痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

文字の大きさ
24 / 135
第一章 聖女と竜

第24話 グッバイお肉、グッバイ脂肪

しおりを挟む
「じゃあ、始めよか」

 説明も心の準備もなくそれはいきなりだった。
 スピアーの鼻先が私の唇に触れた。
 え……、いまのって……。
 私の思考回路がとまる。だけど、すぐに勢いよく動き出した。
 スピアーは竜で、あれ、人の時ってすごい美形じゃなかった? まって、いまのは竜だから、あれ、あれ?
 私のセカンドキスが!? ブレイドの目の前で!?
 竜だったから、違う!! 違うよねっっ!?

「…………○✕△□△!!??」

 言葉にならない声で抗議する。あと、なんだか体がスースーする。あれ、服がブカブカで……。
 えっと、どなたの手ですか? すっごく細い。
 細くてきれいな手は私が考えたように指を動かす。その手で自分の顔、腹、足を確かめる。触った感触と触られた感触はあるのに、私のお肉がない。ぷにっとしたあの触感がない。

「えっ? え? えぇぇぇ!?」
「どや、うまくいったみたいやろ」

 私のぷにっとしたお肉がないっ。オレ達いつでも一緒だよっていい笑顔で言ってきてた脂肪が!
 消えたっ!!

「さー、オレの番。はよしてくれっ。って……」
「ブレイド!! 見て!! 私、痩せた! 見てーーー!」

 と、言ったはいいけれど反応が薄い。

「あー、うん」

 これだけ。反応が薄すぎる!!

「私、変なのかな。変……」
「いいからはよ、約束守れや!!」

 ブレイドの反応が薄かったからって、二回もちゃんと言ったことを実行してくれたスピアーに何もしないのは駄目だと思う。しょんぼりしながら私は力なく拳を握る。

「ほ、ほーりーストライクぅぅぅ」

 ぺちんと丸い体に一撃をいれる。こんな力のない一撃でもきちんと効果はあったみたい。青い男が姿を見せた。
 しまった。また服を忘れてた。だけど心配は杞憂に終わる。
 ブレイドが布をバサリとかけていた。

「お、よし。人には戻れるな。なら……」

 空気がざわりとした。スピアーのまわりに水の玉が集まる。

「魔法よしっ。あとは――」

 ブレイドのまとう空気も変わる。あとは、竜化の確認だろうか。
 緊張する。このままどこかにいなくなってくれるならいいのだけど……。

「……ふぅーーーー」

 目の前にいるのは、ながーいため息をつく小さな丸い竜。

「やっぱアカンかぁ」

 呟いたあとすぐに竜は人の姿に戻る。

「こっちは戻れるみたいやけど」
「あ、あの……、ごめんなさい?」

 私だけ無事元の姿、からの痩せてしまった罪悪感で謝ってしまう。

「ええわ。なんとなぁーくそんな気はしとったから」
「えっと」
「まあ、エマちゃんが何なのかもだいたいわかったし、よっしゃ」

 何がよっしゃなのだろう。スピアーは足をすぱぁんと叩き笑顔になった。
 あと、エマちゃんって何? すごく馴れ馴れしくなってない?

「エマちゃん、オレもとるから、責任とってな」
「はい?」

 スピアーは親指で自分の唇をなぞり舌をぺろりと出す。そして、いたずらでもしそうな笑顔でこう言った。

「その呪いもまだ残っとる」
「え゛……」
「エマちゃんがオレに自分からちゅーしてくれたら治るんちゃう?」
「無理」

 即答した。その顔面に私が自分からなんて無理ぃぃぃぃ!!
 でも、まだ呪いが残ってるということは……、またお肉さん脂肪さんこんにちはがあり得るってこと!?

「そうかぁー、なら仕方ないわ。ブレイド! オレもここに住むわ」

 スピアーはいい笑顔を浮かべていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...