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後編
番外編・薫と唯
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「聞いた?」
こくりと小さく、ユイが頷く。
「お兄ちゃんをゲームから出さないつもりで腕輪を捨てたって」
彼女はダイスケの部屋でポロポロと涙を流す。
どうやら、カオルはユイにあの事を言ってしまったみたいだ。ダイスケから真実を伝えられるくらいなら、とでも思ったのだろうか。
「私、私、薫君のこと、これからどう見たらいいの? お兄ちゃん……。わからないよ」
「そうか、でも俺も、カオルの気持ち、全然気がつかなかったからな」
「……うん」
「隠すのが上手いカオルが話すってことは、言わないと駄目だって思って言ったんだろう」
「……うん」
ひっくひっくと小さく肩を上下させ、彼女は泣き続ける。
私はそれをじっと見てる事しか出来なくて、もどかしく思っていた。
「私、それでもやっぱり薫君のこと、好きなの。だから、許せない」
え? 今何て?
「そうだな、でもお前も言わなかったろ?」
え? 何を?
「あっちであれだけいい雰囲気だったんだよ? もうさ、私の気持ちわかってくれてるって思うじゃない?」
「二人とも遠慮しすぎなんだ。法律上、従兄弟は大丈夫なんだから。別にお前からでも」
「男の人から告白して欲しいの。私は! だから、昨日、大事な話があるって聞いて、ドキドキしてたのに」
はぁと息を吐き、困りながら頭をかくダイスケ。
「お前の本当の願いは、カオルと血の繋がりのない関係になってみたいだったっけ。ややこしいな。女心。カオルの気持ちは教えただろう? だからお前からでも、な?」
「お兄ちゃんのばかぁ、ぽんこつー!!」
ユイがわぁぁぁと泣き出したので、私はそっと彼女の横に行って、頭を撫でてあげた。
「俺達はちゃんと戻ってきた。まあ、カオルはそれで願いをぶち壊されたんだ。だから、カオルの事を必要以上に悪く思わないで欲しい。香澄さんの事を思ってやったんだろ」
「うぅ、わかるんだけど……わかるんだけどね……」
ひとしきり泣いた後、ユイは帰ると言って、立ち上がる。
「ごめんね、エリナさん。またお邪魔しちゃって」
そう、またもう少し、のタイミングだった。ユイから、連絡が入ったのは。
「その、複雑だけど、頑張って、唯ちゃん」
私がそう言うと、彼女はうんと頷いて笑った。
「頑張ってくる。ね、じゃあ今度、ダブルデートしよう。エリナちゃん」
吹っ切れたように、清々しい顔をして、彼女は玄関を出ていく。
呼び方が変わっただけで、少し、距離が近付いた気がした。
ん、ダブルデートって、まさか、今から言っちゃう? が、頑張って!
カオルにはまだこの世界で会ってない。だから、どんな人でどんな顔をするのか、想像がつかない。ダイスケが持ってた子どもの頃の三人の写真だけが、唯一、カオルの知ってる顔。二人を笑わせようとして頑張ってるそんな顔だった。
「ねえ、ダイスケ。気がついてる?」
「ん、何?」
ユイと話している時、彼の喋り方が、彼の喋り方になっている。もしかして、この喋り方が本来の彼なのかな? 少しずつ、私の前でも飾らない彼が姿を見せてくれるといいな。そんな事を思いながら、ユイを見送った。
こくりと小さく、ユイが頷く。
「お兄ちゃんをゲームから出さないつもりで腕輪を捨てたって」
彼女はダイスケの部屋でポロポロと涙を流す。
どうやら、カオルはユイにあの事を言ってしまったみたいだ。ダイスケから真実を伝えられるくらいなら、とでも思ったのだろうか。
「私、私、薫君のこと、これからどう見たらいいの? お兄ちゃん……。わからないよ」
「そうか、でも俺も、カオルの気持ち、全然気がつかなかったからな」
「……うん」
「隠すのが上手いカオルが話すってことは、言わないと駄目だって思って言ったんだろう」
「……うん」
ひっくひっくと小さく肩を上下させ、彼女は泣き続ける。
私はそれをじっと見てる事しか出来なくて、もどかしく思っていた。
「私、それでもやっぱり薫君のこと、好きなの。だから、許せない」
え? 今何て?
「そうだな、でもお前も言わなかったろ?」
え? 何を?
「あっちであれだけいい雰囲気だったんだよ? もうさ、私の気持ちわかってくれてるって思うじゃない?」
「二人とも遠慮しすぎなんだ。法律上、従兄弟は大丈夫なんだから。別にお前からでも」
「男の人から告白して欲しいの。私は! だから、昨日、大事な話があるって聞いて、ドキドキしてたのに」
はぁと息を吐き、困りながら頭をかくダイスケ。
「お前の本当の願いは、カオルと血の繋がりのない関係になってみたいだったっけ。ややこしいな。女心。カオルの気持ちは教えただろう? だからお前からでも、な?」
「お兄ちゃんのばかぁ、ぽんこつー!!」
ユイがわぁぁぁと泣き出したので、私はそっと彼女の横に行って、頭を撫でてあげた。
「俺達はちゃんと戻ってきた。まあ、カオルはそれで願いをぶち壊されたんだ。だから、カオルの事を必要以上に悪く思わないで欲しい。香澄さんの事を思ってやったんだろ」
「うぅ、わかるんだけど……わかるんだけどね……」
ひとしきり泣いた後、ユイは帰ると言って、立ち上がる。
「ごめんね、エリナさん。またお邪魔しちゃって」
そう、またもう少し、のタイミングだった。ユイから、連絡が入ったのは。
「その、複雑だけど、頑張って、唯ちゃん」
私がそう言うと、彼女はうんと頷いて笑った。
「頑張ってくる。ね、じゃあ今度、ダブルデートしよう。エリナちゃん」
吹っ切れたように、清々しい顔をして、彼女は玄関を出ていく。
呼び方が変わっただけで、少し、距離が近付いた気がした。
ん、ダブルデートって、まさか、今から言っちゃう? が、頑張って!
カオルにはまだこの世界で会ってない。だから、どんな人でどんな顔をするのか、想像がつかない。ダイスケが持ってた子どもの頃の三人の写真だけが、唯一、カオルの知ってる顔。二人を笑わせようとして頑張ってるそんな顔だった。
「ねえ、ダイスケ。気がついてる?」
「ん、何?」
ユイと話している時、彼の喋り方が、彼の喋り方になっている。もしかして、この喋り方が本来の彼なのかな? 少しずつ、私の前でも飾らない彼が姿を見せてくれるといいな。そんな事を思いながら、ユイを見送った。
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