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第二章 赤の瞳と金の瞳

第130話 浄化したら反動がある、かな?

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 着地するつもりだった地面が見える。
 魔法を使うなら今だ。
 ぎゅっと力を込めて風の魔法を使う。優しい風が集まって無事着地する事に成功した。

「よ、よかったぁぁぁ。リア! 怪我してない? 大丈夫?」

 リアの怪我の有無を確認しながら空も見上げる。
 空の上では、ブレイドとクロウが睨み合っている。

「……リア、どうして?」

 白竜が付き従うように横に来て体を伏せ聞いてきた。顔だけ持ち上げこちらをじっと見つめてる。

「もしかして、リアってアメリアの事を言ってるの?」

 私を見てリアと言っている。そんな気がしたから聞いてみた。どうやら合っているみたいだ。彼女は少しだけ頷く。

「じゃあ、リアは本当はなんて名前なの?」

 この答えは返ってこなかった。ただ、リアと小さくつぶやくだけだ。

「私はリアじゃないよ。エマ。エマが今の私の名前」
「……エマ?」
「うん。エマ」
「そう……エマなんだ……。ねぇ、どうして瘴気を世界に広げちゃ駄目なの? 世界中が瘴気だらけになれば竜も私達も幸せになるのに。それにね、結局これは皆適応していくんだよ。増えてきてるんだよね。耐えられる人間が」
「え? でも、ただの人は死んじゃうし、生きていても魔物になってしまうんだよ」
「耐えられないなら滅びるだけ。世界ってそういうふうに出来てるんだよ。竜だって昔はたくさんいたのに、もうすぐ――」

 リアはいったい何を見て、何を思っているのか。わからない。だけど、今生きてる人達を瘴気で消すなんて考え私は納得出来ない。
 だって、その中には私のお父さんやお母さんがいて、ルニアやシル、他にも沢山の人達がそれぞれ大切な人がいて。
 赤い瞳の聖女に自由はないかもしれないけれど、生きる事は出来てる。瘴気は人にその生きる事さえ許さないのだ。

「エマ、星に選ばれたんだよ。生きてていいって。だから、一緒に行こうよ」

 ダメだ。リアはもう止まるつもりはない。
 だけど、止めないと――。
 リアが空を見上げる。何かがこちらに向かって飛んでくる。

「ブレイド!?」

 炎の球がこちらに向かってきている。どちらかの魔法が、外れてここに落ちてきてる?

「リア!! 危ないっ!」

 私は彼女を守るように腕を引っ張って自分の体の影に隠す。
 ここまで落ちてきませんように。そう願うしかなかった。

「エマーっ!!!!」

 ブレイドが勢いよくそれに魔法をぶつけた。軌道を変えた炎の球は赤い実のなる木の場所へと落ちていった。
 みんなの冬の大事な食料が!!

「あの実……」

 リアが燃え上がる赤い実の木々を見つめる。
 ブレイドはクロウとの戦闘に戻っていってしまったし、どうしよう。

「エマちゃーん。って、大火事やん」

 元婚約者をどこかにポイ捨て――じゃなかった、置いてきたのだろうスピアーが戻ってきた。きっと、彼が見えたからブレイドも上空に戻ったんだ。

「スピアー! ちょうどいいところに! お水、はやくお水をかけて」
「お、おぅ。人使いあらいなー。あ、竜使いか」

 ぶつぶつと文句をつけながらもスピアーは水の魔法で火を消し止めてくれた。

「ありがとう、スピアー」
「ええけど、ブレイドは何しとんのや? クロウにばっかりかまって。しゃあない、手伝ってやるか」
「まって、まずはリアを安全なところに」
「そうやった。リア、もう瘴気は出さへんか? 一回戻ろう。な?」
「……いや!!」

 リアが再び白い竜に乗り、空へと向かう。

「世界を――、リアを救うって決めたの」
「リア、駄目!!」
「邪魔しないでっ!!」

 瘴気が彼女から溢れてくる。近くではルニア達が皆を避難させてるはずだ。
 浄化しなきゃ――――。
 手を広げ、瘴気を全部受け止める。
 すごく重たい。これはあとでお腹いっぱい食べなきゃ倒れちゃうなー。ルニアに怒られちゃうかな――。
 また太ったなって……。でも、止めないと。リアを助けないと。
 リアが呟く言葉と同じ言葉が私の中にもあった。
 そうだ、リアを救うんだ。
 全部の力を使ってでも――。

「ダメっっ!!!!」

 リアがこっちに戻ってきてくれた。良かった。
 あぁ、まだ瘴気が出てる。大丈夫だよ。全部、全部私が浄化してあげる。いつか、あなたがしてくれたように――。
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