もふもふうさぎの元最強魔術師~無実追放されたオレ。本当は草うめぇぇして引きこもっていたいけど……。草ぱわーで大事な人を守り、地上を目指す~

花月夜れん

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第四草

26・精霊術師の探し人

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 もう一度同じ場所から侵入する。

「二人が戦ってる」

 ヨキからは二人の様子が見えたようだ。
 すぐにオレも視認した。無事だが、距離を詰められている。術師は基本近接攻撃には向かない。チャミちゃんもたぶんそうだろう。

「ねぇ、……ユーリ。もしかして、なんだけど」
「なんだ?」
「あの子……」

 オレはそれに答える前に、チャミちゃんに襲いかかる怪物、烏賊に似た体と人の顔を持つヤツに氷の魔術を放った。
 しかしヨキが急上昇し、狙いが外れた。

「ユーリ!?」
「チャミちゃんが危ないんだ! 先に何とかしないとだろ」
「でも、あの子は――」

 オレにとって、何も知らない彼女よりもチャミちゃんを助ける方が大切なんだ。

「助けられないの?」
「……、ああなってしまえばもとに戻らない」
「嘘だ! ボクが何とかしてみせる。ユーリは黙ってて」
「ヨキっ!!」

 守るものを見誤るとすべてを失うぞ。オレの様に。
 だが、出来ることならやってみて欲しいと思うオレもいた。
 じーちゃんが言ってたことを覆す事が出来るのか。
 もし出来たなら、地上を目指さなくてもよくなる。
 チャミちゃんと、ここで彼女の探してる人を見つける旅をゆっくりとする事だって出来る。

「チャミ!!」

 ヨキがチャミちゃんのところに突進する。
 先ほど戦った二体に比べるとずいぶん小さい怪物は、こちらの狙いに気がついたのか、チャミちゃんに黒い液体をはきだしながら遠ざかった。
 チャミちゃんが怯んだ隙に長い腕で攻撃を加えて――。

「ヨキ、オレはおりるぞ。アイツの相手出来るか? チャミちゃんに回復術をかけたらそっちに加勢する」

 チャミちゃんも立っていた。たぶん、あのあたりなら足場はあるんだろう。

「わかった。でもボクだけでもきっと何とかしてみせるよ!!」

 ヨキは自信満々にそう言った。
 いつも所在なさげに、不安そうにしている彼女からは想像できない程、何かが変わっている。

「無理するな!」

 オレはヨキの背から飛び降りチャミちゃんの倒れている場所に向かった。

「チャミちゃん!!」

 お腹を抱えるようにして倒れているチャミちゃんを抱き起こす。
 さっさと回復術をかけようとしたが、この姿では出来ない事に気がついた。
 急いでうさぎに戻らないと。そう思った時だった。

「ウィル……ド……、いたんですね。よかっ……。会いたかっ……」

 ドクンと心臓が鳴った。

 彼女が口にしたのは、ユーリではなく、魔術師として生きたオレの名前ウィルバード。
 なぜ、彼女がオレ魔術師の名前を知っているんだ?
 まさか、生還者になるように向こうから監視者を送り込んだのか……。
 チャミちゃんの目が閉じる。人の姿からうさぎの姿に戻った。
 今は気にしている場合ではなかった。
 オレもうさぎの姿に戻り、チャミちゃんに回復術をかけた。
 念のため、黒い液体を洗い流し解毒術もかけておいた。
 すぐにチャミちゃんは意識を取り戻す。

「……あれ、ユーリ?」
「良かった、チャミちゃん!」

 バッと飛び上がり、様子を確かめていた。

「あそこ、はやく行かないと」

 ヨキ達が戦っている場所は上空だ。だから、ヨキが戻ってこないとどうしようもない。

「ヨキが何とかするって、少し様子を見よう。チャミちゃんこの人達は?」
「あ……、たぶん捕まってた人達かと。私はこの姿と人の姿で腕の太さが違うから変化して手を拘束から抜いたんです」
「そうか」

 この足場がいつまであるかわからない。
 オレは手持ちのフライングエアーグラスを何枚か口にして、浮遊の魔術を彼らにかけておいた。
 これで、もしいまこの場所がなくなっても落下して死ぬということはなくなるはずだ。

「おーい、ヨキ!!」

 オレはヨキを呼んでみた。
 こちらにくる様子が見られない。

「あの、ユーリ。もう一人誰かヨキの背中に乗っているんですか?」
「……いや、オレだけだったよ」
「そう……ですか」

 チャミちゃんの探している人が誰なのか。なんの目的で探しているのかを聞くまではあの姿になるのはやめよう。
 ごめんね。オレはチャミちゃんを怪物にさせず、無事送り届けられたら、それだけでいいんだ。
 誰かを探すようにチャミちゃんはキョロキョロと見回していた。
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