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四十二話 国王、衝撃の出会い続きに混乱してそして歓喜する
しおりを挟む俺の腕の中にいたレンがパッと飛び立ち赤い髪の男に向かって飛び込んでいきながら
『ワァー、オットーーーーーーーー』
とレンが叫んだ。
「…!オットだと?!」
俺も思わず叫んでしまった。
オットだと?!
前の世でロランことメテオの孤児仲間で俺の護衛となったオットだと言うのか?
店主である赤い髪の男もロランたちみんなも俺の叫び声にポカンと口を開けている。
『オットーオットーオットーーー』
レンはオットと連呼しながら店主の胸にしがみついている。
「えっ?…えっ?」
オットと呼ばれた店主が突然胸に飛び込んできたレンと俺を交互に見ながらオロオロしている。
「…ほ、本当に…オットなのか!」
ロランが凄い勢いでカウンターの前のまで行き、ダンッとカウンターを両手で叩き、被り付くように身体を前に乗り出している。
その勢いに店主は驚いて上半身を仰け反らせる。
「…あの、あの……」
店主は言葉にならないように驚きと困惑の表情になっている。
「え~どういうことですか~?」
ジョシュアも驚きに目を見開いて俺を覗き込んでくる。
「…レンが俺の前の世の臣下のオットと言ったんだ」
「えっ?…!…前の世の臣下?…えっ?嘘…サラ様?…!サラ様なのですか!?」
俺の言葉に驚愕の表情でサラ様と言った!
本当にオットなのか!
いや、レンが言ったからそうなんたろうけど。
ウェン、メテオ、マンデランばかりかオットまでこの世界に生まれ変わってきたのか?
「オットーーーっ」
ロランがカウンターに乗り上げんばかりに店主の片腕を掴んだ。
「あの、…えっ?どういうことですか?」
店主が戸惑って目をパチパチさせている。
「オット!俺はメテオだよ!お前の仲間のメテオ!」
興奮したロランが店主に向かい叫ぶ。
「ええええ!サラ様にメテオも!?」
店主がロラン以上の大きな声で叫ぶ。
「あのどういうこと?」
セシルティアが何事かとジョシュアの顔を見る。
「セシル後でゆっくり話すから…」
「うん…」
ジョシュアに言われたセシルティアは困惑の表情を見せながらも頷く。
俺はこの時、俺の前の世のことなど知らないセシルティアがいることを完全に失念していた。
それほどオットとの再会に驚いていたのだ。
「…本当にオットなの?」
俺は驚きと本当にこんなことが?という気持ちで心臓をドクドクとさせながら店主に尋ねた。
「…はい」
店主が目を潤ませながら俺を見て頷く。
「オットーーーー」
ついにロランはカウンターを飛び越えて店主に抱きついた!
「…わっ!」
店主は驚きに身を固くさせて呆然としている。
先に店主に抱きついていたレンも身体をビクッとさせている。
「ちょっと騒がしいけど、ワイルどうしたの?」
カウンターの後ろの扉がギィっとゆっくり開いて店主と同じ肩までの赤い髪の青白い顔をした女性が顔を覗かせた。
かなり痩せていて折れそうなくらいだ。
「…姉さん!起き上がって大丈夫なのか?」
ワイルと呼ばれた店主がレンとロランに抱きつかれているので、首だけを後ろに向けて心配そうな顔をして姉を見つめる。
「えっ?…ええ、今は大丈夫よ…お客様がいらしてるのね。
いらっしゃいませ。失礼しました」
赤い髪のオットの姉が、男に抱きつかれている弟を見て驚きながらも俺たちに挨拶と謝罪をしてきた。
「…お姉さ、んですが?騒がしくして申し訳ありません」
俺は危うくお姉様と言いかけて相手は平民だったと気付いてお姉さんと言い、謝罪すると。
「とんでもありません。
ですが…何かありましたか?」
俺はオットの姉にどう説明したものか、頭を巡らせていると
「最近この店を知ってとても気に入って店主さんとよく話をさせてもらってるんですよ~それで今日は友達も連れてきて騒がしくてなってしまってごめんなさい~」
ジョシュアが気を利かせてオットの姉に説明して謝罪してくれた。
「…あ、そうなんだよ姉さん…ここでは何ですから、店の看板をしまってきますので奥で詳しくお話しましょうか?」
戸惑いながらもオットが提案してくれた。
「そうだったの……あっ…」
その時、女性が振らついた。
「…危ない!」
俺が叫んだと同時に店主に抱きついていたロランが素早く女性を支えた。
「姉さん!」
オットが慌てて歩み寄り支える。
「お姉さんをすぐに寝かせてあげて下さい。ジョシュアとセシルティア看板をしまってきてくれる?」
カウンターがあるので側に行くことは出来ないが俺は店主とジョシュア、セシルティアに指示する。
「「はい!」」
ジョシュアとセシルティアがすぐに返事して外の看板へと向かう。
「すみません…看板はお願いします。
入口入ったところに置いて頂ければ大丈夫ですので…私は姉を部屋に連れて行きます」
「申し訳ありません…」
オットの姉が謝罪してオットに連れられて扉の向こうに行ってしまった。
姉は病弱と聞いていたが、驚く施程痩せていて、本当に顔色が悪い。
立っているのもやっとという感じだった。
俺の指示でジョシュアとセシルティアが一端表に出て看板を持って帰ってきた。
しばらくしてオットが戻ってきて
「お待たせしました」
カウンターの右端が持ち上げられるようになっているようで、右手で軽々と持ち上げてこちらにやってきて、そのまま入口の方へ行き、ガチャと鍵を締めた。
「営業中なのに申し訳ないわね」
俺はオットの顔を見ながら言う。
「とんでもありません!サラ様にお会い出来たのです。
店を営業している場合ではありません」
オットは俺の顔を目を潤ませながら口を一文字に結び、涙を堪えるように見てくる。
ああ、茶色の髪に茶色の瞳をしたオットとは見た目が背が高くガッシリしているところと茶色の瞳は似ているが、顔は全然違う。
オットは細めの目の鋭い顔をしていたが、今の彼は赤い髪に大きめの茶色の瞳が優しげに見える柔らかな印象を持たせる顔をしている。
見た目は違うが、表情で間違いなくオットなんだと実感する。
俺も泣きそうになったが、すでにオイオイと大泣きしているロランを見て俺の涙は引っ込んだ。
「お姉さんは大丈夫なのかしら?」
俺は青白い顔をして扉のところで振らついたオットの姉が心配になる。
「多分、店が騒がしくて何かあったのか心配になって、起きてきたのだと思います。
少しベッドで休めば楽になると思います」
オットが俺の目を真剣に見つめてくる。
『サラサマ!ボクナオセル』
「えっ?治せる?レンが?」
思わず聞こえたレンの言葉を俺が復唱するようにレンに聞くと
「へ?…治せる…レン…?」
オットが俺を見て驚きと困惑で怪訝な表情になっている。
セシルティアはレンが神獣であることは知らせている。
それを知ってもセシルティアは「リリアナ様なら有り得ますね」と言って大して驚くことなくすんなりと受け入れた。
これは言っても大丈夫だろうし、レンが治せると言っているのだからオットにも教えるべきだろう。
「えっと…この仔猫はレンだ。
後でちゃんと話すが、レンが治せると言うならお姉さんを治せると思う」
「この仔猫が…そんな馬鹿な…今までいろんな医療師に姉さんを診せてきたんです。
でも原因不明で、治すことが出来なかったのに…それにレンって…?」
オットが信じられないという顔で俺を見る。
『マリョクカイロネジレテルダケダカラスグダヨ。
ダイジョウブ』
「魔力かいろ?が捻れてるだけ?」
俺はレンの言葉がわからず首を傾げる。
『サラサマソウデス。
コノセカイノニンゲン、ケッカントオナジデカラダジュウマリョクガナガレルカイロガアルデス。
ケツエキナガスポンプノヤクワリハシンゾウ、マリョクナガスポンプノヤクワリハ、オナカ二アル。
マホウツカウトキニ、ヘソノシタデマリョクカンジルノハ、ソノタメ。
オネエサンハ、オナカノチカクノカイロノトコロガネジレテテ、マリョクナガレナクテ、カラダヨワイ』
「レンはその魔力回路?の捻れを治せるというのか?」
『ハイー』
「そしたらオットのお姉さんは元気になるのか?」
『スグゲンキ二ナルトオモウ』
「本当に?」
「あの、リリアナ様レンは何と言っているんですか?」
ロランが鼻をズビッと啜ってから興味深げに聞いてきた。
大泣きしていたから目が真っ赤だ。
「この世界の人間には血液が流れる血管と同じように身体全身に魔力が流れる魔力回路があるそうだ。
その魔力回路の魔力全身に流すポンプの役目をしているのが、お腹にあってオットのお姉さんはお腹の近くの回路が捻れていて魔力がちゃんと流れなくて体調が悪いそうだ。
それをレンは治せると言ってる」
「そんな!…この仔猫が治せると言うのですか!?」
俺の説明にオットが信じられないという顔をしている。
「後でちゃんと説明するが、この子は仔猫ではない。
神獣だ。レンが治せると言うなら本当だと思うわ」
俺はオットを真剣に見つめる。
「こ、この仔猫が神獣?…」
オットが自分の胸に貼り付いているレンを繁々と見つめる。
「そう。オット、今からわたくしとレンをお姉さんの部屋に案内して頂ける?」
「い、いや…しかし」
オットは戸惑ってすぐ答えを出せずにいるようだ。
突然そんなことを言われて信じろという方が難しい。
でもあの凄くしんどそうなお姉さんをどうにか出来るならしてあげたい。
「今は信じて欲しいとしか言えないわ。
お姉さんを悪いようにしないと誓うから試させてもらえないかしら?」
俺の言葉にオットがゴクッと唾を飲み込む。
「本当に本当に…姉は治るんでしょうか?ずっと幼い頃から少し歩いただけでも直ぐに心臓が苦しくなって、なかなか起き上がれなかったのです…」
オットは今までのお姉さんのことを思い出したのか、苦しげに顔を顰めている。
今までいろんな医療師にお姉様を診せてきたと言っていた。
オットは自分のことよりお姉さんのことを一番に考えて、必死に働きながらあちこちで医療師を探して診てもらっていたのだろう。
オットが貴族学院にも通わなかったのはそんな事情があったからかもしれない。
それならまずはお姉さんをレンに治してもらうことを優先させたい。
「オット!俺を信じてくれ」
俺はあえて前の世の言葉遣いでオットを説得することにした。
セシルティアがいるからリリアナを意識した喋り方にしていたが、ここはオットに信用してもらいたい。
「…っ!サラ様…サラ様がそうおっしゃるなら…お願いします!」
「大丈夫だ。お姉様はきっと治る」
俺はオットに向かって笑ってみせた。
オットはそんな俺を見て泣きそうに顔をくしゃっとさせた。
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