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第13章

13-05グリグリ

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 宇宙空間とは3次元世界から見れば、無限とも言える果てしない空間に思われているが、大数宇宙における空間とは実は大きさがない。
 それは思念とは空間的広さが必要ないからだ。
 あくまで3次元の物質的世界にのみ空間という概念が生じている。
 従ってビッグバンやインフレーションという現象も、大数宇宙においてはごく当たり前のことで、重複している他の宇宙と何ら変わりはない。
 マルチバース宇宙というと明確な境界線があるように思われるが、そもそも宇宙には大きさという概念がないのだから境界線など全く無意味なものだろう。
 それぞれの宇宙での認識はその宇宙内の論理であって、宇宙(次元)が変われば見えるものや影響を受けるものが異なるのだ。
 いわば3次元世界で言われている他次元や異世界などは、3次元世界でのみの概念なのだ。
 ダークエネルギーやダークマターについても然り、大数宇宙では当たり前の思念や思考の揺らぎが、ダークエネルギーやダークマターとして3次元世界で観測されているのだった。
 そもそも宇宙の膨張とは、3次元世界の住人が宇宙の果てに思いを馳せて、その思念が宇宙というものをどんどん膨らませているに過ぎない。宇宙を膨張させていると言わせている“ダークエネルギー”は3次元世界の住人の思念そのものなのだ。
 その思念も含めて、全ての思念エネルギーが大数宇宙の揺らぎとなり、活性化している。
 導尊というのはその揺らぎに反発する“負のエネルギー”そのものなのだ。
 通常の凪は増え続ける揺らぎを抑制する機能を果たしているのだが、偏った負のエネルギーによって構成されたのが“導尊”なのだ。
 そしてこのまま導尊のエネルギーが強大になれば、大数宇宙の揺らぎが無くなり、大数宇宙は“無”に帰すのだ。

 「なんか似たようなことを以前に聞かされたような気がするんだけど?」
 『アルフのことじゃない? アルフも大数宇宙の思念から分裂した思念の一部だからね』
 さくらが当たり前のような言い方で返す。
 「そか。アルフの成り立ちだぁ!」
 と言ったところで、いずみは複雑な表情に変わった。
 『? いずみ? どうかしたの?』
 「「?」」
 せんと坂戸もいずみの変化に気づいて顔を見合わせた。
 「… あのさ? 今の話だと、アルフも導尊も同じような存在じゃないの?」
 『「「は?」」』
 いずみ以外の3人は言葉を失った。
 『いずみ? あんたこれまでの私の話 ぜっんぜん理解してなかったのぉ!』
 さくらの絶叫がみんなの頭の中に響き渡った。
 「な、何よいきなり叫んでっ! そんな話一度も聞いた事ないわよっ! 導尊が思念体だなんて… …あれ? 怨霊だから物理的な身体がないから? 思念体って言えるのかな?」
 言ってる途中で何となく旗色が悪い事に気づいたいずみの声量は、徐々に小さくなる。
 『… わかったみたいね。私が説明してる時に何度も何度も“物理的攻撃が効かない”って言ったよね? その時導尊は実体のない思念体の一つだって話してるんだけどぉ?』
 「ごめんごめん。わかったからグリグリはやめてぇ!」
 今回は手首から先を可視化したさくらの拳が、いずみの両こめかみをグリグリしていた。
 『もう、この娘には事前に作戦を説明しても理解できないだろうから、せんと坂戸さんに詳細を説明しますね』
 さくらの全面的信頼を失ったいずみは実行部隊を命じられた。
 すなわち“鉄砲玉”そのものだった。

 「と、ところで女神様。さっきの拳は…? まるで本当に拳が現れたように見えましたが…」
 『さすがせんさんですね。あれは導尊が生み出したモンスターと同じ原理です』
 「モンスター? あの剣で出来た怪物のことですか?」
 『そうです。いずみの攻撃以外ほとんどダメージを与えることができなかった理由です』
 「? どんな理由よっ! グリグリ、本当に痛いんだからねっ!」
 いずみが憤慨しながら叫んだ。
 『当たり前じゃない。痛くなかったら意味ないでしょ!』
 「ううぅ~(涙)」
 『物理的な干渉は制限があるけど、思念そのものにもプレッシャーを与えることで、まるで本当に物体があるように思わせることができるの。特に今いるこの6次元なら物質にもかなりの干渉ができるから、いずみの痛みは本当にグリグリされるより痛かったかも(笑)』
 「じゃあ、あの時俺たちの攻撃が通用しなかったのは…」
 『そういうこと。ただ、せんさんたちの斬撃は思念体にも通用するから、多少はダメージを与えられたの』
 「なるほど。ではやり方次第では今後私たちも戦うことができるかもしれない、と?」
 『それはどうでしょうか? あのモンスターを倒すだけならそれでもいいのでしょうが、最終的な目的は導尊の消滅です。なので、いずみの力を最大限に発揮して確実に仕留める必要があります』
 「そんな方法があるんですか? 実際に一度は完敗して殺されているんですよ?」
 『それは闘い方次第です。そのためにいずみにはその術を身につけてもらいます』
 「え? ええっ!? なんか嫌な予感しかしないヨォ!!」
 『それまではせんたちには、導尊との戦いの準備をしてもらいますね』
 「分かりました。なんでもおっしゃってください」
 せんの瞳が決意の輝きを放った。
    <続く>
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