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15話
『王太子妃や王妃はみんなの手本にならないといけない存在でしょう? だから、文字もお手本にできるようにしたいの』
そう言っていたクリスティーナは、自らの文字にわずかな歪みすら許さなかった。
だが宝石の注文書の文字は違う。整ってはいるが、最後の瞬間に気が抜けたのだろう。ほんのわずかな歪みを許してしまっている。
じっくりと検分すれば誰かが気づいたかもしれない。だが注文書はもともと、印章があれば成立する。印章が偽造されたものではないか確かめはしても、署名にまで気を回さなかったのだろう。
そしてクリスティーナにかかわりのない人物が注文書を提出してきたのならまだしも、提出したのは彼女の側仕え。もっとも身近な人物が、彼女の印章と署名がされた注文書を持ってきた。そして印章も間違いなく彼女のものなのだから、疑問を抱くはずもない。
「……気性が荒くなって、文字まで荒れたか」
可能性はじゅうぶんにある。だがもしもそうでなかったら――誰かが書類を偽造したのだとしたら。その可能性があるのなら、王として調べないわけにはいかない。
ラファエルは侍従を呼び、騎士数人と、それからクリスティーナの側仕えをしていた者を呼ぶように命じた。
王妃の側仕えなのだから、当然それに見合った人数が選ばれる。だがクリスティーナの気性が荒くなってからというもの、耐えられないからと配属先の変更を申し出る者が増え、今では三人だけとなっていた。
「これで全員か」
部屋に並ぶ三人の侍女を順に見ながら、侍従に確認する。返ってきた頷きに、小さくため息を漏らした。
世話をするのが彼女たちの仕事だからといって、無理強いするわけにはいかない。嫌々で働かれても、双方共によくない。そう思って届いた申請書は受理していたのだが、いつの間にこんなに少なくなっていたのか。
これでは身の回りの世話もじゅうぶんにできていなかっただろう。
「言ってくれれば、いくらでも増やしたのに」
少しだけ胸に浮かんだ後悔に、かすかなつぶやきを漏らす。その声は誰の耳にも届かなかったのだろう。侍従が「陛下?」と不思議そうに首を傾げた。
「なんでもない。……今回どうして呼ばれたのかは、わかっているか」
侍女たちは顔を見合わせ、見当もつかないというように困惑した目を向けてきた。
「……本当にわからないのか」
「はい……も、もしかしてクリスティーナ様の死に不審な点があった、とかでしょうか。ですが間違いなく、私たちは何も――」
「そうではない。君たちが持ってきたという注文書だが、不審な点が見受けられた。それについて、何か知らないか聞きたいだけだ」
「私たちは何も……」
「え、ええ。クリスティーナ様に渡されたものを、そのまま届けただけなので」
三人目の侍女も彼女たちの言葉に同意するように頷く。
どこか焦っているような彼女たちに目をやりながら、ラファエルはまたもや小さくため息を落とした。
王妃の側仕えは城で住み込みで働いている。昼夜問わず、呼ばれればすぐに駆け付けられるように。
だからこの三人の部屋も、城内にある。
「――陛下、失礼します」
いくつかの質問を侍女たちに投げかけていると、ノックのあとに騎士が数人、入ってきた。
侍女たちが来る前に呼び、命令を下していた騎士たちだ。
そう言っていたクリスティーナは、自らの文字にわずかな歪みすら許さなかった。
だが宝石の注文書の文字は違う。整ってはいるが、最後の瞬間に気が抜けたのだろう。ほんのわずかな歪みを許してしまっている。
じっくりと検分すれば誰かが気づいたかもしれない。だが注文書はもともと、印章があれば成立する。印章が偽造されたものではないか確かめはしても、署名にまで気を回さなかったのだろう。
そしてクリスティーナにかかわりのない人物が注文書を提出してきたのならまだしも、提出したのは彼女の側仕え。もっとも身近な人物が、彼女の印章と署名がされた注文書を持ってきた。そして印章も間違いなく彼女のものなのだから、疑問を抱くはずもない。
「……気性が荒くなって、文字まで荒れたか」
可能性はじゅうぶんにある。だがもしもそうでなかったら――誰かが書類を偽造したのだとしたら。その可能性があるのなら、王として調べないわけにはいかない。
ラファエルは侍従を呼び、騎士数人と、それからクリスティーナの側仕えをしていた者を呼ぶように命じた。
王妃の側仕えなのだから、当然それに見合った人数が選ばれる。だがクリスティーナの気性が荒くなってからというもの、耐えられないからと配属先の変更を申し出る者が増え、今では三人だけとなっていた。
「これで全員か」
部屋に並ぶ三人の侍女を順に見ながら、侍従に確認する。返ってきた頷きに、小さくため息を漏らした。
世話をするのが彼女たちの仕事だからといって、無理強いするわけにはいかない。嫌々で働かれても、双方共によくない。そう思って届いた申請書は受理していたのだが、いつの間にこんなに少なくなっていたのか。
これでは身の回りの世話もじゅうぶんにできていなかっただろう。
「言ってくれれば、いくらでも増やしたのに」
少しだけ胸に浮かんだ後悔に、かすかなつぶやきを漏らす。その声は誰の耳にも届かなかったのだろう。侍従が「陛下?」と不思議そうに首を傾げた。
「なんでもない。……今回どうして呼ばれたのかは、わかっているか」
侍女たちは顔を見合わせ、見当もつかないというように困惑した目を向けてきた。
「……本当にわからないのか」
「はい……も、もしかしてクリスティーナ様の死に不審な点があった、とかでしょうか。ですが間違いなく、私たちは何も――」
「そうではない。君たちが持ってきたという注文書だが、不審な点が見受けられた。それについて、何か知らないか聞きたいだけだ」
「私たちは何も……」
「え、ええ。クリスティーナ様に渡されたものを、そのまま届けただけなので」
三人目の侍女も彼女たちの言葉に同意するように頷く。
どこか焦っているような彼女たちに目をやりながら、ラファエルはまたもや小さくため息を落とした。
王妃の側仕えは城で住み込みで働いている。昼夜問わず、呼ばれればすぐに駆け付けられるように。
だからこの三人の部屋も、城内にある。
「――陛下、失礼します」
いくつかの質問を侍女たちに投げかけていると、ノックのあとに騎士が数人、入ってきた。
侍女たちが来る前に呼び、命令を下していた騎士たちだ。
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