次こそは平和な世でのんびり気楽に生きていくつもりだったのに何でか悪役令嬢として生きていくことになってしまった!

asamurasaki

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五十二話 国王、ヒロインと初めて会話する

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「リリアナ・ハーベント!あんた何で痩せてるのよ!?」

学院の庭園内にあるガゼボでテレサとメリアンナを待っている時。
そこに突然甲高い大声が聞こえた。
見なくても言ってることでわかる!絶対フローラだ!
避けていたのにフローラから俺に接触してきた!

えーっと、いろいろと突っ込みたい!
まず、俺とフローラでは公爵家と男爵家で俺の方が身分が高い。
フローラが断りもなしに俺に話しかけること、敬称もないことは不敬に当たる。
学院内では王族、貴族、平民すべて同じ生徒として扱われるべきという法律があるのだが、それは教師側が身分で生徒に対する態度を変えたり、扱いを変えてはいけないというのがこの国の法律だ。
また教師側を守る為のものもある。
対する生徒が例え王族であっても学生の間は教師の方が権限を持っていることなど。
教師は王族、貴族、平民すべての生徒を家名ではなく名前で男性はケングレットくん、女性はリリアナさんという呼び方をする。
家名だと兄弟姉妹が同時に通っていると同じ家名になるから名前で呼ぶことになっている。
そして教師が生徒を律する為の言動であるならば不敬等に当たらないとされている。

生徒たちは卒業したら当り前に身分制度のある社会で生きていくのだから生徒たちはあくまで節度ある態度で接するのが当然で学院は社会に出るまでそういった部分の予行演習の場でもある。

そもそも貴族であれば幼い頃から家庭教師がついて身分制度のことも学んでいて当然なのである。
まあ、フローラは平民として育ってきたとしても学院に編入するまでに男爵家で生活しているのだから、最低限は知ってて当然なんだけど。

それに自己紹介もなくいきなり「リリアナ・ハーベント…」だし。

おまけに第一声から「あんた何で痩せてるのよ!?」という失礼極まりないことを言っていて侮辱されてるよな?不敬罪に加え侮辱罪でも即罰せられるにことなんだが。

というか真っ先に聞きたいことが何故痩せたのか?なのか。
でもあのデビュタントの時も俺を見て最初ポカンとしていたものな。
今まで五回のやり直しでもリリアナはどんなことをしても痩せなかったから、フローラの中でも痩せるはずがないと思っていたんだろうな。

それに普段の俺も人のことは言えないが、淑女であるべき貴族令嬢が出す声量ではない。

まあ、フローラからしたら全然気にしてないんだろうけど…何だっけ?ゲームの世界の主人公、ヒロインらしいから何をしても咎められないと思っているんだろうな。

実際五回の人生でやりたい放題やっても彼女の思い通りになったんだからな。

フローラの第一声でリリアナにも前の記憶があるんだろうと思われているんだろうな。リリアが言ってた転生者というやつか。
俺もそうだと思われている。

フローラの第一声でサッとケングレット、アルフ、ミランが俺とフローラの間に立とうとしたが、俺はそれを片手で制する。
ケングレットたちは仕方なしという雰囲気を表に出しながら元の位置に留まっている。

本当に会いたくなかったのにな。
まあ、いつかは対峙しなくてはいけない相手だけども今はラルフもロランもいないし。
俺が一人になるのを狙われてたのかな?
フローラが光属性、聖魔法の他に何かあったら感じるのだろうか?
今の俺に対処出来るだろうか?
そんなことを考えているけど、今実際近くまで来て話しかけられた。
無視する訳にはいかないな。

ハァ~っと溜息をつきそうになるのを堪えて座ったまま扇で口元を覆い、声がしたフローラの方をゆっくりと振り返る。

「あら?どちら様かしら?」

すっ惚けたことを言ってみる。
フローラも一人だった。
これは本当に俺が一人になるのを狙ってやってきたな。

「はあ?何言ってるの!あんたも転生者のくせに!」

フローラは俺の他にケングレットたちがいるけど、他にいないから取り繕うこともしないようだ。
ケングレットは攻略者なんだけど、五回目のことがあるからもう敵認定しているのだろうか?
フローラは俺にも前の記憶があることを疑っていない。
でもそれに乗る気はない。

「あの~本当にどなたかわからないのですけど、まず名を名乗って下さらない?」

俺は微笑みを貼り付けてフローラを見やる。
そんな俺と目が合ってフローラの眉がピクッと動いて口を半開きにさせてしばらく固まった。

どうしたんだろ?
フローラからは何かを感じることは今のところない。
俺は何だろう?と首を傾げる。

フローラはすぐに気を持ち直したのか顔を真っ赤にして可愛い顔なのにそれに不釣り合いなキツく目を吊り上げ口元を歪ませる。

「何なのよ!わかってるんでしょ!
私はフローラよ!
それより私が聞いたことに答えなさいよ!」

今まで痩せたことがないリリアナが痩せている。
ゲームの世界と違っていることが余程気になっているんだろうな。

さて、どう答えようかな。

「わたくしがどうして痩せたのかでしたね?
食事制限をして運動をしたからですわ」

俺が微笑んだまま表情を変えず平然と言うと、フローラはさらに苛立たしげに一層目を吊り上げて身体を怒りでブルブル震わせる。

「なっ、舐めてるの?!どうやって痩せたのか聞いてるんじゃないのよ!
何で痩せれたのか聞いてるのよ!
今までと違うわ!バグってるってこと?今までそんなことなかったのに!」

ん?ばぐってるとは?

「ばぐってるとは?聞いたことないのですけど、どういう意味ですの?」

フローラはチッと舌打ちする。
舌打ちに驚くが、顔に出さないようにする。
どんどんと怒りが増幅しているようだ。

「惚けないでよ!わかってるんでしょ!何なのよ!」

「フローラ様でしたっけ?惚けて等いませんわ。
本当にわからないのですもの、教えて下さらない?」

そこにラルフとロランの姿が見えてきた。
走ってはいないが、早歩きで厳しい顔でフローラを睨みながら戻ってきている。

それにフローラが気づき、ラルフとロランの方を向く。

「ええー二人とも凄いイケメン!!」

いけめん?またわからない言葉だ。

ラルフとロランが俺とフローラの間に立つ。

「リリアナ様ただいま戻りました」

恐らくフローラの姿が見えて、テレサとメリアンナを食堂に待機させてラルフとロランだけ戻ってきたのだろう。

「あら、おかえり」

俺がラルフとロランに微笑みかけると

「ちょっと護衛はケングレット様ともう一人…あれ?ケングレット様以外違うわ…どうしてここまで違うのよ?…」

ラルフとロランが現れてフローラの声音が変わった。
凄いな。ここまで変えられるのかというくらい違う。

ラルフとロランが俺の方からフローラの方に身体を向ける。
フローラがラルフの顔を見てわかりやすく頬を赤く染めた。
そして何だかクネクネしながら。

「あの、貴方様お名前は?」

とラルフに聞いてきた。

「私は名乗るほどの者ではございません」

ラルフは俺に背中を向けているからどんな表情をしているのかわからないが、声は抑揚のない何も気持ちがこもっていないものだ。

「私はフローラ・サイアンと申します。
そんなことをおっしゃらずにお名前を教えてくださらない?」

さっきまでとはまるで別人のように両手を胸の前に組んで頬を染めて目をウルウルさせ、上目遣いでラルフを見つめる。

先程までのフローラを見ていなかったら
可愛らしい美少女が庇護欲をそそる表情でラルフを見つめている。
さぞや可愛いと思うだろうなと俺は心の中で思う。

「申し訳ございませんが、私はこれからリリアナ様をお連れしなくてはなりません。
失礼致します」

そう言ってフローラに一切取り合わず、ラルフは俺の方に向き直る。

「リリアナ様参りましょうか?」

ラルフに手を差し伸べられ俺は自分の手をラルフの手に乗せ立ち上がる。

「それではフローラ様失礼致しますわ」

俺たちはフローラを置いて振り返らずその場から去った。
ラルフは名前を名乗らなかった。
普通なら今は平民のいち護衛のラルフと男爵令嬢のフローラならフローラの方が身分が上だ。
そのフローラから名を聞かれたなら名乗るのが礼儀であるが、ラルフはそれを断った。

俺がラルフの主であるから俺が名乗る必要はないと言えば名乗らなくてもいいのだが、俺は何も言わなかった。

普通なら不敬に当たるが、ラルフは元は隣国の侯爵家の子息だが家を出たので今は平民だけど、彼はS級冒険者だ。
それならラルフの方が身分は上になるんだから別に名乗らなくてもいいのか。

「リリアナ?」

ラルフにエスコートされながら食堂へ向かい歩きながらつらつらとそんなことを考えていたらラルフに呼ばれた。

「ラルフ、どうして名を名乗らなかったの?」

「どうしてあんな奴に俺が名乗らなければならないんだ?どうせリリアナに失礼なこと言ってたんだろ!あの女」

ラルフを見上げて顔を見ると、すごく不機嫌です!と顔に書いてあった。
俺は思わずプッと吹き出す。

「ラルフにはお見通しなのね」

「俺に気持ち悪い態度と口調で話しかけてきたが、俺はあの女の本性を知っているし、リリアナの敵だ」

ラルフはまだ憮然としている。

「フフッでもラルフは今、平民のいち護衛よ。S級冒険者だから違うか。
でもそれはフローラには内緒にしないといけないから、いち平民として男爵令嬢に名前を聞かれたら答えなくてはいけないんじゃない?」

「あの女はフローラ・サイアンと名乗ったが、男爵家とは言わなかった。
俺は平民だから爵名を言われても身分などわからんからいいんだよ」

「まあ、そうなの?
でも貴方に興味を持ったようだから名前などすぐ知られると思うわよ」

俺はニヤリとラルフに笑いかけた。

「別に知られても構わんよ。
俺から名乗りたくなかっただけだからな」

「そうなのね」

俺が前を向くと

「初めてあの女と間近で会ったが、魔力はそこそこ多いようだが、他には何も感じなかったな。
リリアナはどうだった?」

「わたくしもよ。
何か感じるかも?と思ったけど何も感じなかったわ」

「そうか、俺たちが来るまでどんな話をしてたんだ?」

ラルフが俺の横顔を見ながら聞いてくる。

「どうしてわたくしが痩せているのかいきなり聞いてきたのよ。
惚けておいたけど」

「なるほど…今までと違うことを問い正したかったのか」

「そうでしょうね~予想はしてたけど、思った以上に常識がなく傍若無人だっわ。
ラルフの時と全然違ったわよ」

俺は笑いが込み上げてきてまたフフッと笑ってしまった。

「あの女は男なら誰でもいいんじゃないのか?」

「ラルフを見て顔を赤くしていたから貴方のことを気に入ったんじゃなくて?」

俺はラルフの顔を見上げる。

「うげっ」

ラルフは露骨に嫌な顔をした。
それに俺は我慢出来ずハハハと声を出して笑ってしまった。










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