22 / 97
前編
息苦しさと朝の散歩
しおりを挟む
「メイラ? あぁ、ある」
あるんだ! って、ちがーう! 聞きたいのはそこじゃなくて。
「キレイな人だよね」
「ん、あぁ、そうだな。美人だ」
あ、……聞くんじゃなかったかなと後悔が襲ってくる。
「それにいいヤツだし、何より大事な人間だ」
え? もしかして、外見だけじゃなくて、本当に中身まで知ってて?
「だから、レース頑張らないと駄目なんだ」
「そ、そうなんだ」
私はブランケットをぎゅっと掴む。聞くんじゃなかった――。
「それがどうした?」
「ううん、何でもない」
私はガバッと勢いよく顔をブランケットで隠す。ちょっと息苦しい。
「明日はレースの練習だね。頑張ろう」
「あぁ、……んー、まあいいか。おやすみ」
まあいいか?
アルテが何か言おうとしていたけど、私は頭の中を整理するのにいっぱいいっぱいで、ぎゅっと目を閉じて夢に落ちるのを待っていた。
外見じゃなくて、ちゃんと中身を見てくれる人がいた。だけどその人は、私じゃない人を見てて――。
どうしようもなく、妹姫が羨ましくて――。私はつらい気持ちに蓋をする。
そうだ、応援するって、決めたじゃない。ちゃんと応援して、それで腕輪を返してもらって、それで――――。
それで、お別れしなきゃ。
◆
城の一室で今日も僕はイライラする。
「見つかったか!?」
「ダメです! この街にはやはり」
変わらない報告にげんなりする。
すると、クロネが一歩前に出て、頭を下げた。
「アルベルト様! エリーナ様はもしかしたら隣街に移動されたのかもしれません」
「何? クロネには何か思い当たる場所があるのか!」
「はい、ですが――」
「すぐに行くぞ!!」
クロネが次の言葉を発する前に僕は言葉を被せて命令を出す。
必ず見つける。僕の大切な水の妖精。彼女を幸せに出きるのは僕だけだ。
◇
「ねぇ、アルテ? ハイエアートは?」
「ん、昼からでいいだろう。こっちだ」
朝御飯を済ませたあと、アルテに連れられて街を散歩中だ。
「何処に行くの?」
「もうすぐ着く」
アルテの言葉が少ない気がする。私は、少し早歩きの彼に合わせるためにたまに走って追いかける。
いったいどこに連れていくつもりなのだろう。
「おーい、フラン。いいか?」
「はーい、おはよう。アルテっと、そっちがあの彼女ね」
くすくすと笑いながら、金色の髪の女の人が顔を出す。
背が高くてカッコいいのに、青い瞳で優しく笑み、可愛さも兼ね備える美人さんだ。
「すごい……、キレイなかたですね」
「あら、ありがとう。可愛い子ね! 妖精ちゃんみたい」
「いいから、あとはまかせる」
「はいはい、どうぞ。入ってー」
「あの?」
「私はフラン、フランチェスカよ。だからフラン。よろしくね」
名前を教えてもらったので私も、名前を告げる。
「エリーナです。よろしくお願いします」
あるんだ! って、ちがーう! 聞きたいのはそこじゃなくて。
「キレイな人だよね」
「ん、あぁ、そうだな。美人だ」
あ、……聞くんじゃなかったかなと後悔が襲ってくる。
「それにいいヤツだし、何より大事な人間だ」
え? もしかして、外見だけじゃなくて、本当に中身まで知ってて?
「だから、レース頑張らないと駄目なんだ」
「そ、そうなんだ」
私はブランケットをぎゅっと掴む。聞くんじゃなかった――。
「それがどうした?」
「ううん、何でもない」
私はガバッと勢いよく顔をブランケットで隠す。ちょっと息苦しい。
「明日はレースの練習だね。頑張ろう」
「あぁ、……んー、まあいいか。おやすみ」
まあいいか?
アルテが何か言おうとしていたけど、私は頭の中を整理するのにいっぱいいっぱいで、ぎゅっと目を閉じて夢に落ちるのを待っていた。
外見じゃなくて、ちゃんと中身を見てくれる人がいた。だけどその人は、私じゃない人を見てて――。
どうしようもなく、妹姫が羨ましくて――。私はつらい気持ちに蓋をする。
そうだ、応援するって、決めたじゃない。ちゃんと応援して、それで腕輪を返してもらって、それで――――。
それで、お別れしなきゃ。
◆
城の一室で今日も僕はイライラする。
「見つかったか!?」
「ダメです! この街にはやはり」
変わらない報告にげんなりする。
すると、クロネが一歩前に出て、頭を下げた。
「アルベルト様! エリーナ様はもしかしたら隣街に移動されたのかもしれません」
「何? クロネには何か思い当たる場所があるのか!」
「はい、ですが――」
「すぐに行くぞ!!」
クロネが次の言葉を発する前に僕は言葉を被せて命令を出す。
必ず見つける。僕の大切な水の妖精。彼女を幸せに出きるのは僕だけだ。
◇
「ねぇ、アルテ? ハイエアートは?」
「ん、昼からでいいだろう。こっちだ」
朝御飯を済ませたあと、アルテに連れられて街を散歩中だ。
「何処に行くの?」
「もうすぐ着く」
アルテの言葉が少ない気がする。私は、少し早歩きの彼に合わせるためにたまに走って追いかける。
いったいどこに連れていくつもりなのだろう。
「おーい、フラン。いいか?」
「はーい、おはよう。アルテっと、そっちがあの彼女ね」
くすくすと笑いながら、金色の髪の女の人が顔を出す。
背が高くてカッコいいのに、青い瞳で優しく笑み、可愛さも兼ね備える美人さんだ。
「すごい……、キレイなかたですね」
「あら、ありがとう。可愛い子ね! 妖精ちゃんみたい」
「いいから、あとはまかせる」
「はいはい、どうぞ。入ってー」
「あの?」
「私はフラン、フランチェスカよ。だからフラン。よろしくね」
名前を教えてもらったので私も、名前を告げる。
「エリーナです。よろしくお願いします」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
50
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる