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七十七話 さあ参りますわよ ②
しおりを挟む「アントニオ殿、私に紹介してくれないかい?」
そこでメリアンナ様の横に立つご主人のカエンシュルト伯爵閣下が私たちに歩み寄ってきた。
「ああ、キーファーランド様ご紹介致します。
サウスカールトン侯爵閣下はご存知のことと思いますが、私の可愛い姪は初めてございますね。
こちらがサウスカールトン侯爵夫人のベレッタにございます」
と叔父様がメリアンナ様のご主人伯爵様にフィンレルと私を紹介してくれた。
「カエンシュルト伯爵閣下、夫人久しぶりだな」
フィンレルが伯爵閣下キーファーランド様とメリアンナ様に挨拶をする。
「サウスカールトン侯爵閣下お久しぶりにございます。
そして遅くなりましたが、ご結婚、そしてご子息様の誕生おめでとうございます」
キーファランド様がお祝いの言葉を述べて、隣のメリアンナ様がカーテシーをする。
「ありがとう、閣下も夫人も顔を上げてくれたまえ。
お礼を言うのはこちらのほうだ、夫人には私の妻が大変に世話になっている。
夫人忙しい中、私の妻の為に時間を作ってくれていることに感謝申し上げる」
フィンレルがキーファーランド様のお礼に答えた後、メリアンナ様にお礼を言う。
「いえいえ、わたくしは夫人のベレッタ様と親しくさせて頂いてとても嬉しく思っておりますわ。
ベレッタ様はとても聡明でお優しく周りの方を元気にする太陽のような方ですもの。
お知り合いになれてわたくしとても幸運だったと思っておりますのよ」
メリアンナ様が私を絶賛してくれたことに周りがまたザワつく。
アンジェリカ様に招待されただけねなく、歴史ある名家であるカエンシュルト伯爵家の夫人が私と仲良くしているということに衝撃を受けているようだ。
メリアンナ様はわざと言葉に出して言ってくれたのね、本当に有り難いわ。
「夫人感謝する。
そうなんだ!ベレッタはとても聡明で優しく可愛らしくそして私や息子だけでなく私もみなに目を配ってくれる素晴らしい女性なんだ」
そこでフィンレルが勢い込んで嬉しそうに私を褒める。
ちょっと!身内であるフィンレルが私を褒めてどうするのよ!ちょっとは謙遜しないと。
「これはこれは惚気られてしまいましたな。
私もメリアンナから夫人のことを度々聞いておりますよ。
メリアンナが夫人の側にいると安心出来て元気をもらえるとよく申しております」
キーファーランド様がその鋭い目を柔らかく細めて微笑む。
「閣下わたくしからも感謝申し上げます。
メリアンナ様はとてもしっかりしておられてて、愛情深くわたくしにも接して下さいます。
そしていつも華やかで美しい微笑みをわたくしに向けて下さいます。
それにしましてもメリアンナ様は深い海のような青がとてもお似合いになりますね。
美しく愛らしい顔がより映えていらっしゃって眩しいですわ」
本当にメリアンナ様は眩しいくらいに美しいから、私はちょっと気障な表現になったけどお世辞じゃなく本心でこの言葉が出た。
するとキーファーランド様はメリアンナ様を甘く見つめてから。
「夫人嬉しいことを仰って下さいますね。
仰る通りメリアンナは年々眩しく美しくなり続ける私の女神なのです」
キーファーランド様はえっへんと胸を張ってメリアンナ様を自慢する。
こちらも奥様を絶賛する。
叔母様からメリアンナ様の旦那様はメリアンナ様に今もメロメロだと聞いていたけど本当なのね。
「ええ、本当にメリアンナ様は才色兼備な女神様ですわ」
「まあお願いですからもうやめて下さいませ。
キーファももうその辺にして」
メリアンナ様がそんな私たちを止めに入ってきた。
顔を赤くして照れているメリアンナ様は本当に可愛いかった。
それからアンジェリカ様とジークハルト様が入ってこられて、アンジェリカ様が今宵は形式ばった挨拶はなしに皆様に気楽に楽しんで頂きたいと言われて、夜会が始まった。
しばらくお酒や食事をしたりと歓談の時間になったのだけど、アンジェリカ様とジークハルト様がフィンレルと私のところへ自ら来て下さり、話をしてくれた。
アンジェリカ様が私をまるで古くから友人のように接してくれるし、ジークハルト様もフィンレル、私と和やかに話してくれるから初めの頃は私たちを遠巻きに見ていた方たちも次々と私たちに集まってきた。
中にはフィンレルの過去のことを様子を伺うようにしながらも、遠回しに言ってくる人もいたけど、フィンレルが私を甘く見つめながら私だけを愛しているという姿勢を崩さないのを見て、この場にいる人たちの私たちを見る目が変わっていった。
また元側近候補であるナイゲル様、シャルロット様夫妻、エンディナー様、マナベル様夫妻も出席していて、私はシャルロット様とマナベル様と楽しくお話させてもらった。
フィンレルは初めはナイゲル様とエンディナー様と少しのぎこちなさはあったけれど、すぐに親しく話すようになっていった。
そんな姿を見た周りはより一層フィンレルに対して見る目を変えたようで、次々とフィンレルと私に話しかけてきた。
おまけにフィンレルはこの夜会をきっかけにいくつかの家と商談をまとめてくるという成果も出してくれた。
本当にフィンレルは仕事に関しては文句なしに優秀なのね。
「ベレッタ私とダンスを踊ってくれるかい?」
招待客のみなさんとの歓談が落ち着いてきた時にフィンレルが私をダンスに誘ってきた。
少し頭を下げて左手を胸の前にして右手を私に差し出してきた。
フィンレルのその優雅で美しい様にまた場がザワつく。
「フィンレル様もちろんですわ」
私はフィンレルの手の上に自分の手を乗せる。
それから二人でフロアの中央に行ってダンスを踊った。
フィンレルが甘く熱い視線で私を見てくるのを、参加している夫人や令嬢たちが溜息混じりに見ていたり、歓声が起こっているのがわかって凄く緊張したけど、私はちゃんと練習通り踊れていたと思う。
そして一曲踊り終るとどこからとも拍手の音が聞こえてきて、どんどんその拍手の輪が広がっていた。
周りを見ると、アンジェリカ様やメリアンナ様、叔父様叔母様も笑顔で拍手してくれた。
何だがドラマのハッピーエンドのシーンみたいだな、フィンレルと私が主役みたいだけどそれでいいのか?と私が思っていると。
「ベレッタとても美しいステップでまるで軽やかな蝶のようで素晴らしかったよ」
フィンレルが私の耳に息がかかりそうなくらいに口を近付けて囁いた。
「っ!!…」
私は顔が真っ赤になる。
でもそれで場がより一層盛り上がった。
この後またいろんな参加者があちらから近寄ってきてくれて、いろんな方と笑顔で歓談することが出来た。
叔父様と叔母様はいろんな方たちと歓談しながらも、私たちのことを気遣って見守ってくれていた。
アンジェリカ様とジークハルト様も私たちにいろんな方を紹介して下さって、みなさんとに和やかに過ごすことが出来たの。
こんな感じで無事に夜会は終わった。
この夜会がきっかけでフィンレルと私は相思相愛で愛し合っている。
レノバングリー公爵家とサウスカールトン侯爵家は雪解けだ。
サウスカールトン侯爵家はレノバングリー公爵家だけでなくエステフィバン侯爵家、プラグリジェン伯爵家、カエンシュルト伯爵家とも仲は良好だという噂がすぐに広まっていった。
本当にアンジェリカ様のお陰よね。
感謝してもしきれないわ。
これで大本番である国王主催の夜会も何とか乗り切れるかもと私は思ったわ。
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