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十四話 国王、称えられる
しおりを挟む邸は急に決まった晩餐会の準備で、大わらわで大変だったようだ。領民たち、料理人、使用人たちが総出で短い時間の中で準備してくれたのだろう。何とか晩餐会に食事や飲み物が揃ったようだ。
夜になって晩餐会の為にミランと部屋を出ると正装の白い騎士服を着たケングレットとアルフが立っていた。
「「……」」
ケングレットとアルフがポカンとした表情で俺を見る。
「二人ともどうしたの?」
俺が首を傾げるとケングレットとアルフは顔を赤くさせて
「その…リリアナ様、お美しいです」
「お嬢様本当にお美しいです…」
2人が口々に褒めてくれる。
「2人ともお世辞が上手いわね」
笑いながら言うと
「お嬢様、お世辞ではないと思います!」
ミランがキッパリ言う。
「あらそうなの?…どうもありがとう」
照れるわ。
こういうこと慣れてないのよ。
美しいなんて前の世で
「サラは本当は美しい姫だよ」
と両親や兄にしか言われたことがなかった。
「リリアナ様!エスコートさせて頂いてよろしいでしょうか?」
ケングレットが顔を赤くしながら手を差し出してくる。
「ケングレットお願いします」
俺はにこやかにケングレットの手を取った。でもたぶん俺も顔赤くなってるし心の臓がバクバクいってるわ。
男性にエスコートしてもらうなんて人生で初めてだから。
藍色の髪に同じ色の瞳を持つケングレットはあらためて見ると筋肉のついた均整の取れた身体をしていて顔も鋭い瞳のラルフより大きい瞳の甘い感じの美形だ。
「ミラン様もお美しいです。
私がエスコートさせて頂いてよろしいでしょうか?」
アルフがミランに手を差し出す。
アルフも茶色の髪に同じ色の瞳の垂れ目な優しい顔をしたこれまた美形だ。
「アルフ様ありがとうございます。
お願いします」
アルフに手を差し出したミランも顔を赤くさせている。
照れてるのね!可愛い!
ケングレットにエスコートしてもらいながらアルフ、ミランたちと共に、晩餐会の会場に入ると一斉に歓声が起こり凄い拍手が起こった。
えっ?何?何?とキョロキョロしてしまう。
「今回の作戦の最大の功労者はお嬢様ですからみんな祝福してるんですよ!」
ケングレットに言われて俺は慌てて
「皆様有り難く存じます」
と慌ててカーテシーをした。
「それではお嬢様、晩餐会の開会の宣言お願いします」
近寄ってきたグェンに言われてグラスを渡された。俺は未成年だからジュースが中に入っていた。
何て言ったらいいのか?と思ったが…えっと!
「皆様!この度の魔物討伐ご苦労様でした。
皆様お一人お一人の活躍があり長引くことなく被害も最小限で済みましたことハーベント家を代表して感謝申し上げます。
今夜は無礼講です!思いっきり楽しんで下さい。
乾杯!」
ニコッと笑うと「乾杯!」と声が上がり、その後全員から大きな拍手が起こった。
それを見ながら本当に良かったなと染々と思った。
始まってすぐ隊長のシュテフに挨拶に向かう。
「シュテフ隊長様、この度は本当にご苦労様でした!そして作戦成功に導いて頂き感謝申し上げます」
「ハーベント令嬢とんでもございません。今回の作戦成功はハーベント令嬢とラルフ殿のお陰でございます」
上下白のスーツのような意匠に白いローブを纏った魔術師の正装の隊長シュテフは空色の髪と薄い青色の瞳に白の意匠がピッタリとあってより精悍さを増していて威厳を醸し出している。
彼は魔術師であるが、騎士としても相当な腕があるそうで、ガッシリとした体格で白の騎士服も似合いそうだけど、魔術師の白のローブも似合っている。
「一人や二人で成功したのではありませんわ。わたくしたちが来るまで隊長様のお陰で発生してから堪えて下さいましたし、作戦を的確に指示しみなで協力したからですわ」
「そう言って頂けて有り難き幸せにございます」
隊長が少し笑んだ。
キリッとした顔の隊長が初めて笑みを見せた。
「隊長様はお酒は飲まれるんですか?」
「はっ、飲めますが…」
こういう人は底なしだったりするんだよな。
「本日は無礼講でございます!心ゆくまで楽しんで下さいませ。
どうぞこれからもよろしくお願い致します」
俺が右手を差し出すと少し驚いた表情してから
「こちらこそでございます」
少し笑んで両手で俺の右手を優しく包むように握ってきた。俺ももう片手を添えて両手で握手した。
それから俺はみんな一人一人を労う為に挨拶していった。
「作戦中のリリアナ様カッコ良かったです」
「凛々しくて男みたいでした」
「お嬢様がまるで鬼神に見えましたよ」
等、それ褒め言葉かというようなことも言われた。あの時は素に戻って口調がリリアナではなかったもんな。
俺は微笑みで誤魔化したけど…
みんな笑顔で心良く言葉を交わしてくれて和やかな時間が過ぎていく。
目眩まし魔法で活躍したゼノンに挨拶に向かい活躍と貢献してくれたことにお礼を言うと
「ぼ、僕なんて大した取り柄もない魔力も並みの魔術師です…ハーベント令嬢が的確に指示して下さったからです」
「ゼノン、そんなことありませんわ!
確かに魔術師にとって魔力の量は大事なのかもしれません。
でもゼノンはゼノンに出来ることでわたくしたちを助けてくれ、貢献して下さったのよ。
ゼノンがいたからわたくしたち瘴気の沼に向かった者たちは魔物からの攻撃をほとんど受けることなく、防ぐことが出来たのです。
そのことは魔術師として誇るべきよ!
ゼノンありがとう。とても助かりました」
「ハーベント令嬢、ありがとうございます」
ゼノンは瞳を潤ませる。
彼も今までいろいろと辛かったのかもしれないな。
そして今も魔術師団の中での立場も良いものではないのかもしれない。
彼は真っ直ぐで真面目な青年だ。
「ゼノンは魔術師になりたくてなったのかしら?」
「はい!僕の祖父が王国魔術師団に所属していて、祖父に憧れて魔術師になろうと思ったのです。祖父程の魔力はありませんが…」
ゼノンは嬉しそうに祖父のことを話してくれた。
「ゼノンは頑張って魔術師になったのですね」
そう言うとゼノンが顔の前で手を大きく振って
「ぼ、僕など魔術師の中でも劣等生ですから…」
「ゼノンそんなこと言うものではありませんわ!
貴方には貴重な魔法が使えるじゃない?
属性魔法だけでなく補助魔法も本当に大切なものですよ。
今日それを証明したではありませんか。
なりたかった魔術師になれたのは貴方が努力したからよ。
そしてこれからどうなるかは貴方次第ではないかしら?
誰かと比べるのではなく、ゼノンはゼノンよ」
「…ハーベント令嬢、本当にありがとうございます」
ゼノンが瞳を潤ませている。
「ふふっ、もうゼノンとは仲間よ!リリアナと呼んでちょうだい」
俺の言葉にゼノンは瞳を輝かせた。
「はい!それでは…リリアナ様」
「はい!これからもよろしくね」
ゼノンとも両手で握手した。
魔術師、騎士、冒険者たちが今日の出来事を口々に話しながらどんどんお酒が進んで飲みながらみんなで盛り上がっいく。
ゲオングじいさんもみんなを見守る様に笑顔でいてくれた。
いつの間にかケングレットやアルフも輪の中へ引っ張られていった。
アルフは成人しているが、ケングレットは身長も高くガッシリとしていて見た目成人に見えるけど、俺と同じ歳なんだけどな、酒さえ飲まなければ今日は無礼講だからまあいいか。
俺が前にいた世界もこの世界も一応成人してからでないと酒は飲んではいけないことになってるが、そこは案外緩かったりするからケングレットも勧められているようだけど断っているようだ。
酒をまだ飲めない俺はミランと隅でそれをにこやかに見ていた。
そこへラルフと茶色の髪に薄灰色の瞳をした男が近寄ってきた。
「お嬢さ~ん」
ラルフがヘラヘラしながら俺に話しかけてきた。
「何ですか!ラルフ様もう酔っているんですか?」
俺が少しムッとしながらラルフを見上げると
「俺はいくら飲んでも酔わないよ~しいて言えばサラとの運命の出会いに酔ってる」
「ちょっ!…」
隣にいるミランに聞かれて焦る。
「お嬢様サラとは誰のことですか?」
ミランはラルフが俺に抱きついてきた時近くにいなかったからサラという話は知らないはず。
「い、いやっ!ラルフ様は酔ってるんじゃないかしら?」
ハハハと俺は笑って誤魔化そうとするが
「ま~ったく酔ってないぜ!サラこそ惚けるのか」
ラルフがニヤッと笑う。
「ラルフ様やはり少し酔ってらっしゃるようだわ。少し風に当たりに行きましょうか?」
「ああ、そうしよう。冒険者仲間のロランも一緒にいいか?」
ラルフにロランと言われた男は俺をサラ様と言った男だ。
茶色の髪の薄灰色の瞳、顔は違うが前の世でずっと俺の側にいた従者メテオと同じ髪の色と瞳だ。
「お嬢様」
と言ったロランのはにかんだ顔が本当にメテオみたいでドキッとした。
「ミラン、ラルフ様ロラン様と庭で涼んでくるわ」
「お嬢様私も一緒に行きます」
ミランがラルフとロランを睨み警戒しながら言う。
「大丈夫よ。三人で行ってくるからミランはここにいて」
「でもお嬢様…」
ミランは納得していないようだが、俺はラルフとロランと話をしなければならない。
「ミランお願い!少しの時間よ。
行ってくるわ」
「わかりました。何かお嬢様にしたら許しませんよ」
ミランがラルフとロランを見ながら渋々了承してくれた。
俺はラルフとロランを連れて邸の中庭に出た。
「いったいどういうこと?」
俺がラルフとロランを見据えて言う。
「やっと会えたよサラ…俺はずっとずっとお前とまた出会えることを願ってたんだ!本当にまた会えるなんて…」
ラルフが嬉しそうに瞳を輝かせている。
後ろのロランは目に涙を溜めて俺を見てる。本当にウェンなのか?従者メテオなのか?
「サラ様…私は貴方のメテオです」
ロランが俺の目の前まできて片足を折って屈み右手を胸に当てハッキリとメテオと名乗った。
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