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六十四話 敵陣?に向かう前に
しおりを挟む「ああ、そうだわベレッタ様。
その夜会の前に一度お茶会に出席されませんこと?」
メリアンナ様の突然の提案に私はえっ?と首を傾げる。
「お茶会でございますか?」
「ええ、わたくしも招待されているのですけれど、今のベレッタ様にうってつけだと思いますわ」
メリアンナ様がニッコリと意味ありげに微笑む。
「わたくしにうってつけとはどの方のお茶会でごさいますか?」
「レノバングリー公爵閣下、アンジェリカ様主催のお茶会ですわ」
「えっ?」
レノバングリー公爵閣下、アンジェリカ様って王太子殿下の元婚約者やんか!
「招待客はわたくしの他にエスフィテバン小侯爵夫人、プラグリジェン小伯爵夫人だけですのよ」
それって王太子の元婚約者だけじゃなく元側近候補の奥様たち勢揃いだよ!
てか、メリアンナ様その方たちと親しかったの?
「そのような場にわたくしなどお呼びでないのではありませんか?」
私は困惑してメリアンナ様を見る。
だって私フィンレルの妻なのよ!敵みたいなものよね?
「わたくしがアンジェリカ様にお話すれば、すぐにご招待下さると思うわ。
アンジェリカ様はとても愉快なことがお好きですからね」
メリアンナ様ニヤッと笑う。
こんな顔初めて見るわ。
私が槍玉に上げられる番?メリアンナ様面白がってる?
「仲が良い皆様のところへわたくしなどが入ってしまうと、場を乱してしまわないでしょうか?」
「ふふっそんなことはなくてよ。
というか、ベレッタ様に機会となるかもしれないからお声をかけたのよ」
「機会でございますか?」
私は真剣にメリアンナ様を見つめるとメリアンナ様が優雅にひとつ頷く。
「ええ、先程の王太子妃殿下のお話を聞いて、アンジェリカ様や他の夫人方がベレッタ様の味方に付いて下さればこんなに心強いことはないとは思わなくて?
それに王太子妃殿下は特にアンジェリカ様を苦手にしておられるようで、アンジェリカ様にはお近付きになられませんわ」
メリアンナ様の言葉に私は頭の中で唸る。
さすがにメリアンナ様!ただの可憐で愛らしい伯爵夫人ではないと思っていたけど、そこまで考えてくれていたとは!
「確かに!ですがメリアンナ様にそこまでして頂いてよろしいのでしょうか?」
「わたくしはきっかけをご用意するに過ぎませんわ。
実際に皆様にベレッタ様がお会いしてどうなるかはわたくしもわからないことですもの」
本当にメリアンナ様の言う通りだわ。
でももしアンジェリカ様たちが味方についてくれれば、エレナ様のことに関しても心強いことは間違いないわ。
今メリアンナ様が私にチャンスをくれたのだわ!
ここは私頑張らないといけないところよ!
「はい!承知しておりますわ。
メリアンナ様ご足労をおかけ致しますが、そのお茶会の件お願いしてもよろしいでしょうか?」
「ふふっベレッタ様その気になられましたね。
わたくしたち貴族は強かでなくてはなりませんわ。
今日の味方が明日の敵になったり、今日の敵が明日の味方になる世界ですが、自分の味方に出来るものはある意味何でも利用させた頂くべきなのよ。
ベレッタ様覚えておいて下さいましね。
では、わたくしからお話を通しておきますわ。
お茶会は来月を予定しておりますので、そのつもりでいて下さいませ。
この国の貴族夫人の最高峰の方々とのお茶会ですので、恥などかかないようこれからさらにビシバシとベレッタ様を鍛えていきますわよ!」
メリアンナ様がニッコリと大変良い笑顔を私に向けてきた。
「はい!」
私は気合いを入れて返事した。
私覚悟を決めたわよ~!!
あっという間に日が過ぎていよいよレノバングリー公爵、アンジェリカ様主催のお茶会の日がやってきた。
メリアンナ様とのお話の後、来月のアンジェリカ様主催のお茶会に参加するつもりだとフィンレルにすぐ話したら、凄く驚いて「ベレッタ大丈夫か?本当に大丈夫なのか?」って何度も聞かれた。
私だって上手くいくかなんてわからないわよ。
それにとても恐ろしいし緊張するわよ。
でも何の対策もせずに夜会で王太子妃殿下と会う方がもっと恐ろしいもの。
それなら先に恐ろしいことを経験して当たって砕けろでやってみた方がいいはずよ!
もし駄目だったら…私がアンジェリカ様たちに嫌われてしまったら、お先真っ暗になってしまうけど…でもラファエルの為に諦めてはいけない!後でまた対策を考えればいいんだもの。
フィンレルにそう言うと「わかった!私も頑張るよ!」と気合いを入れていた。
そうよ!この先のラファエルの為にフィンレルにも頑張ってもらわないとね。
フィンレルは元婚約者や王太子妃殿下このことで後ろ向き発言していたけど、最近はひと皮剥けてきたのか、しっかりしてきたと思うのよ。
真っ直ぐなところは変わりないけど、ただ一生懸命になるだけではなく周りをちゃんと見て、判断して的確にみんなに指示して自分だけで抱え込まないようになってきた。
とても良いことよね~。
えっと、予めお茶会の為のデイドレスも夜会舞踏会用と一緒に結構な数を用意していたから意匠は問題ないわ。
意匠は全てフィンレルの髪と瞳の色の空のようなライトブルーのドレス。
私たちは夫婦ですよってアピールする為に意匠はすべてお互いの瞳の色を入れているの。
今日はライトブルーのデイドレスよ。
デイドレスは夜会や舞踏会で着るドレスより、露出が少なくあまり華美過ぎないもの。
今流行りは七分袖らしくその隙間の見えている肌をグローブで隠すスタイルらしいの。
私は既婚者だからあまり派手になり過ぎず、でも侯爵といえば高位貴族だから地味過ぎてはいけないんだって。
私が着るデイドレスはライトブルーのエンパイアドレスというストンとしたシンプルなデザインのもの。
腰から下はシンプルで装飾はないけど、胸上から鎖骨上までレースで透けてにいて、細かな刺繍がされており、小粒なダイヤモンドが散りばめられているの。
胸元のレースはグローブとお揃いのデザインになっている。
それに私の瞳の色の琥珀色の小ぶりな宝石が付いたネックレスとイアリング。
アクセサリーは大人しめなものってリリアンナが言ってたけど、ドレスにもだけどアクセサリーにもダイヤモンドや琥珀色の宝石を使っているから、私からしたら全然大人しめではないんだけど。
こちとら前世庶民中の庶民だったから、ダイヤモンドなんて旦那が給料数ヶ月分の婚約指輪を張り込んで買ってくれたのしか持ってなかったわよ。
だから嬉しくてウキウキするというよりは、どこかにブツケてしまったらってドギマギしてるわ。
あっそれとお茶会の数日前にフィンレルが部屋に来た時に「本当は一緒に夜会に出席する前に渡そうと思っていたんだけど…これを」ってライトブルーの宝石が台座に乗った指輪をくれたのよ。
これ何カラットってくらいの大きな石がついててビビったわ!
「…ありがとうございます」
ってもちろん受け取ったわよ。
やっぱり私も女だったのね、指輪を貰ったら嬉しくてテンション上がってしまったわ。
それにフィンレルが予め用意してくれていたことも素直に嬉しかった。
何故かお互いに照れてしまったのだけど。
この世界婚約指輪とか結婚指輪を送るっていう習慣はないみたいだけど、貴族は愛する人に宝飾品を送るという習慣はあるらしいのよ。
だから夫婦円満アピールをするには良いアイテムよね。
さあ、私は敵陣に赴くような気持ちで緊張感と気合いと少しの恐怖心を持ちながら馬車に乗った。
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