HighSchoolFlappers

ラゲッジスペース

文字の大きさ
152 / 158
第13章

13-04再戦

しおりを挟む
 「そもそも何でさくらがそんなこと知ってるのよっ!」
 いずみは噴き出すような怒りと共に強い思念を発して、さくらに喰いつく。
 『私は肉体を失うことでプロテクトが外され、アルフと意思疎通ができるようになったの』
 さくらはさほど気負った様子もなく淡々と告げた。
 「肉体を? それって死ぬことが前提ってこと? そんな…ひどい…」
 いずみは拳を固く握りしめ、吐き出すように告げる。
 『私だって死にたくはなかったよ。大好きな湧くんともっと一緒に居たかった…』
 「さくら…」
 『でもね。何も知らずにいずみたちとバカやって、平和に暮らして、ある日突然“無”に帰す…なんて、絶対にイヤっ!』
 さくらの思念が圧力を伴っていずみに流れ込んできた。
 「さ、さくら…」
 『ま、誰も認識できずに全てが一瞬で消えてしまうなら、その方が恐怖も苦しみもなくて幸せなのかも知れない。でもね。私は知ってしまったの。そんなに簡単なものじゃないって』
 「え? どういうこと? 大数宇宙が凪いだら全てが無になるんじゃないの?」
 『いずみ…。私たちの世界は、この大数宇宙の時空を超えた壮大なものじゃないのよ? 取るに足らない一瞬が、私たちの宇宙の始まりから終わりまで約===億年かかってるの。大数宇宙の思念体が全て凪によって活動を停止させられたら、全ての宇宙が無秩序に崩壊して生物も星も銀河も全てが崩れてゆくのよ』
 「無秩序? 電気が消えるみたいに一瞬で消えるんじゃないの?」
 いずみは納得できずに複雑な表情をする。
 『そんなに甘くない!』
 「ひっ!」
 さくらの思念が叫ぶ! せんと坂戸も思わず頭を抱え込んだ。
 『物理法則はおろか、善や悪、性別、年齢そんな私たちが生活してきた世界の常識は一切なくなり、異次元と呼ばれているパラレルワールドの生物や、惑星の公転軌道やら、銀河どうしの無秩序な消滅や出現など、もう例えようがないほど滅茶苦茶な世界なのよ』
 「まるで見てきたような…」
 『見てきたのよっ! 物理的な肉体がないからどうにか戻ってこられたけど、思念体でもあの世界で生きてくのはムリっ!』
 さくらは何かとんでもないことを口走り、その恐怖の波動が3人を震え上がらせた。
 導尊による凪いだ大数宇宙は、とんでもない状態になるようだと充分に伝わった。
 「でもさ。そんなに強大な力を持ってる導尊にどうやって対抗するの? どう考えても私たちのささいな力じゃ叶いっこないと思うんだけど…」
 『そこなのっ! どうも物質世界のターニングポイントは“明治6年”らしいの』
 「明治6年? 私が飛んだ時代じゃない。 あ、でも別世界に来ちゃったんだけど?」
 『それは私が呼んだからよ? せんに会わせるために』
 いずみはせんを睨みつけた。
 「お、俺たちは何も知らないぞ? 女神さまの指示に従っただけだ」
 「…め・が・み・さま… ねぇ」
 『私だって恥ずかしいんだよっ! でもやめてくれなくて…、もうどうでも良くなってた』
 「で、その女神さまはどうしてせんたちをここへ連れてきたのよ」
 『エネルギーを物質化するには莫大なエネルギーが必要になるの。それこそ無数にある宇宙の一つを丸ごと使うような…ね』
 「それって核融合で質量欠損分のエネルギーが放出されるぐらいな?」
 『そんなレベルじゃないわよ。大体、核融合は元々原子核の中性子が分離したことによる質量欠損でしょ? その中性子自体、物質そのものじゃない。私が言ってるのは非物質エネルギーで、物質を生成することなの』
 いずみはしばらく目を瞬いてから、思念を返した。
 「う~んと、非物質ってことは、今私が考えてるような思念で物質を作る…ってこと?」
 『そうよ。大数宇宙には、あらゆるエネルギーで構成された子宇宙を抱えてるけど、それを統括してるのが統合された思念なの』
 「うん。全く解んない!」
 『お、おのれはぁ~!』
 「いでででででっ! あにすんのぉ~!」
 さくらは思念でいずみの頭のこめかみをグリグリする。
 『つまりっ! こういうことよっ!』
 「え? え? え? なんでこれが?」
 『非物質エネルギーで、物質に干渉するってことよ。 これでも相当なエネルギーを使ってるんだからね!』
 さくらが無意識に息を切らせたような声(思念)で怒鳴る。
 「そんなに大変ならやらなきゃいいじゃん! いだいっいだいっ!」
 『誰のせいよっ!』
 「わかった。わかったからもうやめてっ! 本当にグリグリされるより、マジで痛いからっ!」
 いずみは涙目になって訴えた。
 せんたちは何が起きているのかわからないので、傍観に徹していた。
 「女神さまそろそろ本題に戻っていただけないでしょうか?」
 せんは呆れを通り越した抑揚のない声で告げた。
 『あ、ごめんなさい。それで、物質化した導尊はこの明治6年の世界で、思念ごと消滅させられれば、大数宇宙に戻れなくなるので凪を防ぐことが可能です』
 「消滅? そんなことどうやって?」
 『それにはこの娘が必要なんです』
 「この…娘? いずみのことか?」
 『そうです。この世界で唯一導尊に対して打撃を加えることができるから。何故かというと、いずみの攻撃は物質的な破壊力だけでなく、非物質的エネルギーの消失ができます』
 「消失? それは?」
 『通常、“エネルギーは不変である”というのが定説ですが、次元を超えたエネルギー転換をすれば、その世界でのエネルギーはその分失われます』
 「ああ、でもそれは…」
 『そう。せんの思った通り、代替分のエネルギー交換が行われるので、正しくは消失とは言いません。だけどそのエネルギーも有意義な利用法を用いれば、充分に価値のあるものになります』
 「ということは、いずみにはその能力が?」
 『そうです。同じようなことができる装置をあなたたちは知ってるはずですよ?』
 「え? … … あ! ソウルコンバーター!」
 『その通りです。いわば、いずみはソウルコンバーターみたいなもんです♡』
 「ひどい! 私を機械みたいにっ!」
 それまで黙って聞いていたいずみが怒鳴った。
 「でもどうしてこの時代なんですか?」
 『それは導尊が物質化して、世界を牛耳るためのベストタイミングなんです。いわゆる一つのターニングポイントです』
 「それは、この時代があなたたちが居た世界と我々の世界の分岐点ということですか?」
 『そうです。それ以外にもこの明治6年は物質的宇宙の重要なポイントです』
 「そのために我々をこの時代に送った…と?」
 『その通りです。そして、あなたたちだけでなく、私たちの世界の人間…まぁ、いずみが適任だったんですが、双方の力を合わせることで導尊を撃退することが可能になると思います』
 「あ! そういうこと? さっきさくらが入ってた物質化するには膨大なエネルギーが必要って…」
 『その通り。シンパを得るためには“奇跡”を見せる必要があるから、導尊は負の思念エネルギーの殆どを費やしてでもこの物質世界に顕現するはず。そしてそのタイミングで…』
 「ぶっ飛ばしてやるのねっ!」
 『ぶ… まぁ言い方はともかくそういうことになるわね』
 「女神さまの計画はほぼ理解できました。我々は陽動してシンパを混乱させる役を請け負いましょう」
 『さすがせんね。期待してます』
 荒っぽい作戦だが、いずみたちは奮起して導尊に立ち向かう意識を固めた。
    <続く>
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...