もふもふうさぎの元最強魔術師~無実追放されたオレ。本当は草うめぇぇして引きこもっていたいけど……。草ぱわーで大事な人を守り、地上を目指す~

花月夜れん

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第五草

41・森の守護者

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「ねー、ユーリの中に三人もいるの?」
「あぁ」

 駆けながらヨキが聞いてくる。

「ふーん。つかれない? 三人もいて」
「別に……」

 そう言えばたまに気になっていた頭痛が今はなくなっている。いつからだろう。

「それはフェリのおかげなの」

 少し目をそらしながらフェリが言う。

「不要な記憶を整理しといたの」
「なっ」

 最初の街で話した時か。あの何かが抜け落ちる感じ。

「何勝手なことを――」

 もしフェリが消した記憶の中に大事な記憶があったら……。チャミちゃんの人の姿の時の記憶だったら……。オレは言い様のない怒りがわいていた。

「人の持てる記憶には限界があるなの。……もう限界だったの。壊れる前に、整理しただけ」
「……」

 最後、人だった時、頭痛の度に確かに苦しんでいた。
 婚約者レイアにその姿を見せないように、隠れたりもしていた。
 あれは、そうか……限界だったのか。

「どうしても大事だと思ってる事は残してるなの。ただ、老いた頃の記憶はほぼ消したなの」
「そうか」

 道理で若い頃の記憶しかないわけだ。二人目までのオレはどうやって亡くなったのか、わからなくなっている。
 色々思う事はあるが、とりあえずオレの為にとしてくれたことだ。感謝はしておかないとな。

「ありがとう。でも次は聞いてからしてくれよ」
「……わかったなの」

 フェリはぷいと顔を背けたあと姿を消してしまった。気分を悪くしてしまっただろうか。

「見えたぞ!」

 ウィナが声を出す。オレの目ではまだチャミちゃんは見えない。

「どこだ」
「ほら、あそこだ」

 ウィルにもすでに見えているようだ。
 耳を傾けるとチャミちゃんの声がした。なるほど、二人の目はオレよりだいぶいいみたいだ。

「ユーリ、ボク先に行くよ」

 ドンッと大きな音をさせてヨキが飛び出す。ヨキの脚力はどうなってるんだ。どんどん人離れしていってないかと少し心配になる。

「うわー、最悪だな」
「だな」

 ウィルとウィナが揃って苦い顔をしていた。

「何だ? 何が最悪なんだ」
「いまうさぎ……チャミが戦ってるヤツ」
「あれはこの森の守護者だ」

 近付いて見えてくる。緑色ふさふさの親玉。

「アレを倒しちゃうと森が死んじゃうんだよなぁー」
「はぁっ!?」
「見つけたら、すぐ逃げないとなんだけど遅そうね」
「完全にターゲットになってるよな」

 オレは足を早めた。

「チャミちゃん、止まってくれー!!」

 森が死ぬとか、どれだけ恨まれるかわかったもんじゃない。
 急いで止めないと。

「ユーリ!? どうしてここに!!」
「え!?」

 チャミちゃんが驚きながらもこちらに駆け寄ってくる。

「休んでないとだめじゃないですか!! 全部私がしますから!」

 後ろからはふさふさ親玉が追いかけてきていて、意味を理解している場合ではなさそうだった。

「チャミちゃん、オレは別に休んでなくて平気だ。とりあえず、今はアイツを何とかするのが先だろ」

 目が真っ赤に光っている。完全に怒っていそうな、この森の守護者とやらを何とか――、出来るんだろうか。
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