痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

文字の大きさ
115 / 135
第二章 赤の瞳と金の瞳

第115話 森の中、元婚約者と出会う

しおりを挟む
「瘴気なんてないよね……」

 クロウを上手くまいたのはいいのだけれど、ブレイドが魔法を使いすぎて今森の中で休憩中だ。
 彼は完全に寝入ってしまっている。
 指輪を持ってるから近くまでならウロウロしても大丈夫だろうと、私は彼のいる場所から少し離れて探していた。
 竜が魔法の力を回復するのに必要な瘴気がないかを。
 スピアーみたいに瘴気が噴き出す場所や時間がわかればいいのに。そうすれば、すぐにだってブレイドを……。

 瘴気を食べないまま飛び続け探しにきてくれた。だから、なんとかしてあげたいのだけれど、私が出来るのは傷の治療、瘴気の浄化、空を短距離だけ飛ぶ。ブレイドの魔法の力を回復させるような力はない。

「瘴気がないと竜は魔法が使えないのかぁ」

 完全に使い切ってしまった時にどうなるのか。嫌な感じがして私はぶるりと震えた。
 アメリアを食べたブレイドは自身を炎で焼いた。すべての魔法の力を使って? もしかしてすべての力を使い切ると竜は竜魔石になってしまうのでは……。そんな想像が浮かび、慌てる。
 どこかで瘴気が出ていないか。少しでも――。
 願ってはいけない願いを口にして私は呆然とした。

「エマっ!!」
「え!?」

 腕を掴まれた。まさか、クロウに捕まった?
 違う、この声は……。
 思い出したくない、元婚約者に似ているが少しかすれた声。

「だ……れ……?」

 濃い紺色の衣装をまとった恰幅の良い男が立っていた。元婚約者ラヴェルと同じ髪色と瞳を持つその男は逃げられないようにするためだろうか、ガッチリと痛いくらいの力で掴んでいる。

「誰……か。わからなくて当然だ。こんな姿なのだから」
「あの、手を放してもらえませんか?」
「駄目だ。もうエマを放さない。やっと君の大切さを理解したんだ」

 この口振り、やはりこの人は私の元婚約者。そうなれば今の状況はマズい。ブレイドは眠ってしまっている。フレイルがそうだったように竜は人の姿であれば簡単に殺せてしまうのよね……。
 慎重にいかないと――。今、ブレイドの元に戻っては危険だ。
 一人で戦うしかないけれど、目の前にいる大きな男の力に手が震える。外したくてもどうにも出来ない。

「震えなくて大丈夫だよ。今度はエマのこと大事にするから。さぁ、行こう」
「今さらそんな事言われたって信じられません!」

 やはりラヴェルだ。強い力で引っ張られる。

「私はこの姿になって、エマの苦しみを知った。今ならやり直せるはずだ。すまなかった、ずっとずっと頑張ってくれていたんだな」
「……ラヴェ……ル?」

 婚約破棄を言い渡してきた日のような冷徹な視線はなく、ただただ静かな目をしていた。何があったのかは知らないが、彼は何か変わったのだろうか。

「謝ってもらったって、もう遅いです。貴方には新しい婚約者だっているのでしょう。あんなにも愛を私の目の前で語り合っていたじゃないですか」
「もう彼女とは終わったんだ! 今の私は以前のラヴェルではない。エマ、もう一度やり直そう!」

 ラヴェルの腕の中に囚われる。指輪、風の魔法はまだブレイドにかけ直してもらっていない。
 どうやって逃げよう……。まわりに兵はいない。彼一人でこんな場所にいるなんて考えられない。きっと近くにいっぱいいる。今逃げなきゃ、また籠に閉じ込められてしまう――。
 キッとラヴェルを睨みつけ首を横にふる。もう一度なんて絶対にない。だって、私が好きなのはブレイドなのだから!

「さっき、赤い竜もいたね。キミをさらった悪い竜退治をしないと」
「違う、彼は!!」

 もしかして、兵が見えないのはブレイドのところに行かせているから?
 その考えがよぎった瞬間、私は大きく口を開けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...