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後編

嫌いです

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「ホークさん」

 まっすぐにこちらを睨む彼女は、真剣そのもので、譲る気はなさそうだ。

「あなた、ルミナス様の事、お慕いしているのですよね?」

 ズバリと、メイラが言ったーー! いくら本人ルミナスがいないからと言って、ばらしていいものなの?

「それがなんだ」

 ハラハラする私とは対照的に冷静にホークは動かず答えた。

「私が妻になりましたら、あなたもルミナス様の花嫁になりません?」
「は?」

 ホークが嫌な顔をする。

「よくわかった……、私はあなたも嫌いです」

 まあ、そうなるよね。彼女の火に油を注いだ気がする。何で、メイラはこんな事を言い出すのだろう。

「ソフィー様がお妃になられましたところで、ルミナス様を本当に愛すると思っておいでですか?」

 ピクリと、ホークが反応する。

「ルミナス様のお幸せを願うのは、私とあなただと、思っているのです」
「……」
「ソフィー様は、ルミナス様をただの飾りにしか思っていない。ルミナス様はそんな方と結ばれて欲しくない」
「……それだけか」

 剣を下ろす事なく、ホークは睨み続ける。そんな彼女を見ながら、メイラはニヤリと綺麗な顔に小悪魔的な笑みを浮かべた。

「なので、全力でお相手いたしますわ!! サンダー!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「くぁぁぁぁぁ」

 あれ、サンダーってヒロインの得意魔法よね? あれ?
 じゃない! ヤバい、人に使ったら……!!

「ご安心下さい、しびれて動けなくする、すたんがんくらいの威力ですわ!」
「え」

 何、スタンガンって。魔法を弱くして使ったってこと?

「あっちの世界で持っていましたの! びっくりしましたわ。びりびりして」
「あ……」

 実際、目の前の三人はしびれて立てないぐらいで外傷はほぼなさそうだ。器用……、応用力まであって、すごいなぁ。
 そうか、メイラもまた、ゲームをやっていたユイが中にいたから、もしかしてゲームステータスを引き継いでいたりするのだろうか。最強のお姫様、爆誕……。

「くっ……、卑怯な……」
「あら、三人のお強い方々が脆弱な私達に剣をむけるのは卑怯ではないと……」

 にっこりとメイラは笑うと、ホークの持っていた剣をすっと拾い上げ、他の二人の剣は蹴り飛ばした。

「先ほどのお誘いは、私本気ですから、もしその気になりましたら、私からこの剣を奪い返して下さいな」

 そう言うと、メイラは次の扉のある場所へと続く道を進み始めた。

「あ、メイラ様待って下さい」

 私は恐る恐る、横を通り抜けメイラを追いかけた。

「持ってきてしまったけれど、邪魔です」

 ぶつぶつと文句を言っているメイラは、ため息をつきながら剣を私に渡してきた。何故!?

「彼女も素直に伝えられるような国にしたいですね。向こうのように自由な恋ができるような」

 そう言った彼女は、懐かしいものを思い出すようにして笑っていた。
 あの、向こうの世界は、自由恋愛ですが基本お嫁さんは一人ですよ。まあ、こっちと常識が違うだろうから突っ込まないけど……。
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