧、ルイーナの3人が対処する。俺たちが相手にするのは、アルファクリーチャーに群がってくる敵対モンスターだ」
「師範代! アルファクリーチャーに敵対するなら戦われておけばいいのでは?」
坂戸が矛盾に気づいて発言する。
「俺たちの代わりに戦わせて、アルファクリーチャーが弱まったところを総攻撃すれば…」
「そういうわけにはいかないんだ」
坂戸に皆まで言わせずに否定する大介。
「ソウルコンバーターの特徴は知ってるだろう。近くに引き寄せた従来の怪異やモンスターは、そのままソウルコンバーターのエネルギー源にされてしまう。そのエネルギーでさらに高次元からアルファクリーチャーが召喚されることが予想される」
「それじゃキリがないじゃないですか?」
「だから怪異やモンスターを寄せ付けず、ソウルコンバーターのエネルギー源を絶ってしまう必要があるのだ。俺たちの役目は総力をもって、ソウルコンバーターの作動範囲外に怪異やモンスターを追いやることだ」
「そういうことですか。承知しました」
坂戸は理解が早く、納得すればこだわりなく自分の役目を全うするのだ。
「決行は三日後、作戦の詳細は明日配る。前日の20時には相模原市のアジトに移動する。以上だ」
スタッフの人数は48人。外部協力者も200人ほどが参加するが、真相を知らされないので、単なる封鎖要員でしかない。
極めて厳しい闘いとなるのは目に見えているが、仕方なかった。
大介は一人でも多くの仲間が、ここに戻ってこられることを願った。
「私が一瞬でも現物を見られれば、ソウルコンバーターの停止方法が解明できます」
大介がお社でスタッフに説明してる時、別室では兼成以下の潜入チームがミーティングを行っていた。
ルイーナの説明によれば、透視などでは幻覚との区別ができない。
肉眼で実際に見なければならないということだった。
「見る時間は一瞬で結構です。その瞬間に時間の流れを停止させ、詳細を調べ尽くします」
「そんなことができるのか?」
湧は素直に驚いた。
「私の能力では停めた時間の中でも動き回ることができます。ソウルコンバーターについても10年近く研究してきました。この任務は私しかできないのです」
「10年? ルイーナ今いくつなの?」
今まで黙って聞いていたいずみが鋭く突っ込みを入れた。
「そのことはまた後で…」
ルイーナは意味深な言い方で、いずみにウインクする。
「はあ…まあ、いいけど…」
「ところで、ソウルコンバーターの解析が済んで…そのあとは?」
“見にいくだけ”みたいな作戦が理解できない、と言わんばかりに湧はルイーナに聞き直した。
「率直に言って、ウイークポイントを見つけ出し、一点突破で撃破します」
「…一点突破って…、簡単に言ってくれるけど…。…あれ?」
「いずみどうかしましたか?」
話の途中で急に考え込むなど、いずみらしくない。
ルイーナは、いずみが何か妙案を思いついたと気付いた。
「あのさ、うちのガッコにあったソレをぶっ壊した時…」
「は? え? ぶっ壊した? ソウルコンバーターを? いずみがですかっ?」
ルイーナが喰い付いた。
「うん。湧と大ちゃんと私で」
「だって、築地川高校にあったヤツは特別仕様の強化版ですよ? レポートでは建物の一部が倒壊して潰されたってことでしたが…」
ルイーナは鼻息も荒く、いずみにつかみかかった。
「ルイーナ、そんなに興奮してどうしたの?」
対照的にいずみは冷めた目で見返す。
「意図的に特別仕様のソウルコンバーターを破壊できたことは、今までになかったんですよ? それをっ?」
「そなの?」
「一体どうやって破壊できたんですか?」
「う~ん、まず凹って! 蹴って! ぶった切って!…」
その時のことを思い出しているのだろう。
いずみはジェスチャーを交えて詳しく説明しているつもりらしい。
「あ~ん! 全然わかんないです!」
「だから凹って…」
「それじゃあ、いつものいずみと同じじゃないですかぁ~」
「な、なにおぉ??」
「わかった! わかったから…俺が説明するよ!」
とうとう湧が割り込んだ。
「早い話が…、ソウルコンバーターの近くには近づけないから、いずみがぶち抜いた天井から垂直攻撃することにしたんだ」
「垂直攻撃?」
湧は、大介と相談してソウルコンバーターの上空から物理攻撃を行うことにした経緯を説明した。
「電柱? あっ! そんな手があったんですか!」
ルイーナは素直に感心した。
「でもよく妨害されませんでしたね?」
早速確信を付く質問を返してくるあたり、やっぱりルイーナは一流、いや超一流のエージェントだ。
「確かに。そこが問題だったんだ。だから験力で上空に持ち上げたけど、落下に関しては電柱の質量を利用したんだ」
「質量?」
「うん。落下開始まで位置や向きを微調整しつつ保持したけど、落下を開始したらコースの修正は外から験力を当てる。そうやって妨害された時も逆方向に験力を当てて対応したんだ」
「おおっ! なるほどっ! それなら軌道修正も妨害も同じ方法で干渉するから、対応が可能ですね。しかも電柱ほどの大質量では大きな軌道変更は難しいでしょうし…」
コンクリートと鉄骨の塊だ。質量に加え、落下の加速エネルギーには対抗できない。
「しかし…、今回はその方法も使えないだろうね」
「ですね。だから私がいる意味があるんですけど」
ルイーナは自分を指差して微笑んだ。
「具体的にはどうするんだ? ただ、見ればいいって言ったけど…」
「私が6次元から来たことはお話ししましたよね?」
「ああ、そうだったね。今ひとつ実感できていないけど…」
湧が困ったような顔で呟く。
「透視では幻覚なのか実体なのか判別できないんです。なぜならエネルギー体としては全く同じだからです」
「え? どういうこと?」
「この世界の“物質”は、安定凝固したエネルギーであり、可視光線の波長範囲内でしか情報を返しません。でも流動的なエネルギーは揺らぎという形で絶えず情報を発しているのです」
「え~と、つまり今回の作戦は“物質”としてのソウルコンバーターを破壊することだから、透視などのエネルギーそのものを見る方法じゃ、位置を特定できない…って、言いたいのかな?」
湧はあまり自信なさげに答えた。
「まあ、そんな感じです」
「意味がわかりません」
いずみは不満げに呟いた。
「いずみには後で詳しく説明するから、今はおとなしく聞いていてくれ」
「むぅ~、なんかバカにされた気分」
さらに口を尖らせて抗議するが、湧はスルーした。
「ルイーナ。繰り返しになるけど、実際に見た後はどうする気なんだ?」
「短的に言って、この世界の時間を止めて、アルフの情報を収集します」
「でも、アルフも時間の操作はできるんじゃないのか? いくら時間を止めても危険はないのか?」
「今、アルフはYOUのお父様と融合していると思われるので、瞬間的な時間経過までは監視しきれないはずです」
「お父様なんかじゃない。父親ではあるが、それだけだ。撃退すべき敵でしかない」
「YOU…」
「それに…、さくらさんを殺し、いずみにまで手をかけた。他にも多くの人々を…」
「湧…、そこまで思って…。私も頑張るからねっ!」
いずみが力強く拳を握りしめた。が、
「あ、いや。いずみは今回だけは頑張らないでくれ」
湧が冷静に抑え込んだ。
「え~、あんでよぉ~」
「だから、いずみには最終決戦で全力を出してもらうから、それまで力を温存しててくれ」
「そうですよ。それに最終決戦はそんな先のことではないのです。多分、今回の作戦後半月以内に行われるでしょう」
「あ、そなの? なら今回はルイーナの活躍を拝見させていただきましょう!」
一体どこからの目線なのか、いずみはルイーナを励ました。
「…は、はい。頑張りますね…、あれ? うふふ…」
ルイーナもつい素で返してしまったが、何かおかしいことに気づいて笑い出してしまった。
そして、侵攻作戦が開始された。
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