41 / 135
第一章 聖女と竜
第41話 助けられた少年が見たものは(ある子どもの視点)
しおりを挟む
森の中、僕は父と妹と三人で食べ物を取りにきていた。
お金がなくて食べるものがないとかではない。冬が来て近くの森の中で食べられる木の実や植物なんかが最後だから、遊びを兼ねてきている。
「お父さん、これ美味しいかな」
妹が父に採取したものを見せる。
「これは食べられるかなぁ。街に戻って鑑定してもらおう」
「うん」
僕はキノコや木の実、植物採取なんてつまらないと小さな木の棒を振り回し食べれそうな獲物はいないかと探し回る。
どうせならでっかい鳥なんかを仕留められないかな?
ぶんぶんと振り回しながら歩いていく。だんだんと父と妹から離れて行くのも気付かずに。
シューっと小さな音がして地面を見ると穴があった。
何かの巣かな? と、僕は持っていた枝を穴に突っ込んだ。何が出てくるかなとのぞきこむ。勢いよく飛び出してきたのは動物ではなく煙だった。
顔にそれが噴きかかり息が苦しくなった。
何だよこれ!!
僕は父を呼ぼうと叫んだ。だけど噴き出し続ける煙で息が出来なくて上手く声にならなかった。
苦しくてフラフラしながら父がいると思う方へ向かう。木の根に足が引っかかりこけてしまった。
苦しくて、痛くて、もう帰りたい。
「ナリャ! どこだっ」
父が僕を呼んでいた。ここだよ!気付いて!
「――っ!! ウイ! こっちは危ない! 街に戻るんだ!! ナリャっ!! ナリャぁぁぁぁ!!」
父の声がどんどん遠ざかって行く。僕はここだよ。
体がどんどん重くなって行く。大きな獣に上から乗られているみたいだ。
◆
どれくらいたっただろう。まわりが暗くて何も見えない。目をあけても夜みたいに暗くて何もわからない。
だんだん息苦しさは減ってきたけれど下半身が自分の体ではないような感じがした。手を伸ばし触れてみる。ふわふわとした毛皮の動物がそこにいるのだろうか。だけど触れられる感触は自分にある。おかしい。
もしかして……。
街からでも見えることがある大きな煙の壁。
「この国は神様がいて、お守り下さっているから大丈夫なのよ。でもね、もしみつけてしまったらすぐに逃げなさい」
あれは瘴気という怖いものなのよと教えられた。触れれば死ぬか魔物になる。とても恐ろしい煙なんだと。
おうちに帰りたいよぉ。
神様がお願いを聞いてくれたのかな?
急に煙が消えて明るくなった。
あの人がこの国を守ってくれている神様?
赤い色の目をした髪の長いきれいな女の人が立っていた。
苦しかった喉が楽になっている。今なら話す事が出来そうだ。
「助けて」
必死に神様にお願いする。もう一人いたみたいだ。赤い髪の男の人が僕を見つけてくれた。そのあとすぐにあの赤い目の女神様にも見つけてもらえた。
お家に帰りたい。神様なら叶えてくれるかな。
◆
「ナリャ!!」
父の声がした。見つけてくれたんだ。でも、僕は瘴気に触れて体が変に……。
どこもおかしくなっていない。手も足も体も僕のだ。
やっぱりあの二人は神様だったんだ。
父に背負われて街へと向かう。空が明るくて嬉しくて、上をずっと見ていたんだ。
そしたらね、すごい事が起きたんだ。
もう一人の男の人の髪色みたいな真っ赤な竜が空に飛び上がっていくのが見えた。
女神様と神様の使いだったんだ。きっと女神様はあの竜に乗っているんだ。あとで父と母と妹に聞かせよう。僕を助けてくれた赤い瞳の女神様と赤い竜の話を。
お金がなくて食べるものがないとかではない。冬が来て近くの森の中で食べられる木の実や植物なんかが最後だから、遊びを兼ねてきている。
「お父さん、これ美味しいかな」
妹が父に採取したものを見せる。
「これは食べられるかなぁ。街に戻って鑑定してもらおう」
「うん」
僕はキノコや木の実、植物採取なんてつまらないと小さな木の棒を振り回し食べれそうな獲物はいないかと探し回る。
どうせならでっかい鳥なんかを仕留められないかな?
ぶんぶんと振り回しながら歩いていく。だんだんと父と妹から離れて行くのも気付かずに。
シューっと小さな音がして地面を見ると穴があった。
何かの巣かな? と、僕は持っていた枝を穴に突っ込んだ。何が出てくるかなとのぞきこむ。勢いよく飛び出してきたのは動物ではなく煙だった。
顔にそれが噴きかかり息が苦しくなった。
何だよこれ!!
僕は父を呼ぼうと叫んだ。だけど噴き出し続ける煙で息が出来なくて上手く声にならなかった。
苦しくてフラフラしながら父がいると思う方へ向かう。木の根に足が引っかかりこけてしまった。
苦しくて、痛くて、もう帰りたい。
「ナリャ! どこだっ」
父が僕を呼んでいた。ここだよ!気付いて!
「――っ!! ウイ! こっちは危ない! 街に戻るんだ!! ナリャっ!! ナリャぁぁぁぁ!!」
父の声がどんどん遠ざかって行く。僕はここだよ。
体がどんどん重くなって行く。大きな獣に上から乗られているみたいだ。
◆
どれくらいたっただろう。まわりが暗くて何も見えない。目をあけても夜みたいに暗くて何もわからない。
だんだん息苦しさは減ってきたけれど下半身が自分の体ではないような感じがした。手を伸ばし触れてみる。ふわふわとした毛皮の動物がそこにいるのだろうか。だけど触れられる感触は自分にある。おかしい。
もしかして……。
街からでも見えることがある大きな煙の壁。
「この国は神様がいて、お守り下さっているから大丈夫なのよ。でもね、もしみつけてしまったらすぐに逃げなさい」
あれは瘴気という怖いものなのよと教えられた。触れれば死ぬか魔物になる。とても恐ろしい煙なんだと。
おうちに帰りたいよぉ。
神様がお願いを聞いてくれたのかな?
急に煙が消えて明るくなった。
あの人がこの国を守ってくれている神様?
赤い色の目をした髪の長いきれいな女の人が立っていた。
苦しかった喉が楽になっている。今なら話す事が出来そうだ。
「助けて」
必死に神様にお願いする。もう一人いたみたいだ。赤い髪の男の人が僕を見つけてくれた。そのあとすぐにあの赤い目の女神様にも見つけてもらえた。
お家に帰りたい。神様なら叶えてくれるかな。
◆
「ナリャ!!」
父の声がした。見つけてくれたんだ。でも、僕は瘴気に触れて体が変に……。
どこもおかしくなっていない。手も足も体も僕のだ。
やっぱりあの二人は神様だったんだ。
父に背負われて街へと向かう。空が明るくて嬉しくて、上をずっと見ていたんだ。
そしたらね、すごい事が起きたんだ。
もう一人の男の人の髪色みたいな真っ赤な竜が空に飛び上がっていくのが見えた。
女神様と神様の使いだったんだ。きっと女神様はあの竜に乗っているんだ。あとで父と母と妹に聞かせよう。僕を助けてくれた赤い瞳の女神様と赤い竜の話を。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる