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九十話 あっ!これはヤバいやつですわ ③
しおりを挟む私がニッコリと挑むように笑って王太子殿下と王太子妃殿下は最近上手くいっているのかしら?と暗に問うように言うと、エレナ様はより一層険しく顔を歪める。
「何が言いたいのよ!」
「いえね、わたくしフィンレルから王太子殿下が側妃様を娶られることが正式に決まったと最近お聞きしましたのよ」
私の言葉にフローリアが驚愕に目を見開き、振り返ってエレナ様の方を見る。
あらフローリアは知らなかったのね、エレナ様はフローリアにそのことを言ってなかったのか。
もう正式に決まっていることとはいえ、本当は王太子妃であっても、発表前に人に話してはいけないから、エレナ様がフローリアに言わなかったのは正解で、今私が言ったことは駄目なことなのよねぇ~。
まあ私はエレナ様を煽る為にあえてなのだけど、エレナ様は自分にとって望ましいことではないから、フローリアに話していないのだろう。
「なっ!フィンレルがあんたなんかにそんなこと言うはずないでしょ!
私とフィンレルの仲なのよ!」
エレナ様が少し私に近付いてきて声を張り上げて怒鳴る。
「あら、そんなことはありませんわ。
フィンレルは夜会の前にこんな手紙が王太子妃殿下から届いて、困っているとわたくしにその手紙を渡してきたのですよ…」
私は覚えている手紙の内容を話していく。
ベレッタの記憶力が良くて良かったわ、一言一句エレナ様の手紙の内容を告げる。
エレナ様は顔を真っ赤にしてワナワナと震える。
「ち、違うわ!フィンレルはそんなことしないわ!
あんだが勝手に手紙を盗み読みしたんでしょ!」
「例えわたくしが手紙を盗み読みしたとして、それはフィンレルがわたくしに王太子妃殿下から手紙が届いたと告げなければ、わたくしは知るよしもないことではありませんこと?
フィンレルは意味がわからないと申しておりましたのよ」
エレナ様がハッと今気付いたという顔をした後、拳を握り締めさらに顔を真っ赤にさせる。
「フィンレルはね!今でも私のことを愛しているのよ!
あんたみたいな地味なお飾り妻なんて相手にする訳ないでしょ!ふざけないで!」
エレナ様が激昂してまた前に進み出てくる。
あまりの怒りっぷりに後の騎士たちもフローリアも呆然としている。
「わたくしお飾りではありませんわ。
愛しいフィンレルとの子ラファエルも生まれましたしね。
ラファエルは髪の色も瞳の色もフィンレルそのままで顔もそっくりでそれはそれは美しいまさに天使なのですのよ」
まだ子に恵まれないエレナ様に私凄い煽っているわね。
本当なら不妊の女性に絶対こんなこと言わないわ。
でもこんなことをしたエレナ様のことを私は許せないないもの。
「なっ!何て女なの!顔もブスなら性格もブスなのね!
私に子が出来ないからって何勝ち誇っているのよ!」
エレナ様の目が三角になっているわ!可愛らしい見た目なのに、どんどん醜くくなっている。
「フィンレルが言ってましたわ。
アカデミー時代はエレナ様に恋してると思っていた…でもそれは恋じゃなかった…無邪気で屈託なく笑うエレナ様が自分にない自由な世界で生きているのが羨ましくて、憧れていただけなんだ…アカデミー卒業後すぐにそのことに気付いたって。
今はまったく気持ちが残っていないから、いきなり手紙が届いて迷惑だって」
フィンレルは迷惑だとは言ってないけど、煽るのに言わせてもらうわ、フィンレルごめんね。
「何ですってぇ~!
そんな訳ないでしょ!私はね、この世界のヒロインなのよ!ヒロイン!
あんたはゲームにも登場しないモブですらないくせに!
あんたが攻略者のフィンレルに愛される訳ないじゃない!
攻略者たちに愛されるのはヒロインのこの私だけなのよぉ!」
エレナ様が発狂したようにゲームの世界の設定?を叫ぶ。
アンジェリカ様の言う通りエレナ様も転生者なのね。
でも我を見失っているのね、フローリアも騎士たちも信じられないものを見る目でエレナ様を見ているわ。
「あの~もぶ?こーりゃくしゃ?それからヒロインでしたか…。
ヒロインはわかりますわ、物語の世界の主人公の女性のことですわよね?
ですが他のことが何のことかわからないのですけれど、フローリアも騎士様たちも同じみたいですわ。
何のことか教えて下さらない?」
私がニッコリとして言うと、エレナ様はしまった!という顔をして、フローリアと騎士たちを見回したけど、ここでエレナ様は開き直ったみたい。
「フンッ!ゲームのモブでもない女はそりゃ知らないわよね。
教えて上げるわ。
この世界はね、私の前世の日本で作られたゲームの世界なのよ!
その世界はヒロインエレナの為の世界なの。
だからヒロインの私がギルを選んだから、ギルはあの生意気なアンジェリカより私を選んだの。
それで私は王太子妃になったのよ。
あんたがフィンレルと結婚して侯爵夫人になったからって、私がその気になればフィンレルだって私を選ぶのよ!」
「フィンレルが王太子妃殿下を?それは有り得ませんわね」
私が言うと、エレナ様がドドッと音を立てるようなくらい私の側まで走ってきて、私の頬を張った。
フローリアだけでなくお前もかよ!痛いわよ!
「何なの!どういうことよ!」
「こちらこそお伺いしたいですわ。
王太子妃殿下がその気になったらフィンレルが殿下を選ぶとはどういうことですの?」
「私がその気になれば私がフィンレルと結婚することが出来る!ってことよ!そんなこともわからないの?!」
えええという顔を私はする。
「王太子殿下と離縁してフィンレルと再婚すると仰っているのですか?
そんなこと有り得ませんわ。
まず王族は余程のことがなければ離縁は許されておりません。
それに例えもし離縁出来たとしても、王族の臣下であるいち侯爵のフィンレルが王太子妃殿下だった方と再婚など出来るはずがございません。
例えばですけれど、王太子妃殿下とフィンレルが身分を捨て平民になり、駆け落ちなどをしたとしても見逃されるはずがないのですわ。
王太子妃殿下はもう王族になられたですから、わたくしが申し上げていることおわかりになりますよね?」
私が憐れむように言うとエレナ様は呆然とした顔になった。
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