痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

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第一章 聖女と竜

第48話 甘い飲み物には

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「――そうなんだ」
「うん」

 次々に聞かされる衝撃の話はゆっくり静かに流れる時間とは対照的で。
 当たり前だけど想像なんて出来ない。
 産まれてすぐからの他人との違い。誰にも話さずに成長してきた苦しさ。そして――。

『この国がこうなったのはボクの責任なんだ』

 目を少し赤くしながら彼は続けていた。

『他人に竜の姿のボクを見せた時すべてが壊れ始めてしまった』

 ◆

 崩壊の始まりは聖女の言葉からだった。ある一人の聖女は突然逃げるように自分がいた場所へと帰った。二人いた聖女は一人になり、一人になった聖女は化け物王子とは絶対に結婚しないと言ったそうだ。
 不審に思った王は王子たちに問うたそうだ。聖女がいなくなるのは瘴気が噴き出す国にとって恐ろしい結果が待つからだ。

「誰が化け物と思われるような事をしでかしたのか」

 三人の王子のうち二人はまったく身に覚えがない。だから答えられるはずもなく。
 一人の王子は進みでて、すべてを語った。実際に目の前で姿を変えて。
 王は妃だけを愛していた。王子はあくまで愛する妃を奪った男。利用価値があったから王子でいさせたのだ。
 愛していた妃は病で倒れすでにいない。婚約をした時に渡した病に効く花は王子の為に使ってしまったせいで――。
 継承権は移され、弟が王になる事が決まる。聖女との結婚は兄王子の役割ではなくなった。
 竜魔石作りと瘴気の関係を喋った事で、兄王子は瘴気を食べる事と竜魔石作りを言い渡された。
 国を継ぐ王子でなくなった兄王子に待っていたのは、それまでとまったく違う環境だった。

「ブレイド様、今日はどうしますか?」
「そうだなぁ」

 その環境にも慣れてきたある日の事だった。でなくなって久しい場所の瘴気が再び溢れ出したと連絡が入った。
 担当していたもう一人の聖女はすでにいない。つまりお前がなんとかしろと言うことだろうと兄王子は体を変化させ飛んだ。
 問題なく食べ終わったが、新たな問題に兄王子は気が付かされた。
 周辺の住民に体の一部だけが魔物化するという病気が広がっていた。
 瘴気が薄く漂っている……。
 まとまっていれば食べる事が出来るが、これは掴みどころのない雲のような瘴気だった。
 そして、それは城でも広がっていた。隠されるように兄王子の元へと体が変わった城仕えの者たちが送られてくる。
 国を捨てる。その決断ははやく、無事であった王たちは聖女を連れて国を出た。
 国を元通りにした時戻る。国を守れ。兄王子に命令を残して。
 一人残された王子は命令を守り、瘴気が噴き出す場所を往復する日々を過ごしていた。そしてすぐに限界が訪れた。
 同時に瘴気が噴き出したのだ。
 一方はまだ食べ終わっていない。次から次へと噴き出し続ける。食べ終わった時には遅かった――。

 ◆

「ボクはその場についてすぐに食べたんだ。だけど、遅かったみたいでこうなってしまったんだ」
「……そうなんだ」
「うん」

 それからは違う場所からも噴き出し始めて……。
 頑張ったけれど、どんどん増えていって……。そんな時に、黒竜が現れて、そして……。
 大変だったんだ。すごく。私なんて、浄化が終われば寝て食べて、本を読んだり出来てた。呼び出されるまでは自由と言えば自由だった。
 ぎゅっとして大変だったねって撫でてあげたい。恥ずかしくて出来ないのがむず痒い。
 これからはずっと一緒にいるから。一緒に瘴気と戦おうって言ってあげたい。だけどそれは出来ない。彼と私は食べられるまでの時間制限つきの関係だから。
 私のこと好きになって、食べるのやーめたってなってくれないかぎりは訪れない未来で――。
 ブレイドに好きになってもらうにはどうすればいいんだろう。やっぱり、細くて可愛くてスタイルをよくしないとダメなのかな。仮初めなんかじゃなくて――。

「最初エマ達が来た時、驚いたよ。地位やお金でしか動かない聖女がこんなところにきてなんの用だってね」
「聖女って言われてるのにまわりからはそんな風に思われてるんだね。この赤い目って」
「瘴気という弱みをついてくる人達だからね。最初の聖女は違ったんだろうけど」
「最初の赤い瞳の聖女アメリアね」

 彼女はすべての瘴気を消そうとした。誰に頼まれたとかそういうものは伝わっていない。けど、彼女がしようとした事は伝わっている。

「この姿を見て逃げ出すどころか殴りかかってくる。本当理解が出来なかったよ」
「あー、そんなこともあり……ました」
「でも、それがなかったらボクがいまこうしてここに座ってなかったから。一応ありがとうなのかな」
「赤とかげとか言ってごめんなさい。好きでその体になったわけじゃなかったのに」
「いやいや、ボクも失礼なこといったから謝らないでよ」

 二人で苦笑して、少しの間が出来た。ちょうど喉が渇いていたので、良い香りのする紅茶を手にとり一気に飲む。これにもダイエットに効く何かがいれてあるのだろうか? 体がポカポカしてきた。

「ねえ、エマ」
「はい?」
「今の話を聞いて――――」

 顔を上げると大きな赤い果物があった。ブレイドの髪と同じ色の甘くて美味しいあの果物。
 食べていいか聞こうと思ったけどブレイドがいない。
 うーん、ブレイドどこにいったのかな。これ、食べてもいいのかな? いいよね、よし! いただきまーす。
 あれ、ほんのり温かくて甘くて……いつものとは食感が違う?
 あぁ、ブレイドが用意してくれたんだからお礼を言わなくちゃ……。

 私の記憶はここでぷっつりとなくなっていた。
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