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十一話 専属侍女がね… ④
しおりを挟む「替えられたシーツに針が刺さっていたし、今日は靴にも針が仕込まれていたわ。
貴方たちはわたくしの専属侍女だから聞いているのですよ」
本当にムカつくけどなるべく表情を変えず、冷静に問い質した。
「わたくしたちがやった証拠でもあるんですか?」
ミランダは初めて私が言い返したので、驚いて目を大きく見開いたけど、すぐにハンッて鼻を鳴らして嫌らしくニヤリと私を見ながら言い返してきた。
私を見下して蔑む視線だ。
「証拠があろうがなかろうが貴方たちはわたくし侯爵夫人の専属侍女なのよ。
わたくしに対しての不手際は貴方たちの責任でなくて?」
私がミランダとユリアンナを見据えながら言うと、ミランダはだんだんと顔を真っ赤にして激昂しだした。
「何よっ!何が侯爵夫人よ!あんたなんかフィンレル様に見向きもされない愛されない妻のくせに!
わたくしがラファエル様の乳母を紹介してあげるって言ってあげたのに、あんたなんかが断るなんて何様のつもりよ!」
あら、凄い発狂状態ね。
何様って私侯爵夫人なんだけど?貴方こそ何様なのよ。
そんなに例え愛されなくても私がフィンレルの妻であることが気に入らないということかしら?
それにしても使用人がフィンレルを名前呼びなんて何を考えているの?完全に冷静さを失くしているのか、普段からフィンレルを名前呼びしていて、フィンレルがそれを許しているのかしらね。
まあフィンレルはいいとしてこんな女にラファエルの名をよんで欲しくないわ。
「貴方の言う例え愛されない妻でも現にわたくしは旦那様の妻で貴方はわたくし付きの専属侍女なのは変わらないわ」
「はあ?わたくしは伯爵令嬢であんたはたかが田舎の子爵令嬢のくせに何なのよ!
それにあんたなんか地味な見目の冴えない女で、わたくしはこんなに美しいの!
誰が見たってフィンレル様に相応しいのはわたくしの方なのよ!
わたくしがフィンレル様の妻になるつもりだったのに!
あんたなんかお金で実家から売られた、義妹を虐げる男好きの性悪女で、誰からも愛されない女のくせに偉そうにわたくしに意見するんじゃないわよ!」
前世の記憶が戻る前のベレッタだったら引っ込み思案で自分に自信を持てない子だったから、誰からも愛されないなんて言われたら、傷ついて泣いてしまったかもしれないわね。
でも今の私は違うのよ。
「あら、貴方旦那様の妻になるつもりだったの?
伯爵令嬢かどうだか知らないけど、いち使用人が仕える主人の結婚事情にまで口を出していいと思ってらっしゃるの?」
私は目を細めてミランダを見つめながら微笑みを浮かべる。
「…っ!ふざけんじゃないわよ!!」
ミランダが顔を真っ赤にしながら叫んで、側のテーブルに乗っていたお茶のカップを手に持ち上げたその時にケイトが私の前に立った。
ミランダが私にお茶をかけようとしているのを庇おうとして、素早い動きでケイトが私の前に立ってくれたのだ。
「そこまでだ!」
その時声がしてガチャッと扉を開ける音がして誰かが入ってきた。
そこにはフィンレルとフィンレルの側近のアランが立っていた。
「旦那様?!」
私は私を庇おうと素早く私の目の前に立ってくれたケイトに焦って立ち上がろうとして、半腰の状態でフィンレルの姿を見て思わず声を上げた。
「…あっ…あ…」
ミランダが持ち上げたお茶の入ったカップを持ったまま、フィンレルを見て顔を青白くさせる。
「ジェンシー嬢これはどういうことだ?事情を話してもらおうか?」
フィンレルがその切れ長の水色の目を氷のように冷たくさせて、ミランダを鋭く見つめる。
「…っ!…フィンレル、さま…」
「ジェンシー嬢私は君に名前を呼ぶことを許していないが?」
フィンレルの低く固い冷たい声が部屋中に響く。
「…あ、あの…申し訳ありません!旦那様!」
ミランダが顔を強張らせて震えながらフィンレルに謝罪する。
「で、どういうことなのだ?」
フィンレルは謝罪したミランダを冷たい視線で見やり、更に問い詰める。
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