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第二章 赤の瞳と金の瞳

第123話 光の元婚約者

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 森の木々を超えて黒煙が上がる。冬前にブレイドが作ってくれた露天風呂がある方角だ。
 何かが戦っているのだろうか。ぶつかり合うような大きな音がする。
 いったい何が起こってるんだろう。

「会談はいったん中止だ。ライナモ、兵を引きあげ帰ってくれ!」

 動く様子を見せない弟の次の言葉を待たず、ブレイドは走り出した。
 私の手を引いて。

「おーい、何があってん?」

 途中リアを肩車したスピアーとすれ違う。

「わからない。今から確認に行ってくる」
「エマちゃんも連れてか?」
「あぁ」
「オレも一緒に行くわ」

 何もわからない、ミリア達がここにいる状況でお父さんお母さん達を置いていっても大丈夫だろうか。
 待てよ、リアも外に連れ出したら駄目なんじゃ……。

 肩の上にいたリアはごそごそと肩からかけたポーチに手を突っ込み飴玉を取り出す。それをぱくりと口に入れた。
 もしかして、彼女もフレイルにもらったのかな?
 予想した通り、瞳の色と姿がかわる。髪色は私みたいな茶色に、瞳の色は赤色から緑色に。
 準備万端という風に、鼻をふすーっと鳴らしていた。

「確認したらすぐ戻るだけだ――」
「リアも行く言うとるみたいやし、ほら行くぞ」

 ブレイドは確認に行くのを優先しているのだろう。二人と言い合うつもりはないようでそのまま外へと向かった。

「あっちだよね」

 竜の姿になったブレイドと翼だけ変化したスピアーが並んで飛んでいる。
 上空に到達すると、サラマンダーが大きな体を横たえていた。赤とピンクのつるっとした体はところどころ燃えて煤けた様だ。

「いったい何が……」

 露天風呂の子だろうか。何度もお世話になったのに……。

「ブレイド! 避けろ!」

 スピアーが叫ぶ。すごい勢いで何かがこちらに向かって飛んできた。
 ブレイドは避けたあと、魔法をそれに向けて放った。
 ドンッと大きな音がした。空中でそれは大きな爆発を起こす。

「次が来るで」

 ブレイドの体が大きいからだろうか。こちらに何回も何回も飛んでくる。ブレイドはそれをすべて避けながら潰していった。もし森に落ちたら大変な事になるかもしれない。だけど、あまりにいっぱい飛んでくると、ブレイドに掴まっている私がそろそろ振り落とされそうだ。
 落ちてもいいようにいつでも魔法で飛べるように覚悟を決めた瞬間、ピタリと攻撃が止まった。

「……終わった?」

 ホッと息をついたところで地面から光が溢れた。
 それは大きく広がって、収束し巨大な人の形をとった。
 会いたくない人ナンバーワン、元婚約者ラヴェルのもとの姿。

「フフフ、やはり赤竜の住処はここだったか。我が婚約者エマを取り戻しにきたぞ! さぁ、邪悪な竜の討伐だ!!」

 私は口があいて塞がらなくなってしまった。
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