次こそは平和な世でのんびり気楽に生きていくつもりだったのに何でか悪役令嬢として生きていくことになってしまった!

asamurasaki

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二十六話 国王、王宮へ

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夢にリリアナが現れて話してから2日後、俺は両親とラルフたちみんなで王都へ向かった。

領地のグェン初め使用人たちが別れを惜しんでくれたが、「また必ず来るから」と約束して俺たちは出発した。

ゲオングじいさんに王都の邸に来て欲しいと俺と両親で説得したらゲオングじいさんが『王都入りを許されるのなら』と了承してくれた。
お父様が陛下に直談判して許されたらゲオングじいさんも遅れて王都にくることになる。

通常馬車で3日くらいの旅だったが、お母様の体調を見ながらだったのでお父様が気遣って多めに休憩を挟んだので1日多くかかり4日で王都のタウンハウスに着いた。

邸に着いたら、お兄様のカーチェスが出迎えてくれたが、お兄様以外の使用人たちはみんな俺を見て目を真ん丸にして驚いていた。

まあ、痩せたリリアナは別人みたいになってるからな。

出迎えてくれたお兄様がきごちないけど、笑顔で俺を迎えてくれた。

「リリアナ、おかえり。
体調は大丈夫か?」

「お兄様ただいま戻りました。
ありがとうございます!学院は大丈夫なのですか?」

「今日は休みを取った」

お兄様の言葉に驚いた。

「まあ、わざわざ休みを取って頂いてお兄様お出迎えありがとうございます!嬉しいですわ」

俺が笑って言うと

「…い、いや、父上と母上の出迎えでもあるからな」

お兄様が俺から目を逸らせながら少し口をモゴモゴさせている。
可愛いところがあるじゃないか。

部屋にはミランと王都に残っていたリリアナ専属だったユーラも一緒に部屋に入った。
部屋は2年前と変わらず綺麗に整えられていた。

「お嬢様、おかえりなさいませ。
お待ちしておりました」

「ただいま、ユーラ」

俺が笑顔を見せるとユーラは顔を赤く染めて

「お嬢様、お痩せになって本当に美しくなられて…」

「ありがとう。あのままじゃ本当に身体に良くなったからね。
ユーラこれからまたお世話になるけど、よろしくね」

「はい!よろしくお願いします。
それにしても護衛の方が増えているんですね」

ユーラはケングレットだけじゃなくアルフ、ラルフ、ロランがいることに驚いている。

「まあ、領地にいる時に知り合ってね。
わたくしが引き抜いたのよ」

「あの領地のスタンピードの時におられたS級冒険者とA級冒険者の方だとか?凄いですね」

領地でスタンピードが起こったことは王都のうちの使用人たちはみんな知ってるだろうからね。

「そうね、とても心強いわ」

「今日はご主人様、奥様、お嬢様もお疲れだと思いますからゆっくりなさって下さいませ」

「ありがとう」


王都へ戻ってから1週間後に王宮に行くことをお父様から聞かされた。
お兄様が度々帰ってくるようになった。

「お兄様、学院お休みじゃないのに大丈夫なのですか?」

俺が聞くと

「ああ、そんなに遠くないからな。
それに来週から寮を出てうちから通うことにしたんだ」

「まあ、そうなんですの?嬉しいですわお兄様」

「そ、そうか?私もお母様のことが心配だからな」

お兄様もお母様のことをお父様から聞いて心配しているんだな。

「そうですわね。これからはわたくしもお母様をお支えしたいと思ってます」

お兄様は目を見開く。

「リリアナは本当に変わったのだな…」

「ええ、お母様の体調が悪くなったのはわたくしのことも原因の一つでありますので、これからは心入れ替えてお母様の為に…いえ、お母様だけじゃなくハーベント家の為に尽くして参りたいと思ってます」

「リリアナお前のせいだけではない、私も寮に逃げていたようなものだ。
私もこれからは母上を支えていくし、リリアナお前のことも守るよ」

「お兄様!」

俺は目を見開いて驚く。

「お前のことは聞いた。これからお前にどんな危険が及ぶかもわからん。家にいるのだから私も出来ることはしていくつもりだ」

お兄様まで俺のこと思ってくれてるのか。

「嬉しいですわ!ありがとうございますお兄様!」

俺は思わずお兄様に抱きついた。

「…えっ?リリアナ?」

お兄様の顔が真っ赤だ。

「ごめんなさい!突然、重かったですか?」

「い、いやそうじゃない!今日のところは寮に戻らねばならない。それじゃあな」

お兄様はスタスタと早足で自分の部屋へと戻って行った。

「若様もお嬢様のことが心配なのですね」

ミランが言ったが、お兄様はそんなに早く心を開いてくれたのだろうか?



とうとう国王陛下謁見の日がやってきた。
何故かお兄様も「絶対一緒に行く」と言い張り、お父様とお兄様と共に王宮に行くことになった。

王族の方は国王陛下、王妃殿下、王太子殿下がいらっしゃるらしい。
王太子と会わないといけないのか…さて相手はどう出てくるかだな。

国王陛下が俺の専属となったラルフとロランにも会いたいと言ったそうで、俺の護衛のケングレット、アルフと共に向かうことになった。

ラルフはS級冒険者、ロランはA級冒険者だ。
国王陛下が興味を持つことは当たり前といえば、当たり前だ。

当日、俺は専属のミラン、ユーラだけでなく他の侍女たち4人がかりで湯浴みで身体を磨かれ、全身隈なくマッサージされて、お母様が選んだお母様と俺の髪の色の薄紫のドレスを用意されていた。

コルセットを2人がかりで締められドレスを着せてもらい、髪は緩く結い上げられてお父様とお兄様の髪の色のプラチナの髪飾りを付けられて、化粧はなるべく薄くしてくれと頼んでいたのでなるべく薄くしてくれた。

準備が終わった頃にはもう疲れてしまった。
貴族令嬢って大変だなと思った。

「お嬢様、お美しいです」

ミランが満面の笑みで言う。

「ミランありがとう、でも慣れないからやっぱり苦しいわ…」

俺は苦笑いする。

「本当に奥様に勝るとも劣らない美ししさでごさいますよ」

いつもはお母様の専属侍女であるモナがニコニコしながら言う。

「モナもありがとう」

「王太子殿下も驚かれますね。
お嬢様の美しさに見惚れられること間違いなしです」

ユーラも気分が高揚しているのか興奮気味だ。
正直、王太子のこと等どうでもいい。
以前のリリアナのことを散々酷い言葉で罵倒していたんだからな。
でも、ミラン以外の侍女たちはリリアナが王太子の婚約者になったことを喜んでると思ってるはずだから余計なことは言わないでおこう。

「そうかしら」

準備が終わって部屋を出たらラルフ、ロラン、ゲオング、アルフがすぐ外に立っていた。

「お待たせしましたね」

「「「「……」」」」

反応がない。どうした?

「どうかしましたか?」

「リリアナ様、とてもお美しいです!」

ケングレットがちょっと顔を赤くして俺に向かって言う。
領地での晩餐会の時より豪華なドレスを着ているからみんな驚いてるのか?
特にラルフとロランが間抜けなくらい口をポカンとさせている。

「ラルフ、ロランどうしたのですか?」

「…い、いやご主人様たちがお待ちだ」

ラルフは俺から目を逸らしながらぶっきらぼうに言った。

「似合ってないか…まあそうだわね…」

「そ、そんなことありません!あまりにお美しくて!」

ロランが慌てて叫ぶように言う。

「ありがとう!お世辞でも嬉しいわ」

「「「「……」」」」

その呆れた残念なものを見る目線で無言になるのやめてくれないかな?いくら俺でも傷つくぞ!

「リリアナ様参りましょう」

ケングレットが手を差し出してくれたのを俺が取るとチッと舌打ちが聞こえてきた。
ラルフか?まあいいやケングレットにエスコートしてもらいながら階下に下りていく。


そこにはお父様、お母様、お兄様がいた。

「まあ~リリーちゃん何て美しいのかしら
素敵よ~凄く似合ってるわ」

お母様が俺の近くまでやってきて嬉しそうに俺を見てくる。

「お母様ありがとうございます。お母様が選んで下さったドレスのお陰です」

「リリーちゃん痩せたから大急ぎで作らせたけど、間に合って良かったわ」

「似合っておりますか?」

お父様とお兄様の方を見ながら言うと

「リリーちゃん!とっても美しいよ!ファナの若い頃そっくりだよ」

お父様が目を輝かせている。
ファナとはお母様のことだ。
お母様はステファナという名だ。

「まさか!クロットガスの紫の薔薇と言われるお母様には及びませんよ」

俺が本心で言うと

「そんなことはない!本当に母上のように美しい!」

お兄様が力説する。どうした?お兄様?

「お父様もお兄様もありがとうございます」

カーテシーする。

「まあ、こんな美しいカーテシーまでちゃんと出来るようになってリリーちゃんはハーベント家の誇りですわ」

お母様が俺の両手を握って感激したように顔を綻ばせる。
大袈裟ではないかと思うが、有り難く受け取っておこう。

「ありがとうございます。お母様
ハーベント家の人間として恥ずかしくないよう行ってまいります」

「リリーちゃん気をつけてね。
いつもの貴方で十分ハーベント家の誇りなのですから」

お母様がかけてくれる言葉は本心でリリアナを可愛い娘だと思ってくれているのが伝わってくる。

「はい!」

笑顔でお母様に返事するとお母様は優雅に頷いてくれた。

「さあ、リリーちゃん行こうか」

お父様に手を差し出されていよいよ王宮に向かう。



カーチェスside


私はハーベント公爵家の嫡男として生まれた。

父上は外交のトップを担う大臣で国外にいることが多く、あまり邸にいない人だった。

なので母上が領地のことも家のこともすべて引き受けて領地に行ったり、邸でも執務室で仕事、社交でお茶会に夜会と忙しい日々を送り私はほとんど使用人たちに育ててもらったようなものだった。

寂しくないと言えば嘘になるが、貴族とはそういうものだろうと思っていた。

そんな私が5歳の時に妹が出来た。
生まれたばかりの妹はクシャクシャな顔ながら母上の薄紫の髪を引き継いでいて、開いた瞳は父上の紫色をしていた。

私が恐る恐る指を伸ばすと小さい可愛らしい手でキュッと私の指を握ってくれた。

その時に家族が増えたんだ。妹は女性だから私が守らなければならないと思ったものだ。

妹のリリアナは半年も経つと私を見てキャッキャッと手足をバタバタさせて全身で喜びを表しているようで、こんなに可愛いものなのかと思い私にとって大切なは宝物になった。

2歳くらいまではいつも私の後をついて回る可愛らしい妹だった。
その無邪気な笑顔に何度も癒されたし、
「おにーちゃま」と言って抱きついてくるリリアナが可愛くて仕方なかった。

しかし無邪気で可愛らしいリリアナは自我が芽生えてくるにつれて変わっていった。
気に入らないと癇癪を起こしたり、使用人たちに我儘を言うようになった。
今から思えば両親に構ってもらえない寂しさからだったとわかるが、当時はあんなに可愛かった妹の変貌に私は落胆した。

初めの頃は「ハーベント家の子女として使用人にも尊敬される存在にならないと駄目だ」「使用人にそんな態度をしていてはいけない」と注意していたが。

「おにーさまはわたくしのことなにもわかってくれない」

と私が味方になってくれなかったのが気に入らなかったのか、逆に私に怒りを向けるようになり、そのうち私は何も言わなくなった。

父上と母上はあまりリリアナと一緒にいれないことに引け目を感じているのか、リリアナをひたすら甘やかした。
望むものは何でも買い与えて使用人たちに対しての態度も何も言わなかった。

リリアナも父上と母上にだけは笑顔を見せて甘えていた。

そのことでリリアナはより我儘に傲慢にそして苛烈になっていった。
自分は特別な存在だと言い、女王様気取りで周りを言いなりにさせていった。 

3歳くらいから暴飲暴食を繰り返して5歳になった時は見苦しいくらいの肥満になっていて、あの可愛かったリリアナはどこにもいなくなった。

でもそれを諫めたり気付かせられる者はもうリリアナの周りにはいなくなっていた。
父上と母上はそんなリリアナでも可愛がり甘やかしていた。

私はそんなリリアナを見ていたくなくて距離を取るようになった。 

貴族学院に入ると、邸から通える距離にあるのに寮住いするようになった。

リリアナが10歳になった時に王太子殿下との婚約が決まった。
私はそのことでリリアナが余計に自分を特別な存在と認識して周りにどんな言動をし、迷惑をかけてしまうのかと危惧したが、私はそれでも厄介事に関わりたくなくて逃げたのだ。

兄として諫めることもせずになるべくリリアナと顔を合わせないようにした。

しかしリリアナは王太子殿下との婚約を成立してから体調が良くないからと領地に行くと言い出して、私が久しぶりに邸に帰ってきた時にはもうリリアナの姿はなかった。

あれだけ領地を田舎だの何もないわたくしには相応しくない所だのと言っていたのにどういうことだろう?と思ったが、
その時私はリリアナの姿を見えないことにホッと安心してしまったのだ。

それから2年、リリアナは一度も王都に戻ってくることはなく、領地でどんな生活をしてるいのかも知らなかった。

そんなある日、領地でスタンピードが発生したと領地を任されている執事長のグェンから連絡が入った。

父上は国外にいて母上も忙しく行ける状態ではなく、とらあえず私が領主代理人として馬で急いで領地から早馬でやってきた騎士と私の護衛と従者と共に領地に向かった。

領地に着いて出迎えたリリアナに驚いた。
あんなに醜く太っていたのに痩せてそしてにこやかに礼儀正しく私を声をかけてきたのだ。

『これがあのリリアナか?別人か?』

と思った。

「身体の為に痩せたのですよ」
と朗らかな顔で笑うリリアナが昔の可愛かったリリアナと重なり、私は呆気に取られるのとどういうことだろう?という気持ちで上手く接することが出来なかった。

リリアナはいったいどうしてしまったんだろうと思った。

しかし馬で王都から飛ばしてきた私を気遣う言葉まで言い、そしてグェンにも使用人にもにこやかにしているリリアナを見て夢でも見てるのかと思った。


しかし私がいた2日間、今までのことがなかったかのように私の側に来て学院での話を聞きたがったり、食事を一緒にしましょうと誘ってきて昔と同じように「お兄様、お兄様」と私の後をついてきた。

使用人たちにも今までとはまったく違っていて、笑顔でお礼を言ったりしていて領地の使用人たち全員に慕われているようだ。 

グェンに聞いても

「お嬢様はお転婆なとこがおありですが、どの使用人に対して変わらぬ態度で庭師や料理人にも毎日お礼を言われ、みなに大変慕われておいでです」

と王都にいた頃とは別人なのではないかと思うくらいの評価だった。

王都から一緒に領地に来ている護衛のケングレットと侍女のミランとはまるで友達のように楽しそうに会話していて、王都にいた頃とはまったく違っていた。

まるで狐に摘まれた心境だっだか、リリアナが「わたくしは今までの自分を反省し生まれ変わる為にここに来たのです」
「お兄様にも凄く感謝しております」と言っていた。

まだ信じられない気持ちはあったが、あの可愛いリリアナに戻ってくれたことが嬉しかった。

私は領地に2日滞在して王都に戻ったのだが、3ヶ月程した頃に王都で『薄紫色の髪の美少女が聖魔法を使い土地を浄化していた』と噂になっていて、それは学院で生活している私の耳にも入ってくる程だった。

薄紫色の髪など平民どころか貴族でも母上とリリアナしかいない。
まさかリリアナなはずはない。
リリアナは火、水、風属性を持って生まれてきたはずだ。
訳がわからない。

でもその噂はあっという間に広まり、国王陛下の耳にも入り、父上が急遽呼び戻される事態になった。

そして父上と母上がすぐに領地へリリアナに会いに行った。

その後、リリアナが王都に戻ってきた。
王都の使用人たちはさぞ驚いたことだろう。
痩せて美しくなっただけでなく柔らかい笑顔を見せて使用人たちにもにこやかに接しているのだから。

リリアナが戻ってきてから両親、リリアナと応接室で話し合いをしてリリアナの話を聞いた。

驚愕する内容だったが、父上も母上も何としてでもリリアナをハーベント家で守ると言い、リリアナも父上と母上だけでなくお兄様とも一緒に暮らしたいと言った。

領地での2年間でリリアナに何があったのか詳しくはわからないが、私はリリアナが生まれた時に『私がリリアナを守るんだ』という気持ちが甦ってきた。

王都へ戻ってきてからのリリアナは母上を気遣い、使用人にも笑顔で感謝の言葉を常に言い労う姿を見て本当に生まれ変わったのだと思った。

リリアナが戻ってきてからの邸は活気に満ちていていつも賑やかで私たち家族も使用人たちみなも笑顔が絶えないものとなった。
そんなことは今までになかったことだ。

私も変わらなければと、強く思った。











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