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十五話 謝罪されても今更なのですけれど…でもどういうこと? ③
フィンレルが顔色を悪くして泣きそうになっている。
何を泣きそうになってるんじゃい!泣きたいのはベレッタの方なのよ!
「…その通りだ…私がすべて悪い…今更謝っても取り返しのつかないことを私はしてしまったけれど、今は謝ることしか出来ない…本当に申し訳なかった」
本当に今更ですわね、まあ謝らず逆ギレをされるよりはマシですけどね。
「ええ、本当に今更ですわね…。
ですが、執事長と侍女長のことに関しては早急に旦那様に動いて頂かないとなりませんわ。
先程ミランダとユリアンナのことがありましたわよね?
それで騒ぎを察知した執事長と侍女長が家の予算使い込みの証拠を隠滅する恐れが出てきましたわ。
わたくしは邸内の管理を任される仕事をしておりましたが、肝心の予算など金銭に関するものについてはわたくしは一切関わらせてもらっておりませんので、わたくしが今から証拠を掴むことは難しいのですわ。
ですからそこは旦那様にお願いするしかないのです。
出来ますわよね?」
「…そうだな…わかった。
私が早急に今から動くことにするよ…本当にすまない…」
また謝ったわ、今更なのだけど何だかフィンレルが俯きながら返事するけど、どこか虚ろだ。
ちょっと大丈夫なのかしら?信じていた使用人が裏切っていたのだからショックなのはわかるけど、今から大事なことをしてもらわなくてはならないのよ。
「ええ、旦那様?大丈夫ですか?」
「…ああ、私は今まで何をしていたんだろう…何を見ていたんだろう…何て愚かなんだ…自分がほとほと嫌になるよ…こんなだから最初から君に嫌われるんだよな…」
フィンレルが独り言のようにブツブツと小声で言ったけど、私の耳には全部聞こえてきたわ。
ん?最初から私に嫌われている?はあ?どういうこと?
「えっ?最初からわたくしに嫌われているってそれは旦那様ではないですか!」
私はイラッとして思わず少し声が大きくなり叫んだ後にハッとなり両手で口を押さえる。
抑えろ!抑えろ!私冷静でいるのよ!
「確かに…私は君に結婚式の時も初夜の時も何も言わなかった…情けないが、何を言っていいかわからなかった…。
本当はこんな醜聞まみれの私のところへ嫁いで来てもらって申し訳ないと思いつつも、有り難いと思っていたんだ。
でも君に何をどう言えばいいかわからなかった…。
言い訳になるけれど、私は君とちょうど結婚する直前に領地で問題が起こり、結婚式初夜の日以外はそれにかかりっきりで泊まりがけでしょっちゅう王都へ行ったり、朝早くから外出して帰れるのは夜遅くだったり…それ以外も邸の中にいても追われるように執務を熟していて、本当に時間がなくなかなか君に会いに行けなかった…。
落ち着いてから…と思って…二ヶ月程して少し落ち着いてきた時に、ちゃんと君と話をしようと思っていたんだ。
だが君と食事しながら何とか話してみようと思っていたけど…君が私と食事さえも一緒にしたくないと言っていると聞いて…私はそんなに君に嫌われてしまったんだと思ったら…尚更君のところへ行けなくなったんだ…。
君が懐妊したのを知った時も本当に嬉しかったんだ…。でもその時も悪阻が酷くて、誰かに会える状態ではないと言われて…また君に会いに行けなかった…。
でもそんなことは言い訳にしかならないな…身重な君を労ることさえ私はしなかったんだから…私は最低な人間だ…本当に申し訳ない」
えっ?ちょっと待って!私フィンレルと食事をしたくないなんて一言も言ってないわよ!
それに妊娠した時、確かに悪阻はあったわ。でもそれほど酷くなかったわよ!
「あの?…わたくし旦那様と食事したくないなど一言も言っておりませんけれど?」
「えっ?」
フィンレルが目を丸くする。私も今同じ顔をしていると思うわ。
「それどなたからお聞きしましたの?」
「…侍女長とジェンシー嬢に…あっ!…」
「えっとわたくしラファエルがお腹にいる時、確かに悪阻がありましたが、それほど酷くなくて誰にも会えない状態ではありませんでしたわ。
それもどなたからお聞きになりましたの?」
「…同じだ…侍女長とジェンシー嬢にだ…」
フィンレルも気付いたみたいだけど、なるほどそういうことだったの。
「そうだったのですね…もう済んだことですが、でもどんなにお忙しくとも旦那様が最初に領地の事情、今忙しいから私に会いにこれないことを話して下さっていれば…こんなことにはならなかったかもしれませんわよね?」
確かにフィンレルと私の間に悪意のある者が挟まっていたから拗れてしまったけれど、それでもフィンレルが初めに事情を話してくれてればね…私たちは結婚式の時に初めて顔を合わせたのだからお互いのことを何も知らない同士なのよ!言葉が足らないというものではないのよ!ほんとに!
ベレッタも何も言わなかったことも悪いけれど、ベレッタは実家でずっと虐げられて、義母と義妹に『卑しい平民の子』と見下され馬鹿にされて貶められていたベレッタは自分を卑下して自信を持てなかったから、自分からフィンレルに事情を聞くことなど出来なかったのよ。
「…ああぁ、すべて君の言う通りだよ…私がこんなだから…悪意ある者にいいようにされてしまったんだ…ちゃんと調べもせずに執事長侍女長始め使用人を信用し過ぎて…それで君をこんなに傷つけてしまい…それに私が仕えてくれている使用人にも信用されていないから…こんな形で裏切られて…」
フィンレルが頭を抱え情けなく落ち込んでどんどん小さくなっていっているわ。
執事長始めフィンレルを裏切った使用人たちが悪いのはもちろんだけど、フィンレルも彼らの言うことを信じて疑いもしなかったことも悪いわ。
まあそれだけ信用していたということなのだろうけど…。
はぁ~、でもフィンレルを見てると私はまた少し可哀想だと思ってきているわ。
フィンレルって前世の私の息子よりうんと下なんだもの…されたことは許せないけど…フィンレルは先程言っていたわよね?
ヒロインを今も愛しているのだろうけれど、自分の評判の悪いことをちゃんとわかった上で結婚した私とちゃんと向き合おうとしていたってことよね?
はぁ~何だかこれ以上責める気がなくなってきたわ…私も甘いわね。
「旦那様しっかりして下さいませ!」
私がビシッと言うとフィンレルはビクッとなり情けない顔をしながら顔を上げた。
悲壮感漂う顔のほとんどに縦線が入っているようにどんよりとした顔になってるわ。
でもどんより縦線顔でも美形は美形なのね。
「圧倒的に旦那様の言葉が足りませんでしたけど、過去のことはもうどうにもなりませんわ。
旦那様も信じていた使用人に裏切られてお辛いことでしょうしね。
それにわたくしにも悪いところがありましたわ、申し訳ありません。
ですからもう落ち込むのは止めて下さいませ。
反省は必要ですけれど、もう切り替えて次にいって下さいませ!旦那様!
これからのことの方がラファエルとわたくしたちには大事ですのよ、ですから下を向かず顔を上げてシャキッとして下さいませ!」
「…っ!……わかった…君は強いんだな」
私が元気良くまるで自分の子に叱咤激励するように言うと、フィンレルの水色の瞳が何故かキラキラしてきたのは気のせいかしら?
はぁ~この男は単純なのか?それともドMの変態なの?
とにかく今フィンレルには前を向いて、執事長と侍女長がこの家のお金を不当にくすねている証拠を掴んでもらわないと!
「それはこれからの侯爵家の為ですわ。
わたくしはラファエルが生まれて変わらなければならないと思いましたのよ。
ですから旦那様も可愛いラファエルの為に変わって下さいませ!
決して遅くはないとわたくしは思いますの。
他の理由でも執事長、侍女長をクビにすることが出来ますけれど、横領に関しましては犯罪でしてよ。
ですから旦那様執事長と侍女長の横領の証拠を隠滅される前に何とか掴んで下さいませ!時間がありませんわ!」
「っ!…あ、ああわかった!早急に調べるよ」
フィンレルは私の勢いに押されて上半身を仰け反らせたけれど、了承の返事してくれた。
「それでは旦那様早速いってらっしゃいませ!」
「えっ?…あ、ああわかった。
行ってくる!ちゃんと証拠を掴んで君に報告するよ」
「ええ、お願いしますわ」
フィンレルが慌てて駆け足で部屋を出て行った。
「ああ、変態なのではなくてフィンレルはまだ子供なのだわ…」
私は部屋を出て行くフィンレルを見て一人呟いた。
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